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これから、私は夫を捨てデザイナーを目指す

これから、私は夫を捨てデザイナーを目指す

Par:  パクっComplété
Langue: Japanese
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結婚して3年目。夫・神谷朔弥(かみや さくや)がシャワーを浴びている間、二宮琴音(にのみや ことね)は思いがけず、彼の携帯に届いたメッセージを目にしてしまった。 【朔弥。あなたと別れてから、私はずっと幸せになれなかった。毎日あなたのことばかり考えちゃう。 でもね、朔弥。私、明日結婚するんだ。だから、最後にどうしても一度だけ、あなたに会いたいの。私の初めてを、朔弥に捧げたい。30分だけ待ってる。もし来てくれなかったら、私はこの世を去ろうと思う】 そのメッセージを読んだ瞬間、琴音は激しい衝撃を受け、しばらく言葉を失った。

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Chapitre 1

第1話

結婚して3年目。夫・神谷朔弥(かみや さくや)がシャワーを浴びている間、二宮琴音(にのみや ことね)は思いがけず、彼の携帯に届いたメッセージを目にしてしまった。

【朔弥。あなたと別れてから、私はずっと幸せになれなかった。毎日あなたのことばかり考えちゃう。

でもね、朔弥。私、明日結婚するんだ。だから、最後にどうしても一度だけ、あなたに会いたいの。私の初めてを、朔弥に捧げたい。30分だけ待ってる。もし来てくれなかったら、私はこの世を去ろうと思う】

そのメッセージを読んだ瞬間、琴音は激しい衝撃を受け、しばらく言葉を失った。

やがて、シャワーを浴び終えた朔弥が戻ってきて、携帯を手に取った。そのメッセージを見るや否や、彼はすぐに玄関へと向かう。

その急ぐ背中を見て、胸が締め付けられた琴音は、思わず引き止めた。

「ねえ、朔弥。男の人って、最後は家庭を選んだとしても、妻より不倫相手に対して罪悪感を抱くんだって。あなたも……そうなの?」

震える琴音の声を聞き、朔弥は足を止めた。眉をひそめ、苛立ちと疲労が混ざったような声で言った。

「琴音。俺はお前のとこに戻ってきただろ?それなのに、これ以上俺にどうしろっていうんだ?」

冷え切ったその言葉が琴音の胸に突き刺さり、目からは涙があふれ出してきた。

名目上は自分が妻であっても、心は今もまだ白川紗良(しらかわ さら)のところにあるんじゃないのか、そう聞きたくてたまらなかった。

しかし朔弥は琴音の返事も聞かず、ドアを強く閉めて出て行ってしまった。

琴音は目を閉じ、静かに涙を流す。

琴音と朔弥は幼馴染で、誰もが認めるお似合いの二人だった。

琴音が「西区のケーキが食べたい」と言えば、朔弥は嫌な顔をせず、すぐに買いに行き、琴音が追試になれば、朔弥は徹夜してまで、琴音の勉強に付き合ってくれた。琴音が生理痛で辛かった時は、朔弥は不器用ながらも、蜂蜜レモンティーを作ってくれた……

琴音は朔弥に大切に守られる、まるでお姫様みたいだ、と皆が口を揃えて言ったし、両家の親が二人の結婚を決めた時も、誰も驚きはしなかった。

しかし、紗良という後輩が現れ、全てが変わってしまったのだ。

琴音が紗良に初めて会ったのは、朔弥の卒業式の日。

朔弥はポニーテールにした紗良と並んで立ち、笑いながら話していた。それに、紗良が親しげに朔弥の袖を掴んでも、彼は拒まなかった。

その瞬間、琴音の心に小さな棘が刺さった。

それからというもの、朔弥の口から「紗良」という名前を頻繁に聞くようになる。

「今日、もう絶版になっている本を、紗良が図書館で探してくれて……」

「紗良と映画の趣味が合うみたいでさ、一晩中盛り上がったんだ……」

「紗良が日の出を見に行きたいって言うから、週末に一緒に見に……」

朔弥が目を輝かせながら、紗良のことを話すのを見て、琴音は胸を握りつぶされるような痛みを覚えた。

その輝く目の意味を、琴音はよく知っていた。

なぜならその瞳は、かつて自分に向けられていたものだったから。

ラインでは紗良がピン留めに設定され、日々の些細な出来事まで紗良と共有しているのを知った時、琴音は我慢の限界に達した。

永遠に自分だけを愛してくれると言っていた朔弥が、他の女に気持ちが浮ついているのが許せなかったのだ。

たとえ体の関係がなくても、朔弥が紗良に惹かれている事実は変わらない。

その上、この現実が受け入れられないほど苦しいのに、朔弥を捨てきれない自分にも嫌気が差した。

琴音は苦渋の決断として、朔弥に婚約を解消するか、それとも紗良との関係を完全に断ち切るかの二択を迫った。

散々葛藤した末、朔弥は紗良との別れを選んだ。

それからしばらくして、結婚式が執り行われたのだが、結婚後の朔弥はまるで魂を抜かれたような状態で、二人の間に、以前のような幸せな日々は戻ってこなかった。

二人で出かけても、朔弥は急にどこか一点を見つめては、上の空になり、時折書斎に閉じこもっては、浴びるように酒を飲んで現実を忘れようとしていた。

記念日や誕生日のサプライズもなくなり、事務的に花やプレゼントを贈るだけになった。

琴音は、自分が努力し、深い愛情を与え続ければ、いつかは以前のように戻ってくれると信じていた。

だが、今日になってようやく分かった。どうあがいても、もう以前の朔弥は戻ってこないのだ、と。

この数年、自分が必死になって温もりを与え続けてきた男は結局のところ……心のない抜け殻に過ぎなかったらしい。

朔弥の心と感情はとっくに紗良のところへ行ってしまい、もう自分のものではなかったのだから。

こんな冷めきった結婚生活を、これ以上続ける意味などどこにもないだろう。

その夜、琴音は一睡もできぬまま夜を明かした。離婚手続きを調べようと携帯を開くと、偶然にも朔弥が花嫁を連れ去っている動画が目に飛び込んできた。

画面の中の朔弥はスーツ姿で、人目も憚らずに結婚式場へと駆け込み、紗良の手を引くと連れ去っていった。

画質は悪かったが、あふれるほどの情熱ははっきりと見てとれた。それは、高校のグラウンドで自信たっぷりに告白してきた、あの時の朔弥と重なる。

琴音は手が震えるのを抑えながら、その10秒ほどの動画を7回も繰り返し再生した。

そしてもう一度動画を再生しようとしたのだが、その動画はすでに消されていた。まるで、最初から何もなかったかのように。

だがその光景は、琴音の網膜に焼き付いていた。

朔弥のなびくスーツの裾、紗良の嬉しそうな表情、そしてしっかりと握り合う手に見えた、彼の手の甲にある小さなホクロまでも……

胸の中がごっそり抜け落ち、冷たい風が吹き荒れる。

琴音は涙を拭うと、躊躇うことなく全ての必要書類を準備し、離婚届をもらいに役所へと向かった。

だが、役所の窓口で思いもよらぬ真実を知らされた。

「離婚届をご要望とのことですが、ご本人様用ですか?只今調べたところ、二宮様は戸籍上未婚となっておりますが……」

思考が真っ白になる。琴音は自分の耳を疑った。

3年前、自分たちは11月22日「良い夫婦の日」に婚姻届を出しに行った。そんな日なので、人がかなり多かった。すると、朔弥が「ずっと並んでるのは辛いから、お前は座って休んでて」と言って、一人で届けに行ってくれた。

だが、この事実を知った今、自分がいかに滑稽だったかを思い知らされる。

朔弥は紗良との関係を完全に断ち切り、自分を選んで籍を入れてくれたのだと信じていたのに。

潮のように押し寄せてくる絶望が、全身の感覚を麻痺させていった。

血が出るほど唇を噛み締める。しかし、ふと思った。

法的な婚姻関係が結ばれていないということは、今の自分にとっては、むしろ救いなのかもしれない。

琴音は真っ青な顔で役所を後にし、タクシーを捕まえようと思い手を上げたところで、急に意識を失い、その場に崩れ落ちた。

次に目を開けると、琴音のカルテを持った看護師が、眉間に深いしわを寄せていた。

「ご主人に連絡して、今すぐにここに来るよう言ってください」

険しい表情をしている看護師を見た琴音は、自分が何か重い病気なのではと心配になる。

携帯を取り出し朔弥に7回ほど電話をしたが、一向に繋がらない。

諦めかけた頃、ようやく受話器越しに冷めた声が聞こえた。

「会議中なんだ、邪魔するな」

電話がつながり、切れるまでたった3秒。だが、その背後で、紗良が甘い声で朔弥の名前を呼ぶのがはっきりと聞こえてきた。

琴音は爪が食い込むほど手のひらを強く握りしめた。看護師に急かされる中、琴音は自嘲的な笑みを浮かべる。

「私に夫なんていません。なので、病状などは私に直接言ってください」

看護師は少し驚いた表情を浮かべ、一枚の検査結果を琴音に差し出した。

「ご結婚されていないんですか?もう妊娠3ヶ月目なのに?胎児の器官も作られ始めています。でも、栄養状態が悪いようなので、お相手の方に連絡を取っていただきたいですが……」

「妊娠」の二文字を聞いた瞬間、琴音の瞳は見開かれ、頭の中が真っ白になった。

複雑な想いで、平らな腹部を見つめたが、すぐに頭を切り替え、あることを決断する。

「その必要はありません。このまま中絶手術をお願いします。子供なんて……いらないんです」

1時間後。琴音は冷たい手術台の上で、今までのことを思い出していた。

生理でお腹が痛いと言えば、朔弥は蜂蜜レモンティーを用意してくれ、ずっとお腹をさすり続けてくれていたこと。

自分が可愛いスカートが好きだと知れば、朔弥が専用のデザイナーを雇ってくれ、スカートを仕立ててくれたこと。

自分が盛大な結婚式に憧れがあると聞いた朔弥は、18の頃から自分の趣味嗜好をノートにまとめてくれていたこと……

これほどまでにときめきをくれた朔弥だが、今日を境に、過去の人となるのだ。

手術を終え、琴音は衰弱しきった体を引きずって看護師に、エコー写真が欲しい旨を伝えた。

朔弥への最後の贈り物として、彼に贈ってあげようと考えたのだ。

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このクズ夫は何がしたかったのだろう? なくしたものに執着して、目の前にある大事なものを粗末にする性質たんだろうな。
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第7話
2日後、ようやく琴音の熱は下がった。退院のための荷物をまとめていたとき、突然携帯が震えた。紗良から長文が送られてきた。【あなたって、本当に可哀想。あなたと朔弥は入籍なんてしてなかったのよ。知ってた?朔弥はそもそもあなたと結婚するつもりなんてなかったから、ずっと嘘をつき続けていた。大好きだった夫に裏切られるなんて、惨めだと思わない?私のこと、あなたたちの家庭を壊した浮気相手だって思ってるんでしょ?だったら、教えてあげるよ。朔弥はね、私と正式に入籍するって決めてくれたの。明日の朝、朔弥は私と役所に行ってくれるんだって。だから、これからは私こそが朔弥の妻で、あなたこそが愛人なんだから!】紗良からの挑発に対し、琴音は冷静に携帯をしまい込んだ。その瞳には、もう何の感情も映っていない。琴音は堕胎手術をしてくれた担当医の元を訪ね、頼んでいたエコー写真を受け取ると、業者に依頼して役所へ届けさせるよう手配した。すべてを済ませ、琴音は退院の手続きをとった。自宅に戻ると、すでに朔弥が帰宅しており、テーブルの上には自分へのプレゼントだという品々が積み上げられていた。以前なら、大切にされていると喜んでいただろう。だが、今はもう分かっていた。朔弥はただ罪悪感を、プレゼントという形で、誤魔化しているだけなのだと。琴音はちらりと目を向けただけで、特に気にすることもなく、「ありがとう」とだけ伝えて寝室へ向かった。朔弥が琴音を呼び止めた。「琴音、最近いろんなプロジェクトでトラブルが起きてて、ずっと会社にいなくちゃいけないんだ。だから、一人で先に南極に行っててくれないか?向こうの滞在の手配は全部済ませてあるし、世話係も同行させる。会社のことが落ち着いたら、俺もすぐに合流するから。いいかな?」朔弥に背を向けながら、琴音は力なく笑った。仕事を言い訳にして、実際は紗良と婚姻届を出すつもりなんでしょ?ねえ朔弥。16歳のあなたは、26歳になった自分がこんなふうに私を裏切るなんて想像したかしら?「いいよ」琴音は振り返りもせずに、静かに答えた。朔弥は固まった。用意していた言い訳や甘い慰めの言葉が喉につかえ、何も言葉が出てこない。素直に受け入れた琴音の態度が、どこか他人みたいで不安に襲われる。朔弥が何か言おうとしたその時、紗良から【足を
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第9話
広い社長室に座る朔弥は、充血した目でパソコンの画面に並ぶ膨大なデータを追っていた。3日間、一睡もしていない。神谷グループの人脈を総動員し、多額の費用で探偵まで雇ったが、琴音の痕跡は全く掴めなかった。疲れを滲ませた様子の秘書・山本純一(やまもと じゅんいち)が口を開く。「社長、二宮さんのマイナンバーや銀行口座はすべて解約され、SNSのアカウントも消去されています。まるで、この世界から跡形もなく消えてしまったようです」朔弥は関節が白くなるほど、拳を強く握りしめた。以前はいつも後ろについて歩き、海外旅行の予定さえ逐一報告してくれた琴音が、今回は完全に自分の世界から消え去る決断をしたらしい。社長室のドアが静かに開いた。琴音が以前好んでいたピンク色のワンピースを着た紗良が、野菜スープを持って入ってくる。「朔弥、野菜スープを作ったの。もう何日もまともな食事をしていないでしょ?」紗良は琴音の優しい話し方を真似ながら、朔弥にお椀を差し出した。だが、朔弥はまるで熱湯にでも触れたかのように体をのけぞらせた。「誰がここに入っていいと言った?」紗良は手を宙に浮かせたまま、笑顔を強張らせた。彼女は朔弥と籍を入れて以来、徹底して琴音の真似をしていた。朝は蜂蜜レモンティーを用意し、夜の書斎には朔弥のために灯りをつけ、服装から愛用の香水まで琴音と同じにした。それでも返ってくるのは冷ややかな目だけだった。「疲れてると思って……」と小声で弁解し、もう一度スープを差し出す。「持っていけ」朔弥の声は氷のように冷たい。「俺は、セロリが苦手なんだ。琴音なら、絶対に入れない」朔弥がそう言い終わるや否や、二人は固まった。紗良の顔がみるみるうちに、青ざめていく。また琴音……ここ数日、朔弥は書類に目を通しながら独り言を言い、食事の際には空席を見つめ、寝言ではその名を呼んでいた。紗良はこみ上げる怒りを必死に抑え、野菜スープを机に乱暴に置いた。「あなたの妻は私なの!ねえ朔弥、どれだけ頑張れば、私のことを見てくれるの?」だが朔弥は相手にもせず、部屋を出て行った。外の空気を吸わなければ、息苦しさで、狂ってしまいそうだったから。帰宅すると、屋敷が異様なほど静かに感じられた。使用人の話によれば、紗良が琴音の寝室を模様替えし、紗良の
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第10話
飛行機がF国に着陸すると、外は霧雨だった。琴音はスーツケースを引きながら空港を出る。異国の冷たい風に触れ、ようやく朔弥から完全に離れられたのだと実感した。自分は今日から、この土地で生きる一人の名もなき人間。残りわずかな貯金で、琴音は古い町並みのマンションを一室借り、丸3日かけて部屋を整えた。数少ない洋服をクローゼットに入れ、フリーマーケットで買った画材をデスクの前に並べた。そして最後に、あの偽物の婚姻届受理証明書を茶封筒に入れ、そっと書斎の金庫の中へとしまい込んだ。すべてを終えると、ようやく自分を取り戻せたような気がした。F国に発つ前に申請していた、美術デザインを専攻するための大学から、今日合格通知書が届いた。学費と家賃を稼ぐため、琴音は大学の近くにあるギャラリーでアルバイトを始めた。そのギャラリーは細い路地の奥にひっそりと佇んでおり、扉を開けると鈴がチリンと鳴って、中にはほのかに良い香りが漂っている。琴音の仕事は作品の整理や、時折訪れる客の対応だった。彼女はいつも前髪で顔を隠すようにうつむき、静かに黙々と作業をこなす。平穏な日々が流れていたが、ある土砂降りの午後、一人の男がやってきた。トレンチコートを着て、何やら古そうな絵を脇に抱えたその男は、凛々しい立ち姿で、優しく微笑んでいる。「何かお探しでしょうか?」そう尋ねる琴音に、男は優しく笑い、手を差し出した。「東雲晴臣(しののめ はるおみ)。このギャラリーのキュレーターだよ」琴音の頬が一瞬で赤く染まる。「すみません!大変な失礼を!」晴臣は温かい目で微笑んだ。「最近忙しくてなかなか来られなかったけど、これからちょくちょく会うことになると思うよ」その日以来、二人はたびたび芸術について語り合うようになった。最近、晴臣が古い作品の修復作業に追われていた時、琴音は傷んだ一枚の絵の前で足を止めた。晴臣が優しく声をかける。「何を考えているのかな?」琴音ははっとし、慌てて目を伏せた。「すみません。勝手に見たりして……」晴臣はふっと笑うと、指先で画を軽く叩いた。「気にしないで。そんな風に食い入るように見てくれるなんて、芸術的センスがある証拠だよ」琴音の指についた乾ききらない絵具と、テーブルに広げられたラフ画に、晴臣の目が留まる。「絵を描くの
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