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第3話

Auteur: 珠玉
【ありがとうございます。できるだけ早く申請書類を準備します】

ジェフがずっと待っていてくれたなんて……涼子の目がじんわりと潤んだ。それなのに自分は、宮本家の屋敷の中で萎縮し、自分を見失っていた。

【ところでシンディ、修司さんとは何かあったの? 今日のSNSのトレンドで見たんだけど、彼が産婦人科病院の新人入社式に出席していたね。あの女性は妹さん?】

涼子はしばらく黙り込んでから、文字を打った。

【……いいえ。彼の本当の奥さんになる人ですよ】

【君たち、離婚したのか?】

【いいえ。でも、もうすぐです】

ジェフもそれ以上は何も言わず、励ましの言葉をいくつかかけてチャットを終えた。多くのことは、涼子がセント・ランドに来てから直接話そう。

涼子はSNSを開いた。普段はこういう芸能ニュースにはあまり興味がない。だがジェフが触れた以上、見ておくべきだと思った。

トレンドのトップに【宮本御曹司×初恋の人、愛の復活】という見出しが躍っている。クリックすると、舞衣がマイクを持ってスピーチしている動画が再生された。

よく撮れている。二人の目配せ、互いを思いやる様子が鮮明に記録されている。そして野次馬がコメント欄に一枚の写真を貼っていた。涼子が開いてみると、人混みの中の自分が写っていた。

【これって宮本夫人の涼子じゃない?】

【最近の愛人ってこんなに図々しいの?本妻がいる場でここまで親密なんて】

【>>1、彼女は宮本さんの初恋の人だよ。初恋最強ってわかるでしょ。どんな男だって抗えないわ。今の奥さんが誰だろうが関係ない】

【でも涼子さんが本当の……】

【何が本当よ。佐々木さんが海外に行かなければ、宮本さんがおじい様に結婚を迫られることもなかった。涼子の出番なんてなかったの。とっくに譲るべきだったのよ、あの賞味期限切れの女】

【あんた愛人本人でしょ!】

コメント欄は荒れに荒れていたが、涼子は全く気にならなかった。ただ写真の中の自分が、こんなにも寂しげに見えることに驚いただけだ。その姿はすっかり傷ついた様子だった。

彼女はスマホを閉じ、深く息を吐いた。やはりニュースなんて見るものではない。気が滅入るだけだ。

涼子はカフェに足を踏み入れた。七年ぶりに、こうして一人でゆっくりとした時間を過ごせる。カフェラテを注文し、母・森山実里(もりやま みさと)に電話をかけた。

実里はすぐに出た。「もしもし、涼子?」

「お母さん、私、離婚したい」

向こうがしばらく沈黙し、それから言った。「……そう、いいわ。修司くんは冷たすぎて、あなたを大切にできないって、最初から反対だったわね」

冷たい?ただ妻である自分だけに冷たいよね。

「もう決めたのなら、お母さんは応援するわ。森山家も順調に立て直せたし、確かに宮本家には感謝してる。でも私の宝物の幸せが一番大事。

もし修司くんが何か賠償を求めるなら、森山家にも払える力はあるから。涼子、お母さんは、あなたに幸せになってほしいの」

「……ありがとう、お母さん」

涼子は必死に涙をこらえたが、それでも涙がぽたぽたと目の前のコーヒーに落ち、波紋を広げていった。

……

「奥様、お帰りなさいませ」

宮本邸に戻ったときには、もう薄暗くなっていた。部屋の中はがらんとして、いつもと変わらない。

ゴロゴロと雷が鳴り響き、すぐに激しい雨が降り始めた。涼子は窓の外を見つめ、物思いに沈んでいた。

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