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第1045話

Author: 木真知子
あの誘拐事件は、宮沢家が誰も口にしたくない過去だった。

当時、宮沢家の若様ふたりは、全国的に名の知れた誘拐グループにさらわれた。

深い山林の、ゴキブリとネズミだらけの廃倉庫。

そこで、宮沢会長に巨額の身代金が要求された。

隼人は、何日閉じ込められていたのか覚えていない。汚く、湿っぽく、悪臭が満ち、朝も夜も分からない。

幼い彼は毎日殴られ、罵られた。逃走を恐れられ、三日に一度しか飯が与えられない。生き地獄だった。

――その時、兄が動いた。

四つ年上の『兄』は、見張りを命懸けで引きつけた。

隼人に、ただ一つの逃げ道を作るために。

森へ。

隼人は転び、ぶつかり、振り返ることもできず、ただ走った。

力尽き、斜面から転げ落ちた。

幸い、山に蛇を獲りに来ていた猟師に助けられた。

目が覚めるやいなや、彼は警察に連絡。

犯人の手がかりを伝え、宮沢家へと戻ることができた。

だが、兄には運がなかった。

凶悪な犯人たちは怒り狂い、兄を半殺しにした。

さらに狭いコンテナに押し込み、五日間、水も食事も与えない。

――宮沢家の長男は、自分の尿を飲んで耐えた。

さらに三日。

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