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第376話

مؤلف: 幸月
「喜ぶ理由なんて、この世のどこにあるのよ」

紗里は冷ややかな視線を、実の父親へとちらりと向けた。

「だって、あの老いぼれがいなくなれば、巨大な吉川グループはすべて蒼介くんの手に落ちるんだぞ。そうなったら、吉川家の威光に乗じてうちの藤本家も一気に表舞台へ躍り出て、濱海市どころか全国にその名を轟かせられるじゃないか――」

達也がそこまで熱弁を振るった瞬間、病室はしんと静まり返った。

彼の顔に浮かんでいた浮かれた笑みが、みるみるうちに凍りついていく。紗里の、一切の感情を読み取れない眼差しと正面からぶつかった瞬間、その浅はかな野心は完全に粉砕された。

達也の喉がヒュッと鳴り、声が詰まる。隠しきれない怯えが、その全身からどっとにじみ出していた。

「さ、紗里……言いたいことがあるなら、はっきり言葉で言ってくれよ。お父さんが気が小さいのは、お前だってよくわかってるだろ。そんな恐ろしい目で見るなよ」

最後には、ご機嫌を窺うような、卑屈な笑みまで浮かべている。

その姿は、血の繋がった父と娘と言うより、絶対的な権力を持つ主人と、それに怯える下僕のようだった。

紗里の顔は冷たく、その声は氷
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