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44:捨てられるはずの命

last update publish date: 2025-12-17 21:58:10

 小夜子の手でシンクと作業台が磨き上げられ、本来の輝きを取り戻した厨房。

 その真ん中で、小夜子はザルを片手に忙しく動き回っていた。

 先ほど泥を洗い落とした大根から剥き取られた、分厚い皮。3枚におろされた魚の残骸として、無造作に放り出されていた頭や中骨もある。しなびて茶色くなりかけ、ゴミ箱行き寸前だった長ネギの青い部分。

 小夜子はそれらを慈しむように次々と拾い上げ、冷たい水で丁寧に洗ってザルに入れていく。その様子を腕組みして見ていた隼人が、たまらずといった様子で口を開いた。

「おい。まさかとは思うが、そのゴミを俺に食わせる気じゃないだろうな?」

 彼の眉間には、深いしわが刻まれている。無理もない。高級旅館の再建を掲げる社長の目の前で、妻が残飯あさりのような真似をしているのだ。

 けれど小夜子の手は止まらなかった。彼女はきっぱりと首を横に振る。

「ゴミではありません。これも大切な『命』です」

 ザルの中で水気を切りながら、まな板に向かう背筋はまっすぐに伸びている。

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