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73:思い出の香り

last update Petsa ng paglalathala: 2025-12-28 18:07:22

 午後6時、ホテル『サンクチュアリ』のメインダイニング『Nocturne(ノクターン)』。

 夜景を一望できるVIP用の個室は、重苦しい沈黙に包まれていた。

 テーブルには手つかずのオードブルが並んでいる。

 ローズベリー伯爵は、ソムリエが恭しく差し出した『シャトー・マルゴー』のグラスを指差し、吐き捨てるように言った。

「下げろ」

「は……? しかし閣下、こちらは当ホテルが誇る最高級のヴィンテージで……」

「ラベルを見ただけでわかる。それは、石油(オイル)の味がする」

 ソムリエが凍りついた。

「せ、石油……でございますか?」

「そうだ。金、権力、効率……資本主義の臭い脂の味だ。私の乾いた喉を潤すものではない」

 理不尽な難癖である。だがその言葉の裏には、悲痛な響きがあった。

 ソムリエはそれに気づかない。

 ローズ

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