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第9話

Penulis: ぽりぽり海苔っ子
礼司とはもう何日も会っていなかった。

あの件以来、私は叔父と一緒にホテル暮らしをしていたからだ。

伊東家に残した荷物は何一つ持ち出さなかった。

伊東夫婦は何度も会いたいと電話をかけてきたが、叔父がすべて断った。

「私たちが橙子ちゃんをしっかり守っていれば、あんなことには……でも……」

「『でも』なんて言葉は聞きたくありません。守れなかった、それが全てです」

叔父は容赦なく言葉を遮った。

「今さら橙子ちゃんに会ったところで、何の意味もありません」

その後、叔父は伊東家からの電話に出なくなった。

今、礼司が私たちの前に立っている。

私は何も言わなかった。

礼司はドサリと膝をつき、叔父に向かって土下座した。

「叔父さん、橙子を連れて行かないでください!

本当に反省しています!

これからは必ず、俺が橙子を守りますから」

十年前、八歳の礼司もこうして叔父に土下座した。

涙ながらに私を引き留めた。

十年後、彼は自分の過ちのために、またしても私を引き留めようと跪いている。

礼司は思いもしなかっただろう。ほんの出来心のゲームが、私を完全に失う結果になるとは。

私が彼から離れられないと、彼でなければ生きていけないと高を括っていたのだ。

誰がいなくなっても、世界は変わらず回り続けるというのに。

「十年前、俺は八歳のお前に情けをかけた。だが今の俺は、十八歳になったお前に揺らぐことはない。

同じ過ちを二度は繰り返さん」

叔父の冷徹な宣告が、礼司の未練を断ち切った。

出発の日。どこで聞きつけたのか、礼司が車を飛ばして追いかけてきたらしい。

だが途中、彼は事故を起こした。

搭乗前、幸枝から電話があった。

「橙子ちゃん、お願いだから、戻って礼司の顔を見てあげて!」

受話器の向こうで泣き叫ぶ声に、胸が痛んだ。

滑走路で飛行機が動き出す。私は携帯を握りしめ、通話を切った。

【私は医者じゃない。人を救うことはできません】

【お母さん、私たちの縁はここまでです】

メッセージを送信し、私は携帯をゴミ箱へ投げ捨てた。

ゴン、という音と共に、私は過去と決別した。

東都市に着いてから、私は勉強の傍ら心理カウンセリングを受けた。

十八歳の誕生日を過ぎた頃、喉からわずかに音が出るようになった。

言葉を話せるようになるにはまだ時間がかかるが、確か
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  • 君のいない世界で、橙は鮮やかに色づく   第9話

    礼司とはもう何日も会っていなかった。あの件以来、私は叔父と一緒にホテル暮らしをしていたからだ。伊東家に残した荷物は何一つ持ち出さなかった。伊東夫婦は何度も会いたいと電話をかけてきたが、叔父がすべて断った。「私たちが橙子ちゃんをしっかり守っていれば、あんなことには……でも……」「『でも』なんて言葉は聞きたくありません。守れなかった、それが全てです」叔父は容赦なく言葉を遮った。「今さら橙子ちゃんに会ったところで、何の意味もありません」その後、叔父は伊東家からの電話に出なくなった。今、礼司が私たちの前に立っている。私は何も言わなかった。礼司はドサリと膝をつき、叔父に向かって土下座した。「叔父さん、橙子を連れて行かないでください!本当に反省しています!これからは必ず、俺が橙子を守りますから」十年前、八歳の礼司もこうして叔父に土下座した。涙ながらに私を引き留めた。十年後、彼は自分の過ちのために、またしても私を引き留めようと跪いている。礼司は思いもしなかっただろう。ほんの出来心のゲームが、私を完全に失う結果になるとは。私が彼から離れられないと、彼でなければ生きていけないと高を括っていたのだ。誰がいなくなっても、世界は変わらず回り続けるというのに。「十年前、俺は八歳のお前に情けをかけた。だが今の俺は、十八歳になったお前に揺らぐことはない。同じ過ちを二度は繰り返さん」叔父の冷徹な宣告が、礼司の未練を断ち切った。出発の日。どこで聞きつけたのか、礼司が車を飛ばして追いかけてきたらしい。だが途中、彼は事故を起こした。搭乗前、幸枝から電話があった。「橙子ちゃん、お願いだから、戻って礼司の顔を見てあげて!」受話器の向こうで泣き叫ぶ声に、胸が痛んだ。滑走路で飛行機が動き出す。私は携帯を握りしめ、通話を切った。【私は医者じゃない。人を救うことはできません】【お母さん、私たちの縁はここまでです】メッセージを送信し、私は携帯をゴミ箱へ投げ捨てた。ゴン、という音と共に、私は過去と決別した。東都市に着いてから、私は勉強の傍ら心理カウンセリングを受けた。十八歳の誕生日を過ぎた頃、喉からわずかに音が出るようになった。言葉を話せるようになるにはまだ時間がかかるが、確か

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