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第3話

Auteur: 夜鳩
私は目の前で心配してくれている二人を見つめながら、さっきの木下の表情を思い出し、心の中で迷いが生じた。

なぜかわからないが、いつも何でも話せる松尾には今日の出来事を隠すことにした。

体調が悪いため深く考え込むことはできず、身支度を済ませてベッドに潜り込んだ。

寝返りを打ちながら眠れずにいると、携帯を開いて仁藤さんにメッセージを送ろうとして、ふとPayPayに振り込みがあることに気付いた。

松尾が一万円振り込んでくれていた。彼女の一ヶ月の生活費は二万四千円しかないのに。

すぐに彼女にメッセージを送ると、即座に返信が来た。

「お母さんが言ってたよ。ちゃんとご飯食べてって。何かあったら義理の両親が助けてくれるからって」

松尾の母は持病があって長期の治療が必要で働けず、父は一般のサラリーマンで家族を養っている。

一万円は彼らにとって決して少なくない金額だ。

私は急に鼻の奥が熱くなり、今日の出来事を仁藤さんのことは除いて、全て松尾に打ち明けた。

松尾は数分間入力中の表示が続いた後、やっとメッセージを送ってきた。

「梨子、木下さんの悪口を言うつもりじゃないんだけど」

「河野ちゃんが前に何度か私に言ってたの。寮で勉強してる時、木下さんがあなたの物を漁って、スキンケア用品に何か入れてたって。河野ちゃんに口止めされてたから、こっそり私に教えて、注意してって言われたの」

前に何度かアレルギーを起こしたのは、彼女のせいだったのか。

以前、木下は私の靴に画鋲を入れたこともあった。

でも私は少し躊躇った。「私も疑ってるけど、さっきの反応は演技には見えなかったわ」

「忘れないで、彼女は演劇部の女優よ。あんな反応だって演技できるわ」

「わざと話題を変えて、知らないふりをしてるんじゃない?」

でも私は何故か納得できなかった。しばらく考えていると、頭が激しく痛み始め、霧がかかったように思考が混乱してきた。

もう考えるのをやめ、お互いおやすみを言い合って。

私は目を閉じた。

......

どれくらい経っただろう、鶏の鳴き声が聞こえた。

ぼんやりと目覚めると、体が全く動かせないことに気付いた。

寮のベッドは狭くて、よく寝相が悪くて金縛りになる。

でも今日は違う。まるで本当に誰かが胸の上に座っているみたいで、息ができない。

目を開けると、真っ暗で何も見えなかった。

金縛りの経験があったので、落ち着いて指先から動かそうと集中した。

でも体は言うことを聞かず、汗が吹き出てきた。

どうしたらいいかわからない時、カーテンの外から三人の部屋メイトの話し声が聞こえた。何を話しているのかはわからないが、誰か来て起こしてくれることを願った。

しばらくすると、カーテンの外から光が差し込んでいることに気付いた。外は明るいはずなのに。

なぜさっきまで何も見えなかったのだろう?

私は数秒間呆然として、ゆっくりと目を上に向けた。

腐敗した顔が逆さまに私の頭上に浮かんでいて、黒く長い枯れた髪がカーテンのように私のまぶたに垂れ下がっていた。

私は恐怖で目を閉じ、悲鳴を上げた。

今度は急にベッドから飛び起きた。

カーテンを開けると、向かいの松尾が一人で椅子に座り、明かりをつけて本を読んでいるように見えた。

すぐにベッドから降りて、今の悪夢について話した。

話し終えると、松尾が無表情で私を見上げているのに気付いた。

彼女は静かな声で尋ねた。「こんな顔?」

瞬きをすると、他の二つのベッドから、木下と河野が顔を覗かせていて、腐敗して皮が剥がれ落ちている顔を見せていた。

私は目が覚めた。今度は本当に目が覚めた。

起き上がると、木下が私のベッドの下に立って、イライラした様子で私を見ていた。

「がんなの?それとも精神病なの?寝てるときにビクビクして、うるさいわね!」

呼吸が落ち着いてから、私は下を向いて言った。「私のベッドの近くで何してるの?」
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