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50:嫉妬の味は苦い

last update Last Updated: 2025-12-16 11:34:49

【レン視点】

 今日も俺は紬の部屋にいる。

 今日の献立はコロッケだった。以前は揚げ物なんて油っぽくて臭くて食べられなかったが、彼女のコロッケは全く違う。

 さくさくとした衣の中に、ホカホカのじゃがいもと挽き肉が入っている。

 食べ応えがあるのにいくつでも食べられてしまいそうで、ついおかわりをした。

 付け合せのキャベツの千切りはシャキシャキだった。キャベツがこんなに美味い野菜だとは知らなかった。

 紬と知り合ってから、俺はいくつ新しいことを知っただろう。

 24年間生きてきて、子供の頃は親の言いなりだった。俺に無関心な両親をどうにか振り向かせたくて、色々と試しては全部空振った。

 俺の実家は金だけはあるが、家族は崩壊している。むしろなんで両親が離婚していないのか理解に苦しむ。

 幼い頃は俺が両親の心を掴めば、温かな家族になれると信じていたっけ。

 アイドルになったのも、子供の頃の願望を捨てきれなかったからだ。

 高校の頃、スカウトの人間に「君には才能がある」と言われて、アイドルに――特別な人間になれば親が俺を見てくれると思った。

 ……現実は結局、何も変わらなかったが。

 今思えばバカバカしい。

 手に入れられないものを追い求めるより、手に入る幸せを探すべきだった。

 そう、この部屋のように。この部屋の主の紬のような人を探すべきだった。

 食後、ビーズクッションに身体を預けて俺は深く息を吐いた。

 パステルイエローのスウェット越しに伝わる、柔らかな感触。胸元にプリントされた「モチ犬」の間の抜けた顔を指先でなぞる。

 悪くない。むしろ最高だ。締め付けのない服と適度な満腹感。そしてキッチンから聞こえる水音と、紬の気配。

 ここには俺をジャッジする人間はいない。「綺更津レン」という完璧なアイドル像を求めてくる奴もいない。ただ、俺が俺として息をしていられる、世界で唯一の場所。

 スマホのゲーム画面を眺めながら、俺は心から安らぎを感じていた。この時間が永遠に続けばいいのに。本気でそう思った、その時だっ

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