Share

第 1019 話

Author: 一笠
しかし今では、翠は心から友達として、戦友として凛と一緒にやっていこうという想いがあった。

30分後、ようやく落ち着いた雪は乱暴に涙を拭いながら、掠れた声で言った。「目が覚めたんだったら、何か食べなきゃ。千鳥亭に料理を届けてもらうわね」

凛が返事をする間もなく、雪は立ち上がる。「少しは食べないと。何も食べてないから倒れたのよ」

雪が病室を出ていくのを見送りながら、凛は口まで出かかった断りの言葉を飲み込み、困ったような笑顔を浮かべた。

そして、翠の方に視線を向ける。

「翠さん」

「凛さん」

二人は同時にお互いの名前を呼んだ。

凛は微笑む。「お先にどうぞ」

翠が近づいてきて言った。「大丈夫です。私た
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1035 話

    「恒夫さんは法に反したんですから、当然それ相応の罰を受けるべきです。こんな危険を犯したんです、もちろんこうなることも覚悟の上だったはずでは?自分の選択に責任を持つ、それは当然のことですよ」凛はそう言いながら、文子の手をゆっくりと離した。文子はよろめきながら、一歩後ずさる。何も言い返せない。ただ、深い悲しみだけが胸に広がった。文子はこれまで、恒夫は善悪を弁えていると信じていたため、彼の仕事には一切口出ししてこなかった。外で働く夫を、妻である自分が支える、そうやって自分たちは長年やってきたのだった。だから、まさか恒夫がこんな重大な過ちを犯すなんて......「恒夫さん、あなたが今できる

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1034 話

    凛は、一週間の間に霧島グループで大小合わせて20以上の会議をこなしていた。監査チームと財務部による資金の洗い直し、そして明彦が教えてくれた海外のペーパーカンパニーの情報により、恒夫が動かした金額がほぼ特定できた。そして、その莫大な金額は、ほぼ全て「Q」組織の口座に流れていたのだった。そもそも朔は、恒夫と資金を分かち合うつもりなど毛頭なく、資金を海外に移させるためだけに、恒夫を騙していたのだ。もし、彼らの計画が成功していたとしても、恒夫は一銭も手に入らないどころか、海外で孤立無援になっただろう。調査結果を持って、凛は霧島家を訪ねた。魂の抜けたような恒夫がソファに座っている。あの日、夜逃

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1033 話

    誠は眉をひそめ続ける。「本来なら夏目さんにこのことを伝えるつもりでしたが、ちょうどあなたが来ました。なので、あなただけでも知っていればいいでしょう。夏目さんをこれ以上煩わせたくはありませんので。それに、あなた方夏目家は夏目さんにあまりにも多くのものを背負わせました。もし、それが償えないというのであれば、もうこれ以上彼女の人生をかき乱さないであげてください」そう言い終えると、誠はもうこれ以上言葉を交わす気もなく、くるりと背を向けて去っていった。深い罪悪感に押しつぶされ、達也はその場に立ち尽くした。......そしてその夜。過酷な拷問を受けていた誠也は、飛行機が到着するなり、すぐに病院

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1032 話

    誠の緊張した様子を見て、凛は微笑んだ。「あなたがいるんだもの。私に何かあるわけないでしょ?綾辻さんはもうすっかり虫の息。それに、あちこちで監視されているようなもんだから、少しでも姿を見せたら必ず足がつくはず。私が会議の前に動画を公開したのは、彼の逃げ道を先に断つため。それに、あの島の件はもう国際的な騒ぎになってるし、関係者もたくさんいる。たとえ綾辻さんが海外に逃げられたとしても、待ち受けているのは権力者たちからの報復。こんな状況で、軽はずみな行動に出られるわけないの。だから、彼はまだ北都にいて、恒夫さんからの成功連絡を待っていると思う。残念だけど、もうその連絡は来ないんだけどね」視

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1031 話

    「凛、言い訳はよして。凛は優しいんだから」慶吾を睨みつけながら雪は言った。「この人にあんな酷い態度を取られたっていうのに、それでも傍にいてあげるなんて、あなた、なんて心が広いの。ある人はさ、自分がすごいとでも思ってるのよ。けど、結果どうなったと思う?車椅子で会社に行ったはいいけど、そこで倒れて病院にまた戻ってきたのよ。なのに、まだ人を見下していられるなんて、ねえ?」......雪はそうまくしたてた後、ふと気づいた。慶吾は、いまの今まで一言も発していない。普段なら、とっくにテーブルを叩いて怒鳴っているはずなのに。一体どうしたのかしら!雪は近づき、慶吾の額に手を当てる。「あなた、怒り

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 1030 話

    凛が霧島グループの会議に出席したというニュースは、業界内へ瞬く間に広まった。凛が聖天の事業を全て継承するのではないかという憶測が飛び交う。加えて、会議へ出席する前に、謎の投資家集団を告発する動画を公開したことで、霧島グループもその影響を受けているのではないかと噂された。聖天が事故にあった時でさえ霧島グループの株価が影響を受けることはなかったが、凛が株主総会へと出席したというニュースが流れた翌日には霧島グループの株価は10%以上も下落した。なぜならば、多くの人は賭けに出ることを恐れ、ましてや女性である凛が、この危機を救えるとは到底信じていなかったからだ。世間が凛のことでもちきりになってい

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status