Share

第 423 話

Author: 一笠
このところ、ちょくちょく聖天の日常の写真を盗撮しては凛に送っていた。

凛の返事はいつもそっけなかったが、輝は懲りずに送り続け、しまいにはパパラッチに共感するようになっていた。この盗撮のスリルは、危険だけど刺激的なものだった。

「どうしてそんなに凛さんと叔父さんがくっつくのを望んでいるの?」

渚に問われて、輝は我に返った。「なんでって?二人お似合いだと思うからだよ!」

「翠姉さんのほうがもっとお似合いじゃない?学歴も家柄も、叔父さんと釣り合ってるし」

渚は聖天の部屋の方を眺め、複雑な表情を浮かべた。「翠姉さんが叔父さんに与えられるものは、凛さんが与えられるものよりずっとずっと多い。

凛さんが翠姉
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 423 話

    このところ、ちょくちょく聖天の日常の写真を盗撮しては凛に送っていた。凛の返事はいつもそっけなかったが、輝は懲りずに送り続け、しまいにはパパラッチに共感するようになっていた。この盗撮のスリルは、危険だけど刺激的なものだった。「どうしてそんなに凛さんと叔父さんがくっつくのを望んでいるの?」渚に問われて、輝は我に返った。「なんでって?二人お似合いだと思うからだよ!」「翠姉さんのほうがもっとお似合いじゃない?学歴も家柄も、叔父さんと釣り合ってるし」渚は聖天の部屋の方を眺め、複雑な表情を浮かべた。「翠姉さんが叔父さんに与えられるものは、凛さんが与えられるものよりずっとずっと多い。凛さんが翠姉

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 422 話

    聖天が霧島家の本邸に住み始めてからというもの、屋敷全体に変な空気が漂っていた。しかし雪だけは、毎日嬉しそうに聖天のために様々な滋養スープやご馳走を用意していた。雪の前では聖天は合わせて二口三口と口へ入れるが、彼女が去ると残りは全部輝の腹の中へと消えていく。輝はうんざりした様子で言った。「叔父さん、これ以上飲んだら、マネージャーがブチ切れるぞ。来週は宣材写真の撮影があるんだ。もうこれ以上は付き合えない。そういえば、今回の宣材写真の撮影は姉さんに頼むんだ!」輝は意味ありげに目を細めた。「叔父さん、霧島家に戻ってきたことは姉さんに言ってないよな?」聖天は彼を一瞥した。「お前は話したのか?

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 421 話

    雪がひとしきり喋ったところで、聖天は彼女の腕を掴み、それ以上言うなと目で合図した。しかし、言うべきこと、言うべきでないこと構わず、雪は全てを吐き出してしまった。室内は気まずい沈黙に包まれた。慶吾は数回咳払いをした。「俺は一言言っただけなのに、そんなに反論する必要があるのか?何でもかんでもお前が正しいなんて、そんな都合のいい話があるか?」雪は慶吾に向かって不満の意思を表すように「ふん」と鼻を鳴らした。「聖天が帰って来ないのは、彼が全力で霧島グループに貢献しているからよ。私は誇りに思っている!聖天が帰って来るのは、彼が親孝行で、家族を思ってのこと。私は嬉しい!」結局のところ、彼女の中

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 420 話

    1時間後、慶吾たちが部屋に入ってきた。雪が真っ先に口を開いた。「聖天、あなたのお父さんとお兄さんたちが会いに来たよ!」聖天はソファに座り片手で書類をめくっていたが、物音が聞こえると顔を上げた。しかし、金縁眼鏡の奥の切れ長の瞳からは、何の感情も読み取れない。慶吾は聖天に近づき、書類に目をやった。「退院したばかりなのに、どうしてゆっくり休まないんだ?」「入院中に仕事が溜まってしまったから、この何日間で片付けようと思っていたんだ」聖天は彼らに座るように促すと、書類を脇に置いた。「そんなに無理をすることはない。休むべき時は休むべきだ。今は身体が一番大切だぞ」慶吾は聖天の向かい側に座り、修

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 419 話

    「あの運転手は、子供のために口を割らなかったんだろう。黒幕が母子を国外に逃して、運転手の最大の弱点を握ったんだ」「ああ」聖天は夜空を見上げ、ゆっくりと口を開いた。「俺は霧島家に帰って療養する」礼は一瞬たじろいだ。「急にどうして?お前......」言葉を途中で止め、礼の頭にふと一つの推測が浮かび、背筋がぞっとした。「まさか、霧島家の人間が関わっているとでも言うのか?」聖天は黙り込んでいた。よく考えろ。自分と翠の結婚で、誰の利益が脅かされるのだろうか?そして、誰が霧島グループの社員に接触できるのだろうか?答えは心の中で既に出た。しかし、証拠が何もない。今できる唯一の方法は、自ら虎

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 418 話

    凛は心を落ち着かせた。「さっきおばあさんに聞いたんですけど、向かいの802号室にはもう半月くらい誰も住んでいないそうですよ。来る前に大家さんにも話を聞きました。三人家族に貸したそうで、ご主人は霧島グループ傘下の会社で警備員をしているらしいです。奥さんは専業主婦で、子供は少し健康に問題があるみたいで、よく病院に通っています」凛はポケットから一枚の紙を取り出し、聖天に差し出した。「これは彼らの家族情報です。この子供の通院記録から、母親と子供が最近病院に行ったかどうかを調べられると思います。ちょうどあなたも来たことだし、黒木先生に頼んで子供の診療記録を調べてもらいましょう。すぐに居場所が分かる

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status