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第 118 話

Author: 一笠
30分後、凍てつくようなオーラを纏って宴会場に足を踏み入れた聖天はまっすぐステージへ向かうと、演奏者からヴァイオリンを奪い取った。

バイオリンの音色が途絶え、会場のざわめきも静まり返った。

招待客は皆、聖天に気づいて驚いた。

霧島家のこの修羅様は何をするつもりだ?

「皆さん、申し訳ない」聖天は低い声で言った。「人を探しているんだ。夏目凛という女性を見かけた方はいないか?」

聖天がそう言うと、会場がざわめき始めた。

「夏目凛?夏目家のお嬢様のこと?彼女も来てたの?」

「霧島さんの様子からすると、彼女をすごく焦って探してるみたいだけど、一体何があったんだろう?」

「......」

雪は慌てて人混み
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