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第 317 話

Auteur: 一笠
そう言うと、凛は会釈してその場を去った。

聖天が凛の手を取ろうとした瞬間、雪が彼の腕を掴んだ。

「彼女が自分で帰るって言ってるじゃない。どうして引き留めるの?聖天、お願いだから、もう彼女と関わるのはやめなさい。3年前、彼女のせいであなたは危うく当主の座を失うところだったのよ?忘れたの?」

夜風に運ばれてきた雪の言葉に、凛は思わず足早になった。

凛の後ろ姿を見送り、聖天は雪を冷たく睨みつけた。「俺が黙っていたのは、母さんが余計なことを言って、夏目さんを傷つけるのを防ぐためだ。

彼女がいなくなった今、よく聞け。

翠との結婚は、俺は認めない。もしそれを強行するなら、俺はもう一度当主の座を捨てることも
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