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第 328 話

Author: 一笠
「泉さん、私には仕事のルールがあるよ。もし、撮影を依頼したいのであれば、半年前には予約を入れて」

凛は口角を上げ、社交辞令で微笑んだ。

泉は怒って、「カメラマンのくせに、生意気ね!黒木家にカメラマンがいないとでも思ってるの?半年前から予約が必要だなんて、あなたは......」

「泉」

悠斗が泉の隣にやってきて、彼女の肩を抱き寄せながら、ふざけたように言った。「俺が見てないうちに、トラブルを起こしてるのか?」

「夏目さん、彼女は黒木泉。礼の妹で、お嬢様育ちで、少し気が強いところがあるが、気にしないでくださいね」

「誰が気が強いって?」

泉は悠斗を睨みつけたが、彼女の耳はみるみるうちに赤くなってい
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