Se connecter三浦美都は、離婚調停の席で結婚生活に終わりを告げた。 冷静な顔で嘘を積み重ね、美都を陥れ、愛人と一緒になるために離婚準備を整えた夫の蒼大。 そして彼の弁護士、財前理人。彼は美都の旧友で、彼女に恩があった。 美都を助けるために、ある提案を持ち掛ける。 「俺と結婚してほしい」 しかしこれは契約再婚で、元夫をやり込めるためだと聞かされる。 貯金もすべて取られてしまい、行く宛てもない美都は理人の申し出を承諾する。 『あの人の罪を暴いてやる――!!』 理人との結婚生活は予想以上に快適だけど、 彼の義妹がふたりの仲を猛烈に邪魔をしてくる。 さらに元夫が復縁しようと迫ってきて―ー? 離婚→再婚からの逆転劇物語!
Voir plus理人の重なりは、驚くほど慎重で、それでいてひりつくような渇望に満ちていた。 私の肌に触れる彼の指先が、わずかに躊躇うように震えるのを感じる。彼はまだ、私の中に眠るあの日の恐怖に対して遠慮しているのだろう。「嫌ならすぐに止めるから」 耳元で掠れた声が響く。私は応える代わりに、彼の背中に腕を回し、その逞しい身体を自分の方へと引き寄せた。「もっと、あなたを感じさせて……」 その言葉が合図となった。深く、熱い接吻が何度も交わされる。男たちが触れようとした肩、髪、そして唇。そのすべてを理人の香りと熱量で塗り潰していく。 優しいのに、なぜ、こんなにも狂おしい愛撫だと思うのだろう。 同じ男の人でも、理人は違う。私をいつも、心から愛いて、大切にしてくれるのが伝わってくる。 切なさに身を捩る。 理人は今すぐにでも爆発させたい欲望を閉じこめ、私に優しく、優しく触れてくれる。「君だけを大切にしたい」「私も……理人をずっと大切にしたいと思うわ」 何度も絶頂を教え込まれた体は火照り、理人を欲している。「理
「美都。今夜だけは、一人の男として君を独占させてほしい」「えっ……」「ごめん。もう限界なんだ。美都に触れたくて仕方ない」 ぎゅっと抱きしめる理人の腕は、言葉とは裏腹に震えていた。 遡ること30分前。例の事件から一週間が過ぎた。理人の徹底した看病と、片時も離れない過保護なおかげで、私の身体の傷はすっかり癒えていた。 明日からは理人も法廷に戻り、日常が再開する。そんな夜、彼は人美を信頼できるベテランシッターに預け、私を寝室へと呼び出し、先ほどの台詞を聞いたところだ。「人美はよく眠ってくれるいい子だ。万が一の時はもちろん、至急連絡をもらうことにしている。邪険に扱うつもりではないが、明日から仕事だ。美都をチャージさせて欲しい。今夜だけ、俺に君の時間を独占させてくれないか」 理人の瞳は、どこか切なげで、それでいてひどく情熱的に潤んでいた。 彼は私の手を引き、寝室の大きなベッドへと誘う。部屋には彼が好む白檀の香りが微かに漂い、室温は私を労わるように心地よく保たれていた。「美都」 理人は私の手首に指先を這わせた。もう跡は綺麗に消えたけれど、掴まれたりすると怖い。ビクッと肩を揺らす私を見て、彼は動きを止め、私の瞳をじっと見つめる。「俺に触れられるのは怖いかな?」
目を覚ますと朝だった。隣にはまだ眠りについている理人の姿があった。 昨夜の阿修羅のような激しさは消え、眉間の皺も解けて、穏やかな寝顔を見せている。 ――夢じゃなかったんだ。 自分の手首を見ると、そこにはロープの擦り傷を保護するガーゼが丁寧に貼られていた。理人が昨夜、寝る間も惜しんで手当てしてくれた証拠だ。 そっとベッドを抜け出し、近くに置いたベビーベッドの中で眠る人美の様子を見に行った。中で小さな拳を握ってスースーと眠る娘。その温もりを確認した瞬間、ようやく本当の意味での「日常」が戻ってきたことを実感し、鼻の奥がツンとした。 「……おはよう、美都」 背後から温かい腕が伸び、私の腰を抱き寄せた。いつの間にか目を覚ましていた理人が、起きたての低い声で私の耳元に囁く。「かわいい天使はねんね中かな?」「ええ。ごめんなさい。様子が気になったから……理人、起こしちゃった?」 「いや……君が隣にいないと、すぐに目が覚める体質になったらしい」 彼は私の肩に顎を乗せ、一緒に人美の寝顔を見つめた。その眼差しはどこまでも優しいが、私を抱きしめる腕の力は、二度と離さないと言わんばかりに強かった。 「今日から一週間、休みを取った。屋敷のセキュリティもすべて最新鋭のものに更新させる。もうこれで心配ない」 「お金かかっちゃう……」 「そのくらい安いものだ。SPも2倍雇ったから」 「ええっ」 旦那様の心配性に拍車か
屋敷へと戻る車中、理人は一度も私を離さなかった。 人美はすでに私の腕の中で、理人が用意してくれた最高級の柔らかな毛布に包まれ、規則正しい寝息を立てている。その無垢な寝顔を見るたび、張り詰めていた緊張が涙となって溢れ出した。 「……泣かないで。もうすべて終わったんだ」 理人は私の涙を指先で優しく拭い、そのまま何度も私の額に唇を落とした。 屋敷に戻ると、理人は手際よく人美をベビーベッドへと寝かせた。信頼できる専属の看護師を呼んでくれていたので、異常がないか念入りに確認させる。結果、異状はなにもないとのことで、心の底から安堵した。もしもこの子になにかあったらと思うと、胸が痛い。恐ろしい愛憎劇に巻き込んでしまったことを後悔する。「人美は大丈夫だ。もう心配ない。さあ、次は君の番だ」 理人は私を抱き上げ、寝室の大きなベッドへと横たえた。 汚れた洋服を脱がせ、温かいタオルで泥に塗れた私の身体を丁寧に拭いていく。指先が私の肌に触れるたび、そこから熱が伝わり、凍りついていた心と身体がじんわりと解けていった。「理人、自分でやるわ。あなたも疲れているでしょう?」 「だめだ。今は俺に甘やかされてくれ。……君がどれほど恐ろしい思いをしたか、それを思うだけで胸が潰れそうなんだ」 理人の声は微かに震えていた。 彼は私の膝の上に頭を埋め、まるで祈るように私の腰に腕を回した。無敗の弁護士と呼ばれ、
黒い革靴。整えられた髪。無駄のないスーツの皺。法廷で見たAIロボットみたいな冷たい姿のままなのに、今はなぜか——私の目の前にいるだけで空気が違って見えた。「……なにか御用ですか」 声が震えた。怖い。 この人は
私が黙っていることをいいことに、原告席の弁護士が即答する。「はい。原告は早期解決を強く望んでおります。離婚は前提です。その上で、被告に過大な請求をせず、公平な条件を提示しております」 公平—— この裁判自体、不公平なのに。なにを公平だというの。 裁判官は「では」と区切り、私のほうを見た。「被告はどうですか。離婚自体について、反対ですか」 反対と言えばいい。 反対だと言ってしまえばいい。 でも——反対と言った瞬間、次に来るのは「では証拠を出してください」だ。 私は出せない。 出せない私の言葉は、虚言として切り捨てられる。 喉の奥が、ぎゅっと縮む。「離婚、は……」
「私も……家庭を守ろうと、努力しました……」 言葉がうまく続かない。頭の中で言いたいことは次々浮かぶのに、口から出てくるのは途切れ途切れの断片だけ。胸がざわざわして鼓動が早鐘のようだ。裁判官がじっとこちらを見つめているのがわかる。表情は読めない。 原告席の弁護士がすっと片手を上げ、冷静な声で割って入ってくる。「被告の主張は具体性を欠いています。感情に基づく憶測ではなく、事実に即した反論をお願いできますか」 感情に基づく憶測——その言葉が頭の奥で反響する。カンジョウニモトヅクオクソク。私の必死の訴えは、彼らにはただの感情的なわがままに映っているのだ。事実に即した反論?そんなもの、でき
(どうしてこんなことに……) 離婚調停がうまくいかなかったため夫に裁判を起こされた私は今、家庭裁判所の法廷にいる。そこは、想像していたよりずっと小さかった。 テレビで見る「裁判」のような圧倒的な迫力はない。けれどその分、逃げ場がない。 正面に腰ほどの高さの木の壁が立ち上がり、その向こうに裁判官席がある。 淡い木目のパネルが視界をまっすぐ切り分け、こちら側とあちら側を別の世界みたいに隔てている。裁判官席は一段高く、中央の大きな椅子が主役のように据えられていた。 私は傍聴席ではなく被告席にひとりで腰掛けている。お金がないから無料相談の弁護士に成功報酬でお願いしていたのに、突然依頼
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