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第 808 話

Author: 一笠
慶吾が微笑んで頷くのを見て、雪はあからさまに顔をしかめた。

この前、せっかく親子二人に落ち着いて話し合ってもらおうとしたのに、慶吾は全然反省していなくて、本当に腹が立った。

自身の非を認めようとせず、離婚騒動を聖天のせいにしていた。

あの日家に帰ってから、雪はますます腹が立って、あんな人に同情するんじゃなかったと思った。

頭にきて、慶吾の連絡先を全てブロックした。ついでに霧島家の電話番号も着信拒否に設定した。

数ヶ月も経っているのに、よくもまあ、目の前に顔を出せたものだ。

雪の苛立ちは顔に書いてあった。裕子は雪を見てから、少し離れたところにいる慶吾を見た。

「喧嘩でもしたの?」

「離婚するのよ
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