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第3話

Auteur: 名無千夜
夜の九時、和真が果物の袋を手に持ってやってきた。

「千夏、チェリーを買ってきたよ、今食べるか?」

私は携帯を彼の前に投げて、画面には奈緒の新しい投稿が表示されていた。

【酸っぱくて甘いさくらんぼが食べたいって言ったのに、彼ったらチェリーを買ってきたの。笑える】

「奈緒がいらないなら、私に施してくれるってわけ?」

和真は眉をひそめて言った。「そんなこと言わないで……」

彼は近づき、優しく私の腰に腕を回して言った。「久しぶりにやらなかったから、怒ってるの?」

私は力いっぱい彼を押し返し、その場で何度もえずいてみせた。

和真の顔が一気に険しくなった。「千夏、いい加減にしろ、調子に乗るなよ」

「調子に乗るって?」私は胸を押さえ、ぽろぽろ涙を流しながら言った。「あなた、私がどれだけ罵倒の電話を受けたか、知ってる?

私がどれだけ多くのダンスグループから除名されたか、わかってる?私のキャリアはこれで終わりよ!

和真、私は一体何を間違えたっていうのよ?」

私は元々、おっとりした性格だった。はっきり言えば、都合よく扱われやすいタイプ。

和真は何度も私の耳たぶを指でつまみながら、甘い声でこう言っていた。

「千夏、お前はこんなに優しくて、もし俺がいなかったらどうするんだ?」

私は一度も和真が私を捨てるとは思わなかった。

あの頃、両親が罪を着せられ自殺し、私は周囲から疎まれていた。

泥沼のような現実から救い上げてくれたのは和真だった。

彼は私のために家族と喧嘩をし、雨の中で長く膝をついていた姿、今でも覚えている。

私を連れて、辛い過去から離れ、新しい街で一からのスタートを切ってくれた。

あんな惨めで卑屈な私を、和真は決して見捨てなかった。

一番苦しい時期を一緒に乗り越えてきたのに、ようやく楽になった今になって、彼の心は変わってしまった。

「離婚しよう」私は目を閉じて言った。「私に少しだけでも体面を残して」

「……千夏」彼は眉間を揉みながら、少し疲れた様子で言った。「今さら罵られたぐらいで、何をそんなに大げさに」

私は突然目を見開き、信じられない様子で彼を見つめた。

「何て言ったの?」

和真は唇をかみしめて、陰鬱な顔で言った。「お前の両親が自殺したときなんて、全国中が叩いてたじゃん……」

「出ていけ!」私はソファに置いてあったクッションを掴み、狂ったように彼に投げつけた。「出て行け!」

和真は私がこんなにヒステリックになったのを見たことがなかったようで、しばらく呆然とした後、憤然とした様子で立ち去った。

そして、あのチェリーの袋も一緒に持って行った。

「俺の施しなんていらないってことか?いいさ、どこまで意地張れるか見てやるよ」

彼が出て行ってから10分も経たないうちに、奈緒がまた投稿した。

【今日から同棲。この内装、昭和かってレベルでダサいし。ほんと、いかにも男のセンスって感じ】

添付された写真は私の上の階の部屋で、彼女が「ダサい」と言ったその内装は、私が全て手配したものだ。

和真はその投稿にコメントしていた。【確かにダサいな、リフォームした方がいい】

私は痛む目を押さえながら、涙はすでに乾いていた。

部屋を改装するように、人も入れ替えられる。それだけの話。

彼にとって私はもう飽きた古いおもちゃに過ぎなかった。

その後、また迷惑電話がかかってきたので、私はSIMカードを抜き、以前海外公演の時に使っていた番号に差し替えた。

あの時、有名な海外のダンスグループからオファーをもらったことがあった。

でも、和真と離れたくなくて、そのチャンスを断った。

私は不安で手が震えながら当時の連絡先に電話をかけた。「もしもし、ジェイソンさんでしょうか?」

電話の向こうはしばらく沈黙していて、かすかに呼吸音が聞こえなければ、もう切られたのかと思っていた。

なぜ黙っているのだろう?まさか、例の炎上を見たの?

私は必死に携帯を握りしめ、手のひらに汗がにじみ出た。「ジェイソンさん、聞いてください。私は何もしていません。説明したいけど、SNSのアカウントは全部乗っ取られてて、サブ垢で投稿してもすぐ削除されて……私……」

「待ってろ」

その向こうから低くてくぐもった男性の声が響き、どこかで聞いたことがあるようで、でも記憶の中の金髪のジェイソンとは全然違った。

私は驚いて、「ジェイソンさんじゃないんですか?」と聞いた。

「待ってろ」

再びその声が繰り返され、通話はぷつりと切れた。

訳も分からず呆然としていると、すぐに一通のメッセージが届いた。

【今離陸直前だから、電源を切る】

数秒後、再び震えた携帯にはこんなメッセージが表示された。

【帰国したら、迎えに行く】
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