LOGIN「なるほどな。そういうことか」 「うん。中々いいアイディアでしょ?」 「まぁ、そうだな」 「ふふん。もっと褒めてくれてもいいんだよ」 「調子のんな」 アタシが花火を見るために用意したのは、空の上。 つまり、魔法で空を飛んでいるってことだ。いつもは、箒で飛んでいるんだけど、流石に箒に乗ってだと、ゆっくり花火を見ることは出来ないから、代わりに絨毯に乗っている。あの有名な魔法の絨毯みたいな感じだ。 「でもまぁ、確かにこりゃいいな。遮るものもないし、見上げるんじゃなくて、ほぼ同じ目線で見ることが出来るからな」 「気に入った?」 「あぁ」 「なら、良かった」 ほう? 珍しく総司《そうじ》が上機嫌だね。これは本当に気に入ったっぽいね。うんうん。我ながらよくやったって感じだね。 「そういえばさ」 「ん?」 「百合《ゆり》達もお祭りに来てるのかな?」 「あー……多分来てねぇぞ」 「え? そうなの?」 意外だ。百合って結構お祭りとか好きだから、てっきり、高木君と来ているのかと思ってた。 「黒川と翔《かける》はあれだ。今頃、ホテルでお楽しみ中だ」 「え? ホテルって……あの、アダルティの?」 「あぁ。アダルティなホテルだな」 わぁお……。 おいおい、二人ともお盛ん過ぎないかな? 「いや、実はな。今日の午前中に翔ん家でゲームしてたんだが、昼くらいに黒川がいきなり来てさ。何かすっぽんとかマムシが入った、精力料理を翔に食わせて、そのまま出ていったんだよな」 「な、なるほど……。た、確かにそれはもう間違いないね」 「だろ?」 百合ってば、マジでやってんなぁ。流石自分で、ここ掘れワンワンの如き性欲が溢れてくるとかどうとか言ってただけのことはあるね。まさに有言実行だよ。 てか、大丈夫なの? 一応、高木君って病み上がりのはずだよね。最近、百合の魔法具の実験に付き合わされて入院して、退院したばっかりのはずだよね? 「まぁあれだ。翔も何だかんだで、ノリノリだったから、まぁ何とかなるんじゃね? 知らんけど」 「まぁそうだね。何だかんだで、高木君ってタフだしね。何とかなるよね。知らんけど」 うん、まぁ。結局のところは、二人のことだし二人がいいなら別にいいか。どうなっても、知らないけど。
「あー……、うざいだるい疲れた暑い眠い帰りたい……」 夕方の五時だってのに、何でこんなにクソ暑いんだよ。しかも、無駄に人がごった返しているせいで、暑いのとは別に気持ち悪さもある。 ちくしょう……やっぱり来るんじゃなかったぜ。 これも、姫乃《ひめの》を祭りに誘えって言った黒川のせいだ。まじでギルティだ。 「つーか、あの女全然来ねぇし……」 とっくに待ち合わせの時間は過ぎてるぞ。何やってんだよ、あのクソ女が。 「総司《そうじ》〜、お待たせ〜」 「死ね」 「いきなり何!?」 「あ? 時間を守れんやつは、世のため人のため、俺のために死んだ方がいいんだよ」 「いくらなんでも言い過ぎだからね!?」 言い過ぎなことがあるか。時間ってのは、大事なんだよ。タイムイズマネーって言葉があるくらいなんだ。場合によっちゃ、時間は金よりも重いことがあるんだよ。 「ごめんって。準備に色々と手間取ったの。あとで何か奢るから許してよ」 「ちっ。たこ焼きな」 「うん。分かった」 にしても、準備に手間取ったねぇ。確かに今日の姫乃は、いつものだらしない格好ではなくて、浴衣を着ている。まぁ多分、そのせいだろうな。 「それよりも、どうよ?」 「何が?」 「浴衣だよ、浴衣! 見たら分かるでしょ!」 「あぁうん。いいんじゃない? 知らねぇけど」 「いや、適当! めっちゃ棒読みだし!」 「んじゃ、浴衣は綺麗だな」 「何で浴衣に限定してるのかなぁ? 普通に似合ってるとか言えないの!」 ちっ……めんどくせぇやつだな。つーか、大声出してんじゃねぇよ。めっちゃ見られてんだろうが。 こりゃ、さっさと移動した方がよさそうだな。 「もう何でもいいから、早いとこ行くぞ」 「はぁ……もぅ。はいはい、分かりましたよ」 ―――― ―― 「うげぇ……」 「うっわぁ……」 何だこれ? 気持ち悪いくらいに人が居るな、おい。病気かってくらい人口密度高ぇじゃねぇかよ。 姫乃も同じこと思ってるのか、苦虫を噛み潰したような顔している。 まぁこいつも、どちらかというと陰キャよりの人間だしな。本能的に人混みを嫌ってるんだろう。 「どうする? 帰るか?」 「いや帰らないし! てか、そんなこと言わないでよ。本当に帰りた
「にゃあ、ヒメノ。ついに妄想と現実の区別がつかなくにゃったのかにゃ?」 「言い過ぎだよ、モナちゃん。もしかしたら、さっきまで寝てたから、都合のいい夢を見てたって可能性もあるよ」 「にゃるほどにゃ」 「いや、にゃるほどにゃじゃないよ! 夢でも妄想でもなくて現実だから!」 まったく、なんて失礼な使い魔達なんだ。モナはともかく、アヤメちゃんまでこんなことを言い出すなんて。完全にモナの悪い影響を受けてるね。 「え? 姫乃お姉ちゃん、マジで言ってるの?」 「マジだよ。大マジ。マージ・マジ・マジーロだよ」 「まーじまじまじーろ……?」 「ジェネレーションギャップ!」 マッジかぁ……伝わらないのかぁ。いや、うん……まぁそうだよね。何年前のニチアサヒーローだって話だよね……。 って、いやいや。今はそんなことどうでもいいんだった。 「にゃあいいにゃ。一旦信じてやるから、話してみるにゃ」 「ちょっと〜、モナ〜? そろそろアタシ怒るよ? おこだよ、激おこだよ。激おこプンプン丸だよ?」 「激おこプンプン丸って何?」 「うっそぉん! これも通じないのかぁ〜」 なんてこった。これが華の高校生と五歳児の差なのか。正直辛いんだが……。 「さっさと話せにゃ」 「うっさいわ! このクソ猫!」 「やっかましいにゃ! 魔法しか取り柄のないバカ魔女!」 「モナのくせに調子のるなぁー!」 「ヒメノの分際でワガハイに意見するにゃ!」 本当にもう怒った。このクソ猫。今日という今日は絶対に許さないんだから! ここらで一発絞めて、アタシがご主人様だってこと分からせてやるんだから! ―――― ―― 「ごめんって、アヤメちゃん……」 「ごめんにゃ……」 「むぅ〜」 アタシとモナに正座をさせて、リスみたいに頬を膨らませながら、腕を組んで仁王立ちしているアヤメちゃん。私怒ってるんだからねオーラを漂わせている。 ただなぁ……全然怖くないんだよね。むしろちょっと可愛いまである。 「姫乃お姉ちゃん?」 「あ、うん。ごめんって」 「とりあえず、背筋伸ばせよ」 「は、はい……」 やっぱり、可愛くないわ。 まぁ……何でこうなったかと言うと、アタシとモナの喧嘩が原因である。あの後、モナとは取っ組み合
「アヤメ。邪魔するにゃ」 「いらっしゃい。モナちゃん」 ちょうどお昼になったくらいに、モナちゃんがやってきた。やっぱり、姫乃《ひめの》お姉ちゃんの転移魔法は便利だね。 姫乃お姉ちゃんの使い魔である、私とモナちゃんは、何個か姫乃お姉ちゃんの魔法を使うことが出来る。転移魔法もその一つなんだよね。 「今日はどうしたの?」 「お腹空いたにゃ」 「姫乃お姉ちゃんにご飯貰えなかったの?」 「珍しく朝から出かけていて、居ないんだにゃ」 「総司《そうじ》お兄ちゃんは?」 「ソージも同じだにゃ」 「なるほどね」 へぇ、二人して居ないんだ。もしかして、二人でお出かけしてるのかな? ……いや、流石にそれはないか。だってあの二人だもんね。まぁ、色々と事情があるけど、それをなしにしても二人でお出かけはしないね。 「そんな訳で、何か食べさせてにゃ」 「うん、いいよ。ちょうど私もお昼ご飯にしようと思ってたしね」 「ゴチになるにゃ」 と言ってもまぁ、大したものはないんだけどね。お母さん達はお仕事で居ないから、昨日の残りを温めて食べるくらいだ。 「そういえば、アヤメ?」 「ん? どうしたの?」 「ここ最近、ヒメノが妙にご機嫌なんだにゃ。何か知ってないかにゃ?」 「えー? 何だろう? それっていつからなの?」 「確か一週間くらい前からにゃ」 一週間前だと、確か総司お兄ちゃんの試合があった日だよね。ってことは……。 「多分だけど、総司お兄ちゃんの魔法が一つ解けたからじゃないの?」 「んにゃ? ソージの魔法が解けたのかにゃ?」 「え? 聞いてないの?」 「聞いてないにゃ……」 「えぇ……」 嘘でしょ、姫乃お姉ちゃん……。何でそんな大事なことモナちゃんに伝えてないの。あーでも、姫乃お姉ちゃんって、そういうところ適当そうだもんなぁ。 「にゃったく……ヒメノのやつ」 「あはは……苦労してるね」 「本当だにゃ。あいつは昔っからホウレンソウが出来ないんだにゃ。人として大分クズな部類にゃ」 すんごい言われようだなぁ。そこまで言わなくてもいいと思うけど。 でもまぁ、姫乃お姉ちゃんはもうちょっと色々と報告とかしてくれてもいいのは、確かなんだけどさ。 例えば、私のお母さん達を記憶改ざんし
「お疲れ様でした〜! 乾杯〜!」 「「「乾杯〜!!!」」」 近藤先輩の音頭で俺達は乾杯をする。 今日は野球部の打ち上げだ。場所は学生の味方、まんぷく太郎。肉、寿司、カレーなどなどが食べ放題の太っ腹なお店だ。お値段も中々のリーズナブル。金のない学生がする打ち上げにはもってこいの場所だ。 「んじゃ改めて、総司《そうじ》、黒川。今回は協力してくれてありがとうな」 「結局負けちゃいましたけどね」 「それもド派手にねぇ……」 そう。俺らは結局負けた。 姫乃《ひめの》に手を治してもらって、意気揚々とマウンドに行ったはいいものの、これでもかってくらいに、バカスカ打たれた。そりゃもうトラウマになるレベルで。 最終的には、十五対一のコールド負け。完敗ってやつだ。 「ま、仕方ないさ。相手の方が強かったのは事実だしな」 「それもそうっすね」 悔しいか悔しくないかと言われれば、当然悔しい。でも、今から野球部に入って、来年リベンジしてやる! って気持ちは全く起きない。つーか、普通にもう投げたくない。だって、あんなにボコスカ打たれたんだもん。 「それで、今後は野球部どうするんすか?」 「来年に期待だな」 「ですよね」 近藤先輩は引退。助っ人で入った俺は、この間の試合で終わり。現状野球部は、七人しかいない。つまり、秋の大会には当然間に合わない。それに来年入部希望者がいなければ、廃部だってありえる。 「まぁ、その辺はおいおい考えていくさ」 「そうっすか。陰ながら応援してますよ」 「私も」 「ありがとうな。んじゃまぁ、あとは好きなだけ食っていけよ。二人の分は俺の奢りだからよ」 「うっす」 「ゴチになります」 そう言って、近藤先輩は他の部員のところに行った。 「黒川はあっちに行かなくていいのか?」 「別にいいわよ。特に思い入れないし」 「どの口が言ってんだよ……」 つい最近まで、鬼教官やってて部員達を立派な兵士にしてたじゃねぇか。 まぁ……今はその洗脳? が解けて、ごく普通の青少年達に戻ってるけど。 「それにさ、私があっちに行ったら、せっかく近藤先輩に席を二つ取ってもらった意味がなくなるでしょ」 「それもそうだな」 今回、近藤先輩に無理を言って、野球部と俺と黒川だけの席を取って
「で? 何でベンチ裏なんだよ」 「あのねぇ、こっちにも色々あるの」 「色々って何だよ。治すくらい、お前なら一瞬だろ」 「治すのはね。ただ、魔力を抜くのは別なの」 「は?」 あー、こいつ忘れてるわ。ほんとにもうさ、そういうところだよ。 「あのさぁ、前に死にかけた時にアタシはどうやったか忘れたの? 忘れたなら今すぐ思い出して」 「前……? あ、あぁー」 「いや、あーじゃないからね?」 「はいはい。悪かったよ」 本当に悪いと思ってるのかね、この人は? まぁいいけどさ。いや、良くはないかな。 だってあれじゃん。中々すごいシチュエーションだったよね。 半裸のボケナスと下着のアタシ。ベットの上でくっついている。エロいやん。どエロいやん。最早エロスの要素しかなくない? それを普通忘れるかな? いやいや忘れないでしょ。いくらボケナスがアタシのこと嫌いでも、性欲という欲望が体に刻みこんでいてもおかしくないでしょうよ。それともなにか? アタシの体には魅力がないってか? ぶち殺すぞこんちくしょう! 「まじで死ね! ボケカス唐変木!」 「いきなり何だてめぇ!」 「うっさい! ボケナスが悪い!」 「意味わかんねぇんだよ! このクソアマが!」 分かれ! 分かれよ! アタシにとっては大事なことなの! 性欲マシマシでどエロい目で見られるは嫌だけど、お前なんて全く魅力ないぜって、エロスを感じられないのも問題なの! ほどよくエロい目で見ててほしいの! それが女子! 乙女! 女の子なの! 「ったく、もう何でもいいからさっさと治してくれ。いい加減時間もやばいから」 「まぁそうだね」 確かに治療するって言ってから、何だかんだで三十分くらいは経ってる。流石に怒られてもおかしくはないか。 「んじゃ、上を脱げばいいのか?」 「あ、その前に」 「何だよ」 「ギャラの話をしよっか」 「は? ギャラ?」 「そう。大事でしょ?」 「ふざけんなよ。何でお前にギャラを払わなくちゃいけねぇんだよ」 「は? 逆に聞くけど、何でアタシはタダでやってあげなくちゃいけないのさ」 あーあ。アタシって本当に性格悪いなぁ。自分で言ってて嫌になる。 別に治療くらい、ボケナスの為ならいくらでもやってあげる







