Masuk「なぁ、少女」
「少女じゃない。美少女」 「……なぁ、美少女」 「なぁに? お兄ちゃん」 「さっきからずっと、アリの観察して楽しいか?」 「う〜ん。普通?」 土曜日。俺らは保育園のボランティアに来ていた。 やることは、午前中は適当に子供達と遊んで、一緒にお昼ご飯を食べて解散という感じだ。 んで、そんな中俺は、黒髪ロングの美少女ちゃんと三十分ほど、花壇の周りにいるアリの観察をしていた。 「他の子と遊ばなくていいのか? ほら、あの辺とか楽しそうじゃん」 ジャングルジムの前で、黒川が作った魔法具で遊んでいる、ちびっ子達の集団を指さす。 服装を自由に変えられる魔法具を使って、スーパーな戦隊や仮面のライダー、プリティでキュアキュアの魔法少女になりきって、楽しそうに遊んでいる。 「私はあーゆう子供っぽいのは、趣味に合わないの」 「子供のくせに何言ってんだか……」 「お兄ちゃん、うるさい」 「へいへい」 まぁお気に召さないのなら仕方ない。でもいいな、あれ。普通に楽しそうだ。俺も体質がなければ絶対に使って遊んでいたんだけどなぁ。 「んじゃあれは?」 今度は、翔《かける》の方を勧めてみる。翔は活発系のちびっ子達と全力鬼ごっこをしている。あいつ、手加減無用で本気でちびっ子を追っかけて逃げてやがる。大人気ないな、おい。 「疲れるからやだ」 「まぁ確かに」 あれは俺もちょっと嫌だわ。 ちびっ子達も、翔に勝とうとかなり本気になってるし。遊びってより、ガチ感が強いんだよな。 「あれは?」 一応クソアマの方を勧めてみる。 あいつは、魔法で雲を乗れるように固めて、軽く空を飛んで遊んでいる。 つか、あれ大丈夫なのか? 万が一にでも落ちたら大変なことになるぞ。 「私、高いとこ怖いから無理」 「お? 意外と可愛いとこあるんだな」 「うわ、うざぁ」 「傷つくなぁ」 いや、ほんとにまじで。 ちびっ子でも意外とダメージあるなこれ。ほんのちょっと胸が締め付けられちゃったよ。 「それに……」 「ん?」 「あの人、何か嫌だ」 「ほう。ちょっと詳しく聞かせてくれよ」 「う〜ん、なんて言うのかなぁ。滲み出るうざさが気に入らない」 「よく分かってるじゃないか。見る目あるじゃん」 そうなんだよな。あのクソアマ。存在がクソうざいんだよな。 まさか共感してくれる子がいるなんて思わなかったぜ。この子はきっと大物になる。俺が保証するわ。 「お兄ちゃんって、あの人のこと嫌いなの?」 「あぁ嫌いだな。多分、世界で一番」 「ふーん」 って、俺はちびっ子相手に何言ってんだよ……。ここは嘘でもそんなことないよって言うべきだったな。 ほら、みんな仲良くしましょうねぇ〜みたいな、クソ風習があるんだし。 いや、待てよ。そんなクソ風習だからこそ、ここは本当のことを言うのが、出来た大人なのではないだろうか? うん、そうに違いない。つまり俺は間違ってない。よし。 「それじゃ、他の友達と遊んできたらどうだ?」 ほとんどは、翔達と一緒に遊んでいるけど、何人かは、我関せず的な感じの子もちらほらいる。 「……私、友達いないから」 「そっか。なら仕方ないな」 「それだけ?」 「何が?」 「だって。私がこう言うと、大人達は揃って友達作った方がいいって言うんだもん」 あぁなるほどな。 「まぁ確かに友達はいるに越したことはないな。でもまぁ、無理に作るもんじゃない」 「お兄ちゃんも友達いないの?」 「バカにするなよ。ちゃんといるぞ。ほら、あそこの赤髪リーゼントとマッドサイエンティストだ」 「あれ、友達だったんだ」 「あれ言うなよ。一応いいやつらなんだぞ」 「一応なんだ……」 まぁ一応だな。翔は、時間にルーズだし適当だしバカだしリーゼントなんだが、まぁ悪いやつではないからな。黒川は、魔法具が関わらなければ、基本的には常識人だしな。 「むぅ……」 「急にむくれっ面してどした?」 「裏切り者。ずるい」 「何でだよ……」 「だって、ぼっちだと思ってたお兄ちゃんに友達がいたんだもん」 「勝手にぼっちにするなよ。失礼なちびっ子だな」 まぁ確かにね? 友達が多そうな見た目はしてないけどさ。でもよ、ぼっち判定はどうかと思うぜ? 「そのちびっ子ってのやめて」 「んじゃあ……ジャリガール?」 「もっと嫌なんだけど!」 「我儘だなぁ」 「私が悪いの!?」 ジャリガール、いいと思うけどなぁ。ほら、長年旅をしている主人公一味みたいじゃん。 「普通に名前で呼んでよ」 「俺、お前の名前知らんぞ」 「……め」 「ん?」 「アヤメ。千早《ちはや》アヤメ」 「アヤメか。俺は斎藤総司《さいとう そうじ》だ」 「総司ね。分かった」 「呼び捨てかよ」 まぁいいけどさ。 このくらいの子はちょっと生意気なくらいが可愛げがあっていいし。 「じゃあ総司」 「うん?」 「私がともじゃち」 お、噛んだ。 「大丈夫大丈夫〜。まだいけるよ。リベンジリベンジ」 「……友達になっちぇ」 「諦めるな。諦めない心!」 「ちょもだちに……くそが!」 くそが頂きました。ありがとうございます。年相応に可愛かったですよ。もうご馳走様って感じっすわ。 「むぅ〜」 「まぁまぁ。そんなむくれるなって。ほら、落ち着いてもう一回言ってみ?」 「すぅ〜、はぁ〜。よし。総司」 「ん?」 「私が友達になってあげてもいいよ」 「おっと? まさかの上からくる感じ?」 あんだけ噛んでたのに、中々の強メンタルだな。ちょっと尊敬しちゃうよ。 「いいでしょ別に。それにこんな美少女が友達になってあげるって言ってんだよ。泣いて喜ぶところでしょ」 「美少女ねぇ……」 まぁ確かに顔立ちはいいし、数年後には美少女になってるだろうな。でも、今はただの幼女だもんなぁ。 「何よ」 「んにゃ。何でもないよ」 「それで? どうなのさ」 「あぁ。ありがたく友達にならせてもらいますよ。よろしくな、アヤメ」 「うん。よろしくしてあげる、総司」 やれやれ……よろしくしてあげるって、本当に生意気なやっちゃなぁ。まぁいいか。 「じゃあ、友達になった総司に私の秘密教えてあげる」 「秘密?」 「うん。でも、誰にも言わないでね」 「分かったよ」 アヤメはそう言って、口の口角に指をかけ、横にグイッと引っ張り白い歯を見せてきた。歯並びが良くて虫歯一つない綺麗な歯だ。でも、一つ気になったのが、八重歯のところが異様に鋭くて、牙のようになっていること。 「にひひっ。びっくりした?」 「ちょっとな。まさか、吸血鬼だったなんてな」 母さんにこの世には色々な種族の生物がいるって、聞いたことはあったけど、実際に見るのは初めてだ。意外と近くにいるもんなんだな。 「私が他の子達と仲良くしなかった理由、分かってくれた?」 「まぁ何となくはな」 言い方は悪いが、魔女と違って吸血鬼みたいな種族は人外だ。少なからず差別をするやつらはいる。だから、生きづらい思いをしてるらし。 「でもいいのか? 俺に秘密を打ち明けて」 「だって総司も普通じゃないでしょ? 魔力を溜め込んじゃう体質でしょ?」 「気付いていたのか?」 「まぁね。吸血鬼は魔力感知が得意だからね」 「なるほどな」 確か吸血鬼も魔力を操るんだったか。魔女と違って魔法とはまた別のやつらしいけど、俺は詳しく知らない。 「ま、アヤメが何者でも俺は特に気にしないから安心しろよ」 「にひひ。総司ならそう言ってくれると思ってたよ」 「期待に応えられてよかったよ」 「それでね。友達の総司に一つお願いがあるんだよね」 「何だよ?」 「私、お腹空いちゃった」 つまり、俺の血を吸わせろってことか。 「輸血パックとかないのか?」 「あるけど、あれ新鮮さがないし、あんまり美味しくないんだよね」 「ふ〜ん」 新鮮さは分からんでもないけど、血に美味しいとかあるんだ。どう違うかちょっと気になるな。 「魔力持ちの血は美味しいんだよね。だからね、お願い総司」 「分かったよ」 「あ、いいんだ」 「いや、お前から言ってきたんじゃん」 「まぁそうだけどさ。嫌がるかなぁって思って」 まぁ若干怖い気持ちはあるけどな。俺、こう見えて注射苦手なんだよね。 「とにかく、ほら。気が変わらないうちにさっさと吸っちまえ」 「うん。ありがとう」 アヤメは嬉しそうにしながら、俺の腕に牙を立てて、ちゅーちゅーと血を吸っていく。てか、これ今思ったど、どんぐらい吸われるんだろう? 貧血でぶっ倒れたりしないよな? 「うんうん。やっぱり思った通り美味しいよ。総司」 「そりゃよかったよ」 「もうちょい吸うね」 「お好きにどうぞ」 やれやれ。奇妙な友達が出来ちゃったなぁ。「なるほどな。そういうことか」 「うん。中々いいアイディアでしょ?」 「まぁ、そうだな」 「ふふん。もっと褒めてくれてもいいんだよ」 「調子のんな」 アタシが花火を見るために用意したのは、空の上。 つまり、魔法で空を飛んでいるってことだ。いつもは、箒で飛んでいるんだけど、流石に箒に乗ってだと、ゆっくり花火を見ることは出来ないから、代わりに絨毯に乗っている。あの有名な魔法の絨毯みたいな感じだ。 「でもまぁ、確かにこりゃいいな。遮るものもないし、見上げるんじゃなくて、ほぼ同じ目線で見ることが出来るからな」 「気に入った?」 「あぁ」 「なら、良かった」 ほう? 珍しく総司《そうじ》が上機嫌だね。これは本当に気に入ったっぽいね。うんうん。我ながらよくやったって感じだね。 「そういえばさ」 「ん?」 「百合《ゆり》達もお祭りに来てるのかな?」 「あー……多分来てねぇぞ」 「え? そうなの?」 意外だ。百合って結構お祭りとか好きだから、てっきり、高木君と来ているのかと思ってた。 「黒川と翔《かける》はあれだ。今頃、ホテルでお楽しみ中だ」 「え? ホテルって……あの、アダルティの?」 「あぁ。アダルティなホテルだな」 わぁお……。 おいおい、二人ともお盛ん過ぎないかな? 「いや、実はな。今日の午前中に翔ん家でゲームしてたんだが、昼くらいに黒川がいきなり来てさ。何かすっぽんとかマムシが入った、精力料理を翔に食わせて、そのまま出ていったんだよな」 「な、なるほど……。た、確かにそれはもう間違いないね」 「だろ?」 百合ってば、マジでやってんなぁ。流石自分で、ここ掘れワンワンの如き性欲が溢れてくるとかどうとか言ってただけのことはあるね。まさに有言実行だよ。 てか、大丈夫なの? 一応、高木君って病み上がりのはずだよね。最近、百合の魔法具の実験に付き合わされて入院して、退院したばっかりのはずだよね? 「まぁあれだ。翔も何だかんだで、ノリノリだったから、まぁ何とかなるんじゃね? 知らんけど」 「まぁそうだね。何だかんだで、高木君ってタフだしね。何とかなるよね。知らんけど」 うん、まぁ。結局のところは、二人のことだし二人がいいなら別にいいか。どうなっても、知らないけど。
「あー……、うざいだるい疲れた暑い眠い帰りたい……」 夕方の五時だってのに、何でこんなにクソ暑いんだよ。しかも、無駄に人がごった返しているせいで、暑いのとは別に気持ち悪さもある。 ちくしょう……やっぱり来るんじゃなかったぜ。 これも、姫乃《ひめの》を祭りに誘えって言った黒川のせいだ。まじでギルティだ。 「つーか、あの女全然来ねぇし……」 とっくに待ち合わせの時間は過ぎてるぞ。何やってんだよ、あのクソ女が。 「総司《そうじ》〜、お待たせ〜」 「死ね」 「いきなり何!?」 「あ? 時間を守れんやつは、世のため人のため、俺のために死んだ方がいいんだよ」 「いくらなんでも言い過ぎだからね!?」 言い過ぎなことがあるか。時間ってのは、大事なんだよ。タイムイズマネーって言葉があるくらいなんだ。場合によっちゃ、時間は金よりも重いことがあるんだよ。 「ごめんって。準備に色々と手間取ったの。あとで何か奢るから許してよ」 「ちっ。たこ焼きな」 「うん。分かった」 にしても、準備に手間取ったねぇ。確かに今日の姫乃は、いつものだらしない格好ではなくて、浴衣を着ている。まぁ多分、そのせいだろうな。 「それよりも、どうよ?」 「何が?」 「浴衣だよ、浴衣! 見たら分かるでしょ!」 「あぁうん。いいんじゃない? 知らねぇけど」 「いや、適当! めっちゃ棒読みだし!」 「んじゃ、浴衣は綺麗だな」 「何で浴衣に限定してるのかなぁ? 普通に似合ってるとか言えないの!」 ちっ……めんどくせぇやつだな。つーか、大声出してんじゃねぇよ。めっちゃ見られてんだろうが。 こりゃ、さっさと移動した方がよさそうだな。 「もう何でもいいから、早いとこ行くぞ」 「はぁ……もぅ。はいはい、分かりましたよ」 ―――― ―― 「うげぇ……」 「うっわぁ……」 何だこれ? 気持ち悪いくらいに人が居るな、おい。病気かってくらい人口密度高ぇじゃねぇかよ。 姫乃も同じこと思ってるのか、苦虫を噛み潰したような顔している。 まぁこいつも、どちらかというと陰キャよりの人間だしな。本能的に人混みを嫌ってるんだろう。 「どうする? 帰るか?」 「いや帰らないし! てか、そんなこと言わないでよ。本当に帰りた
「にゃあ、ヒメノ。ついに妄想と現実の区別がつかなくにゃったのかにゃ?」 「言い過ぎだよ、モナちゃん。もしかしたら、さっきまで寝てたから、都合のいい夢を見てたって可能性もあるよ」 「にゃるほどにゃ」 「いや、にゃるほどにゃじゃないよ! 夢でも妄想でもなくて現実だから!」 まったく、なんて失礼な使い魔達なんだ。モナはともかく、アヤメちゃんまでこんなことを言い出すなんて。完全にモナの悪い影響を受けてるね。 「え? 姫乃お姉ちゃん、マジで言ってるの?」 「マジだよ。大マジ。マージ・マジ・マジーロだよ」 「まーじまじまじーろ……?」 「ジェネレーションギャップ!」 マッジかぁ……伝わらないのかぁ。いや、うん……まぁそうだよね。何年前のニチアサヒーローだって話だよね……。 って、いやいや。今はそんなことどうでもいいんだった。 「にゃあいいにゃ。一旦信じてやるから、話してみるにゃ」 「ちょっと〜、モナ〜? そろそろアタシ怒るよ? おこだよ、激おこだよ。激おこプンプン丸だよ?」 「激おこプンプン丸って何?」 「うっそぉん! これも通じないのかぁ〜」 なんてこった。これが華の高校生と五歳児の差なのか。正直辛いんだが……。 「さっさと話せにゃ」 「うっさいわ! このクソ猫!」 「やっかましいにゃ! 魔法しか取り柄のないバカ魔女!」 「モナのくせに調子のるなぁー!」 「ヒメノの分際でワガハイに意見するにゃ!」 本当にもう怒った。このクソ猫。今日という今日は絶対に許さないんだから! ここらで一発絞めて、アタシがご主人様だってこと分からせてやるんだから! ―――― ―― 「ごめんって、アヤメちゃん……」 「ごめんにゃ……」 「むぅ〜」 アタシとモナに正座をさせて、リスみたいに頬を膨らませながら、腕を組んで仁王立ちしているアヤメちゃん。私怒ってるんだからねオーラを漂わせている。 ただなぁ……全然怖くないんだよね。むしろちょっと可愛いまである。 「姫乃お姉ちゃん?」 「あ、うん。ごめんって」 「とりあえず、背筋伸ばせよ」 「は、はい……」 やっぱり、可愛くないわ。 まぁ……何でこうなったかと言うと、アタシとモナの喧嘩が原因である。あの後、モナとは取っ組み合
「アヤメ。邪魔するにゃ」 「いらっしゃい。モナちゃん」 ちょうどお昼になったくらいに、モナちゃんがやってきた。やっぱり、姫乃《ひめの》お姉ちゃんの転移魔法は便利だね。 姫乃お姉ちゃんの使い魔である、私とモナちゃんは、何個か姫乃お姉ちゃんの魔法を使うことが出来る。転移魔法もその一つなんだよね。 「今日はどうしたの?」 「お腹空いたにゃ」 「姫乃お姉ちゃんにご飯貰えなかったの?」 「珍しく朝から出かけていて、居ないんだにゃ」 「総司《そうじ》お兄ちゃんは?」 「ソージも同じだにゃ」 「なるほどね」 へぇ、二人して居ないんだ。もしかして、二人でお出かけしてるのかな? ……いや、流石にそれはないか。だってあの二人だもんね。まぁ、色々と事情があるけど、それをなしにしても二人でお出かけはしないね。 「そんな訳で、何か食べさせてにゃ」 「うん、いいよ。ちょうど私もお昼ご飯にしようと思ってたしね」 「ゴチになるにゃ」 と言ってもまぁ、大したものはないんだけどね。お母さん達はお仕事で居ないから、昨日の残りを温めて食べるくらいだ。 「そういえば、アヤメ?」 「ん? どうしたの?」 「ここ最近、ヒメノが妙にご機嫌なんだにゃ。何か知ってないかにゃ?」 「えー? 何だろう? それっていつからなの?」 「確か一週間くらい前からにゃ」 一週間前だと、確か総司お兄ちゃんの試合があった日だよね。ってことは……。 「多分だけど、総司お兄ちゃんの魔法が一つ解けたからじゃないの?」 「んにゃ? ソージの魔法が解けたのかにゃ?」 「え? 聞いてないの?」 「聞いてないにゃ……」 「えぇ……」 嘘でしょ、姫乃お姉ちゃん……。何でそんな大事なことモナちゃんに伝えてないの。あーでも、姫乃お姉ちゃんって、そういうところ適当そうだもんなぁ。 「にゃったく……ヒメノのやつ」 「あはは……苦労してるね」 「本当だにゃ。あいつは昔っからホウレンソウが出来ないんだにゃ。人として大分クズな部類にゃ」 すんごい言われようだなぁ。そこまで言わなくてもいいと思うけど。 でもまぁ、姫乃お姉ちゃんはもうちょっと色々と報告とかしてくれてもいいのは、確かなんだけどさ。 例えば、私のお母さん達を記憶改ざんし
「お疲れ様でした〜! 乾杯〜!」 「「「乾杯〜!!!」」」 近藤先輩の音頭で俺達は乾杯をする。 今日は野球部の打ち上げだ。場所は学生の味方、まんぷく太郎。肉、寿司、カレーなどなどが食べ放題の太っ腹なお店だ。お値段も中々のリーズナブル。金のない学生がする打ち上げにはもってこいの場所だ。 「んじゃ改めて、総司《そうじ》、黒川。今回は協力してくれてありがとうな」 「結局負けちゃいましたけどね」 「それもド派手にねぇ……」 そう。俺らは結局負けた。 姫乃《ひめの》に手を治してもらって、意気揚々とマウンドに行ったはいいものの、これでもかってくらいに、バカスカ打たれた。そりゃもうトラウマになるレベルで。 最終的には、十五対一のコールド負け。完敗ってやつだ。 「ま、仕方ないさ。相手の方が強かったのは事実だしな」 「それもそうっすね」 悔しいか悔しくないかと言われれば、当然悔しい。でも、今から野球部に入って、来年リベンジしてやる! って気持ちは全く起きない。つーか、普通にもう投げたくない。だって、あんなにボコスカ打たれたんだもん。 「それで、今後は野球部どうするんすか?」 「来年に期待だな」 「ですよね」 近藤先輩は引退。助っ人で入った俺は、この間の試合で終わり。現状野球部は、七人しかいない。つまり、秋の大会には当然間に合わない。それに来年入部希望者がいなければ、廃部だってありえる。 「まぁ、その辺はおいおい考えていくさ」 「そうっすか。陰ながら応援してますよ」 「私も」 「ありがとうな。んじゃまぁ、あとは好きなだけ食っていけよ。二人の分は俺の奢りだからよ」 「うっす」 「ゴチになります」 そう言って、近藤先輩は他の部員のところに行った。 「黒川はあっちに行かなくていいのか?」 「別にいいわよ。特に思い入れないし」 「どの口が言ってんだよ……」 つい最近まで、鬼教官やってて部員達を立派な兵士にしてたじゃねぇか。 まぁ……今はその洗脳? が解けて、ごく普通の青少年達に戻ってるけど。 「それにさ、私があっちに行ったら、せっかく近藤先輩に席を二つ取ってもらった意味がなくなるでしょ」 「それもそうだな」 今回、近藤先輩に無理を言って、野球部と俺と黒川だけの席を取って
「で? 何でベンチ裏なんだよ」 「あのねぇ、こっちにも色々あるの」 「色々って何だよ。治すくらい、お前なら一瞬だろ」 「治すのはね。ただ、魔力を抜くのは別なの」 「は?」 あー、こいつ忘れてるわ。ほんとにもうさ、そういうところだよ。 「あのさぁ、前に死にかけた時にアタシはどうやったか忘れたの? 忘れたなら今すぐ思い出して」 「前……? あ、あぁー」 「いや、あーじゃないからね?」 「はいはい。悪かったよ」 本当に悪いと思ってるのかね、この人は? まぁいいけどさ。いや、良くはないかな。 だってあれじゃん。中々すごいシチュエーションだったよね。 半裸のボケナスと下着のアタシ。ベットの上でくっついている。エロいやん。どエロいやん。最早エロスの要素しかなくない? それを普通忘れるかな? いやいや忘れないでしょ。いくらボケナスがアタシのこと嫌いでも、性欲という欲望が体に刻みこんでいてもおかしくないでしょうよ。それともなにか? アタシの体には魅力がないってか? ぶち殺すぞこんちくしょう! 「まじで死ね! ボケカス唐変木!」 「いきなり何だてめぇ!」 「うっさい! ボケナスが悪い!」 「意味わかんねぇんだよ! このクソアマが!」 分かれ! 分かれよ! アタシにとっては大事なことなの! 性欲マシマシでどエロい目で見られるは嫌だけど、お前なんて全く魅力ないぜって、エロスを感じられないのも問題なの! ほどよくエロい目で見ててほしいの! それが女子! 乙女! 女の子なの! 「ったく、もう何でもいいからさっさと治してくれ。いい加減時間もやばいから」 「まぁそうだね」 確かに治療するって言ってから、何だかんだで三十分くらいは経ってる。流石に怒られてもおかしくはないか。 「んじゃ、上を脱げばいいのか?」 「あ、その前に」 「何だよ」 「ギャラの話をしよっか」 「は? ギャラ?」 「そう。大事でしょ?」 「ふざけんなよ。何でお前にギャラを払わなくちゃいけねぇんだよ」 「は? 逆に聞くけど、何でアタシはタダでやってあげなくちゃいけないのさ」 あーあ。アタシって本当に性格悪いなぁ。自分で言ってて嫌になる。 別に治療くらい、ボケナスの為ならいくらでもやってあげる
「んで? どうすんの、姫乃《ひめの》?」 「どうするって何が?」 無駄に長くて色々とあったホームルームごようやく終わって、アタシは箒に百合《ゆり》を乗せて空を飛んで帰っていた。 「いや、決まってるでしょ。保育園のボランティアのこと」 「あー……」 そのことかぁ。 しじみ先生ってば、とんでもない爆弾を投下してくれたもんだよ。 「どうしようね……」 「ま、総司《そうじ》君は、すごく嫌そうにしてたけど」 「そんなの分かってるよ……」 分かってるよ。ボケナスがアタシのことを嫌ってるのは。でもさ、あれは流石に言い過ぎじゃないかな? あの時、ちょっと泣きそうだった
さて、こので一つ問題です。 担任の先生が激怒しています。何故でしょう? 宿題をやってくるのを忘れたから? 授業中うるさかったから? ノンノン。その考えは浅はかですね。間違いです。 正解は、ある一人の男子生徒が先生におばさんと言ったからでした。 我がクラス二年三組の担任の先生、 名前は枕木しじみ。御歳三十四歳と十ヶ月。アラフォーに片足を突っ込んだ、プリプリピチピチの独身ガールだ。 そんな、しじみ先生は毎週恒例の婚活パーティに参加し、お決まりの撃沈をくらいイライラマックスの中、愚かな男子生徒はしじみ先生に、「三十五歳はまだおばさんじゃないよ」と言ってしまいました。実に愚かです
「おはおは〜、姫乃《ひめの》」 「おは〜、百合《ゆり》」 日曜の今日、アタシは友達の百合の家に来ていた。前々から約束していた、百合の手伝いをするためだ。 黒川百合《くろかわ ゆり》。魔法具製作の天才。 黒く艶のある髪のセミロングで、大きな瞳をした童顔の少女。体格はかなり小柄で、百四十センチくらいしかない。ただ、おっぱいだけは大きくて、なんと脅威のFカップ。ぐぬぬ……羨ましい。まぁ要するに、ロリカワ巨乳美少女ってやつだ。おいおい神様、設定盛りすぎじゃないですかね? ちなみにアタシのメガネも、魔法具だったりする。効果は、付けた人の視力に自動で度を合わせてくれる。しかも、乱視や
日曜日。国民の休日というやつだ。つまり、体を休めなくてはならない。肉体的にも精神的にも。 ということで俺は、毎週日曜日の楽しみである、プリティでキュアキュアな朝の教育アニメを見ていた。 うんうん。今週も素晴らしいね。来週も非常に楽しみである。 「ちっ……翔《かける》から電話かよ……」 こんな朝っぱらから何の用だよ。今からスーパーヒーロータイムなんだから邪魔するなってのに。毎週訪れる世界の危機なんだよ。 「うるせぇぞ。切るからな」 『いや、要件くらいは聞けよ』 「CMが終わるまでに話せ」 『お前ってやつは……。まぁいいや、んじゃ要件だけ伝えるぞ。昼に駅前集合な。