LOGIN~ アイラ ~
目の前で彼があっけらかんと服を脱ぎ始めたことに、私はその場に金縛りになり、恥ずかしさで頬を真っ赤に染めた。 彼の眼光が妖しく陰る。 「二度言わせるな、妻よ」 自分のマヌケさにハッと気づいた私は、火の出そうな顔をうつむかせ、重い足取りでバスルームへと逃げ込んだ。 もう、なんてお調子者で間抜けなの、私! 蛇口をひねり、バスタブにお湯を溜める作業に没頭しながら、沸き上がる羞恥心をなんとか消し去ろうと必死になった。 タイル張りの室内に水音が虚しく響き渡るが、それ以上に自分の心臓の鼓動がうるさかった。 バスタブが満たされ、ラックにタオルを丁寧に整え終えると、私は安堵の息を漏らし、すぐに退散しようとした。だが、その足を踏み出すのと同時に、ドアが無造作に開け放たれた。 アリスティアが何のためらいもなく足を踏み入れてくる。その高い体躯が部屋を一瞬で支配した。彼はベルトを外し始め、その所作にはどこか無頓着で、それでいて不敵な余裕すら漂っていた。 私は目を見開いた。 「ま、待って——!」 彼は私の制止など意にも介さず、口元に薄い愉悦の笑みを浮かべながら、いとも簡単にスラックスを引き下ろした。 私は凍りついた。顔が一気に火照っていく。視線を彼の全身から逸らそうとあがき、天井や壁へ泳がせたが、時すでに遅し——目にしてはならない光景が、すでに脳裏に焼き付いてしまっていた。 「あなた……いきなりそんな——」 言葉がしどろもどろになり、私は両手で必死に目を覆った。 アリスティアは、まるでそれが世界で最も自然な行為であるかのようにバスタブへ足を浸しながら、悪戯っぽく口角を上げた。 「どうした、妻よ?男の裸を見るのは初めてか?」 冷徹そのものの声だったが、それでも私の喉を痛いほど締め付け、全身を屈辱と羞恥の炎で焼き尽くすには充分すぎた。 彼がさらに何かを言い出す前に、私は踵を返して部屋を飛び出し、背後で勢いよくドアを叩きつけた。 頬は燃えるように熱く、心臓は胸を突き破らんばかりに乱打していた。 ああ、神様! ……言っておくけれど、男の裸を見るのが初めてというわけじゃないのよ?私だって医師だもの。あらゆる患者の身体を見てきたし、傷の手当も、何十件もの手術だってこなしてきた。 でも……これは違う。ただの皮膚でも、手術台の上の患者でもない。相手はアリスティア・モンゴメリーなのだ。 そして何より……これはあまりにもプライベートすぎる。 その後の夜の記憶は、ただの白い靄(モヤ)の中だった——以前倒れ込んだソファに体を預けた瞬間、私は深い眠りへと落ちていた。 同じ部屋にアリスティアがいることなど気にする余裕もないほど、私の体力は根底まで尽き果てていたのだ。 翌朝、背の高い窓から差し込む柔らかく温かな光によって、私は目を覚ました。 欠伸をしながらゆっくりと体を動かし、目をこする。その時初めて、身体を包む柔らかいマットレスの感触に気づいた。 ——パチッと目が開いた。 私は絶句した。ここは……アリスティアのベッドの上? 待って。私、どうやってここに来たの?確かにソファで寝ていたはずなのに! 『私が寝ている間に、彼が何か怪しい真似を……?』という恐ろしい考えが一瞬頭をよぎった。私はすぐさま自分の衣服や身体を確認したが、何の異変もないことに胸を撫で下ろし、安堵の息を漏らした。 それでも、彼がこのベッドを私に使わせたという事実だけで、動悸が収まらなかった。呆れるほど巨大なベッドとはいえ、彼と同じ空間を共有したという事実は、まったく別の意味を持っていた。 幸いなことに、すでに彼の姿はなかった。もし居合わせたりしていたら、私は恥ずかしさのあまり本当に死んでいたかもしれない。昨夜の彼の姿が、未だに焼き付いて離れないのだから。 思い出すだけで、頬が勝手に熱くなっていく。 私は自分を心の中で叱りつけ、ベッドを降りてバスルームへと向かった。 だが、ドアに手をかけようとしたまさにその時、扉が突如として内側から開き、私の額が固い何かに激突した。 見上げると——私はその場で硬直した。 彼がそこにいた。ほんの数センチの距離で。鋭く冷たい瞳が、私を射抜いている。 濡れた髪は無造作に乱れ、水滴が彼の露わな胸元で光を反射しながら、引き締まった腹筋のラインを伝って滑り落ちていた。 心臓が一瞬、完全に停止した。生唾を呑み込む。 ——なんてこと。格好良すぎるでしょう……! まさに歩く彫像。生きる誘惑そのもの。完璧に削り出された彼の身体のどこを切り取っても「罪深さ」に満ちており、そして彼自身もそれを完全に自覚しているようだった。 彼は私の呆然とした視線に気づくと、冷たくからかうような一瞥を投げてきた。 「幽霊でも見たような顔だな」 何事もなかったかのように言い放つ。 私は慌てて視線を逸らし、絨毯のゴミでも探すかのように床の一点を見つめるフリをした。 彼はそれ以上何も言わず、これが日常の風景であるかのように堂々とウォークインクローゼットへと消えていった。 私は稲妻のような速さでバスルームへ駆け込み、鍵をかけた。激しい鼓動で胸が張り裂けそうだ。 鏡に映った自分の顔を見る。頭のてっぺんから足の先まで、熟しきったトマトのように真っ赤だった。 ああ、もう!人生で一番気まずい瞬間だわ! 『しっかりしなさい、アイラ。彼を自分が執刀した患者の一人だと思えばいいのよ』 私は自分に必死で破廉恥な言い聞かせをした。 そうよ、その通り。恥ずかしがる必要なんてない。これは医療現場でもよくある、ごく日常的な光景なのだから。 羞恥心を力づくで脇へ押しやり、手早くシャワーを浴びて気持ちを落ち着かせようと努めた。 着替えを済ませ、頭にタオルを巻いたバスローブ姿で外へ出た瞬間——私は再び足をとめた。 アリスティアが、まだベッドの縁に腰掛けていたのだ。 シャワー上がりの半裸の男の姿はどこへやら、そこには寸分の狂いもなく仕立てられた高級スーツに身を包んだ、冷徹で気高い男がいた。世界をひれ伏せさせる、冷酷なCEOそのものの姿が。 彼は手首の高級腕時計の位置を滑らかに整えると、ようやくこちらに視線を向けた。 「階下で朝食を待つ」 低く冷たい、命令口調の声が響く。 「病院まで送ってやる」 それだけを告げると、彼は私の脇を通り抜けて部屋を出て行った。残されたのは、彼が纏う香水の残り香だけだった。 屋敷を出た時、これでようやく息ができると思った。だが、事態は私の甘い予想通りには進まなかった。 同じ車内に揺られることが、これほどのストレスになるとは思いもしなかった。 アリスティアは後部座席で私の隣に座り、足を組みながらスマホの画面をだるそうにスクロールしていた。運転席には専属補佐官のエヴァンが座り、無言でプロフェッショナルな運転を続けている。 車内の空気はといえば——息が詰まるほど重く、圧迫感に満ちていた。 会話は一切ない。 私は窓の外を見つめながら、頭の中で何度も再生されそうになるあの滑稽で罪深い光景——彼の全裸、あの冷ややかな笑み、そしてあの濡れたセクシーな声——を必死で打ち消そうとした。 ダメ、ダメ。二度と考えちゃダメ! 病院のゲートが近づいてくると、私は意を決して彼の方を振り返った。 「あの……ここで降ろしてください」 路肩を指さしながら、ゆっくりと言った。 「ここからは歩いて行きますから」 アリスティアの眉が微かにひそめられ、彼がスマホを耳元から下ろした。 「なぜだ?」 重く冷たい声が車内に響く。 私は髪を耳の後ろへかけ、彼と目を合わせないようにしながら、極めて自然を装って理由を添えた。 「こういう車から私が降りてくるところを見られたら……余計な噂や追及を生むことになりますから」 彼の愛車はあまりにも規格外に豪華で、目立ちすぎた。一目見れば、誰もがそれがアリスティアの所有物だと察するだろう——世界中でこの最高級ブランドのカスタム仕様を乗り回している人間など、彼一人しかいないのだから。 朝一番から病院内でゴシップの渦中に放り込まれるなんて御免だった。恐怖でしかない。 彼はしばしの間、私をじっと見つめた。その冷ややかな視線に耐えかねて、私が身を縮こまらせそうになったその時。 「車を止めろ」 彼が静かに命じた。 神様、感謝します!同意してくれた! 安堵し、ドアノブに手を伸ばそうとしたその瞬間、彼の低い声が私の動きを凍りつかせた。 「何か忘れていないか?」 私は瞬きをし、予期せぬ言葉にゆっくりと振り返った。「え?」 彼の瞳が、妖しく光った。 私が状況を理解する間もなく、彼は顔を近づけてきた——彼の完璧で恐ろしいほどの美貌が、目の前に迫る。 最初に私を襲ったのは、彼の香水の香りだった。鋭く、洗練され、そしてあまりにも官能的な匂い。 完全にパニックに陥った。目の前の至近距離にある美貌と、自分を釘付けにする鋭いグレーの瞳のせいで、私の脳の回路は一瞬でショートした。極度の緊張から、手のひらにじっとりと汗が滲む。 ほんの数秒の永遠のような沈黙の後、彼はようやく身を引いた。そこで初めて、私は止めていた息を吐き出すことができた。はぁ……! 「携帯だ」 彼は私の方を見もせず、手元にあった私のスマートフォンを差し出してきた。 そうだ。どうして忘れていたのだろう? 私はただそれを受け取り、急いで短くお礼を言うと、逃げるように車外へと飛び出した。 背後で、彼はいつものように何一つ乱れることなく、落ち着き払った態度で座っていた。たった今、私の全神経系を完膚なきまでに破壊した男だとは到底思えない平然さで。~ アイラ ~柔らかく温かな朝日が重厚なベルベットのカーテンをすり抜け、私を目覚めさせた。巨大な邸宅が刻む、聞き慣れない規則正しい低音の響きに耳を澄ませながら、私はしばらくの間、ベッドの上で微動だにせずに横たわっていた。ゆっくりと目を開け、凝り固まった手足を伸ばした時、昨夜は驚くほどぐっすりと眠れていたことに気づいて小さな衝撃を受けた。そして現実が押し寄せてくると同時に、急激な熱が私の頬を赤らめさせた。最後に覚えているのは、車のエンジンの低い唸り声、窓の外でぼやけていく夜のニューヨークのスカイライン、そして病院からの帰路で私を襲った圧倒的な疲労感だった。私はアリスティアの隣で眠りこけてしまったのだ。まさか、ここまでずっと彼が私を抱き運んでくれたの……?頬が勝手に熱を帯びる。あの冷酷な男が私をその胸に抱き締めている姿の妄想が頭をよぎり、心臓が奇妙で不規則な高鳴りを見せた。私はその奇妙な思考を振り払うように、急に上体を起こした。彼のそばにいるたびに、こんな風に妙に無防備で乱れた反応をしていては困る。これは取引なのだ。冷淡な契約。それ以上でも以下でもない。キングサイズのベッドの反対側を向くと、そこはもぬけの殻だった。マットレスに残るわずかな凹みと、高級コロンの爽やかな残り香が、彼が確かにそこで眠っていたことを証明していたが、それにしてもこんな朝早くから、彼はすでに起き出しているらしかった。ほっと胸を撫で下ろす自分がいる一方で、胸の奥にどこか奇妙で説明のつかない虚しさが広がるのを感じた。『だから何よ?』と私は心の中で自分を叱りつけた。『彼がどこに行こうと、私の知ったことじゃないわ』鋭く息を吐き出すと、病院のスケジュールを確認しようとナイトテーブルの上のスマートフォンに手を伸ばした。だがその時、すぐ隣に置かれていた重厚なクリーム色の便箋に視線が釘付けになった。優美で幾何学的な端正さで折り畳まれたその紙の表には、力強く正確な筆跡で私の名前が書かれており、一目でそれが誰のものか分かった。注意深く指先でそれを摘み上げ、広げる。「3日間の出張で国外に出る。 ――アリスティア」書かれていたのはそれだけだった。挨拶も、説明も、別れの言葉もない。いかにもアリスティアらしい、事務的で冷徹なスタイルだった。3日間。丸3日もの間、あの威圧的な黒い影に怯えることなく、この
~ アリスティア ~帰りの車中、彼女は私の肩にもたれかかるようにして眠っていた。その頭の重みが心地よく、規則正しい寝息を聞いていると、なぜか胸の奥がざわついた。こんなことは初めてだった——理由もなく鼓動が早鐘を打ち、胸が締め付けられる。まるで、恋を知ったばかりの少年のように。彼女と出会い、目覚めたその日から、私の中にはいくつもの疑問があった。自分自身についての疑問。なぜ、自分が「変わってしまった」のかについての。女性とこんなに近くで接したことがないわけではない。だが、戸惑う彼女の姿を見るたびに、私はそこに妙な楽しさを覚えていた。頬を赤らめ、声を微かに震わせ、恥ずかしさを隠しきれずにいるその様子は——本来なら、私の神経を逆撫でするはずのものだった。だが、そうはならなかった。むしろ引き寄せられた。彼女の無垢さは、あまりにも無防備で、どうしようもなく心を奪われた。気づけば私は、彼女がより楽に眠れるよう、そっと自分の膝の上へと頭を移動させていた。車の中でこうして眠りこけてしまうほど、彼女は疲労困憊していたに違いなかった。彼女はいつも、これほどまでに懸命に働いているのだろうか?飾り気のない、それでいて美しいその顔立ちをじっと見つめながら、私は思わず頬にかかった一筋の髪を耳へとかけてやった。彼女の寝顔はあまりにも穏やかで——どこか神々しいほどだった。だが、彼女から伝わってくる温もりが、私たちの間の空間を狭め、予期していなかったほどに親密なものに感じさせた。ふと、リアナのことを思い出した。5年という歳月をかけて築き上げた彼女との関係を。甘美だった——確かに、あの頃はそれなりに。私はすべてを捧げたが、彼女は最終的に「自分自身」を選んだ。あそこまで利己的だとは思っていなかった。今でもかすかに、けれど生々しくあの痛みが蘇る。——もっとも、最初から本当に彼女を愛していなかったのかもしれないと気づくまでは。古い記憶にしがみつき、自分は彼女を愛しているのだと無理やり思い込ませていただけなのだと。そして、私を最も傷つけたのは、恋心を砕かれたことではなく、私のプライドだった。愛とは……愚かなものだ。二度と足を踏み入れまいと誓った弱さに他ならない。なのに今、アイラを見つめていると、それとは全く違う感情が湧き上がってくる——言葉で説明のつかない何かが。彼女と過ご
~ アイラ ~「でさ……」ライリーは肩にバッグを引っ掛けながら、すべてを察したようなニヤニヤ笑いを浮かべて切り出した。「誕生日の夜は何処に行くの?お酒?ディナー?カラオケ?まさか、おばあちゃんみたいにまっすぐ帰って寝るなんて言わないでよね!」ちょうどシフトが終わったところだった。時刻はすでに夜の6時半——いつものように体は疲れ果てていたが、ライリーは相変わらず有り余るエネルギーを発散させていた。私は苦笑いを漏らす。「誕生日にこだわりがないのは知ってるでしょ」「だからこそ出掛けるのよ!今日はあなたのための日なんだから、アイラ。いつも仕事ばかりじゃない。たまには自分を甘やかしてあげてよ——もう25歳でしょ、まったく!」彼女はわざとらしく目を白黒させた。その言葉が胸の奥の古い傷に触れ、私の笑みがわずかに歪んだ。家族のほとんどが誕生日を何とも思っていなかった頃から、私にとってこの日は大した意味を持たなかった。唯一、おばあ様だけが小さなケーキを焼いてお祝いしてくれた——二人きりのささやかなものだったとしても。この日はいつも、冷ややかな空気と距離感、そして冷たさを運んできた。お祝いをすること自体が、自分が持っていないものをまざまざと思い出させるだけだったのだ。「ライリー……」バッグのストラップを持ち上げながら、私は小さく息を吐いた。「今日はそんな気分じゃないの。また今度ね」彼女は眉をひそめ、何か言い返そうとしたその時、私のスマートフォンが震えた。画面を一瞥した瞬間、私の動きがピタリと止まった。おばあ様だ。電話に出ると、唇に温かな笑みが自然と広がった。「もしもし、おばあ様」「お誕生日おめでとう、愛しい人」優しい声が耳朶を打つ。それだけの短い言葉なのに、心臓がふんわりと温かなものに包み込まれるようだった。急に喉の奥が詰まり、私はそれを飲み込んだ。「ありがとう、おばあ様。すぐ会いに行くわね。サプライズがあるの」おばあ様は軽やかに、嬉しそうに笑った。「まあ、楽しみにしてるわ」いくつかの言葉を交わしてから電話を切った。すぐにおばあ様へメッセージを送り、時間を必ず作ると約束する。スマホをポケットにしまい、ライリーとともに病院の出口へと向かいながら、私たちは他愛のないお喋りを続けた。だが次の瞬間、私はその場で足をとめ、大きく目を見開いた。病院の正面入口のす
~ アリスティア ~モンゴメリー・タワーの最上階にある役員会議室は、プロジェクターの低音と微かに書類が擦れる音を除いて、静寂に包まれていた。ガラス張りの壁の向こうには摩天楼のパノラマ——私が全権を握り、支配する鋼鉄とガラスの帝国が広がっている。私は片腕を肘掛けに置き、もう片方の指先でトントンと軽やかにテーブルを叩きながら、ゆったりと背もたれに体を預けた。「始めろ」短く命じる。私の向かいで、モンゴメリー・グループが誇る優秀なチーフデザイナー、ララ・クラインが立ち上がった。仕立ての良い黒のドレスに身を包んだ彼女は、無駄のない洗練された佇まいでその場の空気を統率していた。彼女こそが、この緊急会議を招集した張本人だ。モンゴメリー・グループが近々、傘下の最高級ラグジュアリーブランド『メゾン・ド・ヴィーヴル』の新作サマーコレクションをお披露目する大型ファッションショーを開催するからである。「皆様ご存じの通り」彼女はドイツ語訛りの混ざった鋭い口調で切り出した。「メゾン・ド・ヴィーヴルは2ヶ月後、サマーコレクションを発表いたします。開催地はここニューヨーク、ファッションウィーク期間中です。私たちはシーズン全体のトレンドを決定づける意気込みで臨んでおります」ララがリモコンをクリックすると、大型スライドにデッサンが映し出された——洗練されたシルエット、上質なファブリック、そしてミニマルなラインと対比をなす大胆な色彩。「今年のコレクションのテーマは『L’Été Éternel(永遠の夏)』です」とララは続けた。「溢れる生命感とラグジュアリーを表現しつつも、時代を超越したタイムレスなデザインを目指します。エネルギッシュでありながら、シーズンが過ぎても色褪せないエレガンスを兼ね備えた作品群です」彼女の視線が自信に満ち溢れた面持ちで室内を巡る。「これを実現すべく、クリエイティブチームを拡充いたしました。独自の感性と確かな実績を買われ、厳選された新進気鋭のデザイナーたちが新たに加わっています。彼らの力が合わさることで、メゾン・ド・ヴィーヴルは今後もオートクチュールの頂点に立ち続けることをお約束いたします」私は両手を組み、感情を一切表に出さずに言い放った。「続けろ」ミラノ、パリ、ニューヨークから呼び寄せられた著名なデザイナーたちが、次々と紹介されていった。スクリーンには
~ アイラ ~私は動きを止め、抱えていた毛布を握りしめた。視線を恐る恐るベッドへと向けると、彼はすでにシーツの中に潜り込み、片腕を頭の後ろに回してくつろいでいた。彼はいま……私をベッドに誘ったの?アリスティアが、私と同じベッドで寝ようとしている?これもまた、これまで私が彼から引き出してきた数々の「予期せぬ変化」の一つだった。ニューヨーク市を牛耳る、あの強大で絶大な知名度を誇る最高経営責任者(CEO)と同じベッドで寝ることになるなんて、一体誰が想像しただろう!?多くの女性にとって、それはまさに夢のようなシチュエーションかもしれない。けれど私にとっては、恐ろしい悪夢以外の何物でもなかった。彼の声のトーンはどこまでも威厳に満ちていたが、私の耳にはあまりにも気まずく響いたのだ。私は一歩も動けなかった。数千年間も氷漬けにされたかのように、全身が固まっていた。「いつまでそこに立ち尽くしているつもりだ?」私を捉えたまま、彼の低い声が響く。「私……あの……そ、ソファで寝ますから」手に持った毛布を落ち着きなく弄りながら、私は狼狽えて辞退した。何と言えばいいのか分からなかった!それに、この溢れ出る緊張感を押し殺すことなんて、到底できそうになかった。彼は不機嫌そうに眉をひそめた。明らかに忍耐が限界に達しつつある。「一晩中そこに立ち尽くすつもりか?」私は恥ずかしさで頬を焼きながら視線を逸らした。けれど、返すべき言葉が出てこない。「安心しろ」彼はだるそうに言葉を紡ぎ、衣服に包まれた私の体を上から下まで退屈そうになぞった。「修道女のような格好をしているな。これなら誘惑に負けずに生き延びられそうだ」胸の中で、怒りと恥ずかしさが複雑に絡み合う。だが正直なところ、彼の提案に惹かれている自分もいた。ベッドの心地よさは、ソファの比ではなかったからだ。彼の冷たく、揺るぎない眼光に射抜かれ、私はついに屈した。その視線だけで、「拒否」という選択肢が存在しないことを物語っていた。私は警戒しながら、不承不承足を進めてベッドの端に腰掛けた。彼はすでにスマホの画面に没頭しており、それ以上何も口にしなかった。その沈黙に乗じて、私は静かに掛け布団を持ち上げ、彼から物理的にできる限り離れた位置へと潜り込んだ。このベッドは呆れるほど広かった。5つの枕と、贅沢すぎるほど広い空間が二人を隔てて
~ アイラ ~電話の向こうで、わずかな沈黙があった。それから——低く、深く、気負いのない自信に満ちた声が響き渡り、私の心臓は許可もなく跳ね上がった。「勤務は終わったか?」息が詰まる。相手が偽りの夫だと、分かっていたはずなのに。「ア……アリスティア?」思考が追いつくよりも先に、どもりながら名前を呼ぶ。信じてほしい、彼の名前を口にすることは、どんな大手術を執刀するよりも緊張した。「どうやって——私の番号なんてどこで手に入れたの?」とっさにそう問い返す。「知る必要があることは、すべて把握しているまでだ」彼は私の質問など取るに足りないと言わんばかりに、滑らかに言い捨てる。「外で待っている」心臓が喉まで飛び上がりそうになる。「ちょっと——」返事をする間もなく、電話はプツリと切られた。彼は電話を切ったのだ。私は信じられない思いでスマートフォンを見つめ、激しく脈打つ胸を押さえた。なぜ彼がここに?おばあ様がすでに私専用の車を手配してくれていたはずなのに。思考を振り払い、私は荷物をまとめて執務室を出た。ちょうど隣の部屋からエリス先生も姿を現す。長いシフトのせいで彼の髪はわずかに乱れていたが、私を見つめるその表情には柔らかな光が宿っていた。ライリーがエリス先生の私に対する態度をよく誤解するのは、まさにこれが理由だった。普段、彼は厳格で冷徹に見える。だが、私たちがすれ違う時、彼はいつも例外的な優しさを見せてくれた。私だってもちろん変な意味で捉えてはいない——一緒に働く機会が多いのだから、他の同僚より親しいのは自然なことだ。先輩として深く尊敬している。だが、一部の同僚たちは悪意ある憶測を囁きたがるものだ。「お疲れ様、ベネット先生」いつものように丁寧でありながら、どこか静かな温もりのこもった声。「はい」私は小さく微笑んで返す。「ようやく解放されました」彼の視線が、必要以上に長く私に留まった気がしたが、当時の私は気づく余裕すらなかった。頭の中は、階下で待ち構えているあの息の詰まるような人物のことで一杯だったのだ。丁寧にお辞儀をして彼の前を通り過ぎ、私は足早に歩を進めた。病院の入口に、アリスティアの車がすぐに目に入った。胃の底がズシリと重くなる。患者、看護師、研修医——多くの人々が慌ただしく行き交う場所だ。何人かのスタッフが、その車に気づいてヒソヒソと







