FAZER LOGIN~ アリスティア ~
リアナ。 6年間、彼女のことを思い出して胸に浮かんだのは憎しみだけだった。そして今、彼女は何事もなかったかのように私の領域へ足を踏み入れてきた——かつて私に向けられた凶器そのものの高慢さを瞳に宿し、顎を上げて。 顔の輪郭のすべてが記憶に深く刻み込まれた通りだったが、その姿を目にしても、私の心には何も芽生えなかった。痛みも、未練も、憎しみすらも。そこにあったのは、完全なる静寂だけだ。 思い出されるのは、彼女が私を投げ捨てた時のことだ。愛など遅れて払われる借金に過ぎないと言わんばかりに、嘲笑を浮かべて私を無一文へ突き落とした。怒りで夜も眠れず、彼女が残した傷の痛みを紛らわせるために野心だけを頼りに生き抜いた夜もあった。だが、今目の前で洗練されたエレガンスを装い佇む彼女を見つめながら、私は悟った。傷痕は疾(と)うの昔に塞がっていたのだと。冷淡さ——今の彼女が私から引き出せるのは、ただそれだけだった。 デスクから一メートルほどの場所で立ち止まった彼女は、かつての虚飾に満ちた眼光で私を見つめた。彼女が私を棄てたあの日、私は自分が彼女の偽りに騙されていたことを知ったのだ。 「アリスティア……」 滑らかに私の名を呼ぶ。 その声はわずかに震えており、私に対する影響力を確かめるかのようだった。かつての私なら、その声ひとつで血を流しただろう。だが今の私にとって、それはただの空調の音と変わりなかった。 私の視線は、ビジネスの宿敵に向けるのとまったく同じ無機質な冷たさで、彼女の上をすべった。彼女は自分が破滅させた男の「面影」を探しに来たのだろう。だが、彼女が見つけたのは、彼女が残した灰の中から巨大な帝国を築き上げた男だった。 私は椅子の背もたれに体を預け、彼女の存在など最初から意に介していないかのように、ゆっくりと回転させた。 彼女の唇が、かすかな笑みを形作る。 「久しぶりね」 「そうか?」 私の声は氷のように冷たく響いた。「気づかなかったな」 彼女の笑みが引きつった——ごくわずかだったが、その完璧な揺るぎなさに亀裂が入ったのを見逃さなかった。彼女は私からの怒り、あるいは後悔を期待していたのかもしれない。自分が今でも特別な存在であると証明する何かを。 デザイナーズバッグを握りしめる彼女の手が、固く強張るのが見えた。 「私……謝りたくて」 彼女は私の目をまっすぐに見つめ、切実な声を漏らした。 その言葉に、私は即座に背筋を伸ばした。表情はさらに冷たく冷徹なものへと変わる。 正気か?6年も経ってから戻ってきたと思えば、ただ謝罪するためだと? 「ベネットさん。私の執務室が扱うのは十億ドル規模のプロジェクトだけだ。君の謝罪など、一文の価値もない」 冷たく突き放す。 彼女の瞳が陰った。己の思い通りに行かない時、昔から見せていた表情だ。 「……変わったわね」彼女は瞳を潤ませ、小さく囁いた。 「いいや」私は再び背もたれに寄りかかり、淡々と言い放った。「無駄な時間を使うのをやめただけだ」 彼女は私の瞳を覗き込み、かつてそこにあった温もりを必死で探そうとしていた。 「本当に何も感じないの?私たちがあれほど重ねてきた時間の後で——」 私の忍耐は、完全に限界を迎えた。よくも私の前でその過去を口にできたものだ。私はすでにそれを地の底深くへ埋め戻し、二度と掘り返すつもりなどなかった。そんな記憶は、憎しみを燃え上がらせるだけだ——彼女に対してではなく、かつて愚かだった自分自身に対しての。彼女がかつて私のためにしてくれたことへの最後の情けとして、私はもうこの件に触れるつもりはなかった。 「君という章は、君が去った瞬間に完結している。捨てるように閉じたページを、読み返す趣味はない」 周囲の空気すら凍りつかせるほどの冷酷なトーンで告げる。 彼女の顔から一瞬で血の気が引いた。「アリスティア……」 私は手を挙げ、彼女の言葉を遮った。 「出て行け。仕事がある。君の存在は邪魔だ」 どんな刃物よりも鋭い一言。 彼女はただそこに立ち尽くし、震え、打ち砕かれたような顔をしていた。だが、私は二度と彼女に視線を向けることはなかった。目の前の書類に視線を落とし、すでに意識から彼女を排除していた。 重苦しい沈黙が部屋を支配し、やがてハイヒールの足音が遠ざかり、ドアが静かに閉まる音が響いた。 ペンを置き、私は意味もなく書類を見つめた。 言葉で人間を消し去るように、無関心が記憶をも簡単に消し去ってくれればいいものを。 *** ~ アイラ ~ モンゴメリー家の屋敷へ戻った頃には、邸内はしんと静まり返っていた。夜の8時を回っており、私の体は限界を迎えていた。今日だけで4件の手術をこなしたのだ。全身の骨が砕け散りそうなほどの疲労感だった。 エントランスに入ると、執事のシアが出迎えてくれた。 「お帰りなさいませ、奥様」 深々と頭を下げる彼を見て、私は忘れかけていた新しい現実を突きつけられた。これからの3年間、私にとって自分が自分でいられる場所は、あの病院の手術室だけなのだと思い知らされる。 小さく息を吐き出す。 「ただいま戻りました、シア執事。大奥様はもうお休みですか?」 屋敷の主(ぬし)への礼儀として尋ねる。 「はい、本日は早くにお休みになられました。ご夕食はいかがなさいますか?シェフに用意させますが」 私は首を横に振り、かすかな笑みを返した。 「大丈夫です。病院の食堂で済ませましたから。私も早く休もうと思います。ありがとうございます、シア執事」 「承知いたしました、奥様」 彼が再び一礼するのを見届けてから、私はその場を後にした。 4階へ上がり、主寝室(マスターベッドルーム)に近づくにつれ、足取りが重くなる。またあの息が詰まるような夜が始まるのだ。 ノブを静かに回す。扉を開けると、そこには静寂だけが広がっていた。 ——よかった。悪魔はまだ帰っていないらしい。 私は急いでシャワーを浴び、手早く身支度を整えた。洗面所を出ると、昨夜使ったソファへと崩れ込むように横たわった。意識は一瞬で深い眠りへと落ちていった。 しかし——羽毛が触れるようなかすかな感覚が頬をかすめ、私は強制的に引き戻された。 眉をひそめて目を開けた瞬間、心臓が口から飛び出しかけた。 目の前に、アリスティアの顔があったのだ。 恐ろしいほど整った彫りの深い素顔が視界を埋め尽くし、彼の温かい息が私の肌を撫でていた。 パニックに陥った私は、深く考える間もなく彼のみぞおちを全力で突き飛ばした。 不意をつかれた彼は体勢を崩し、鈍い音を立てて絨毯の上へ倒れ込んだ。 私は目を見開いた。これほど体格の良い男が、こんなにも簡単に転がるなんて? 次の瞬間、立ち上がりながら吐き捨てられた彼の低い罵り声が聞こえた。私を睨みつける彼の瞳は、不機嫌そうに細められている。その時初めて、彼の頬がかすかに赤らみ、瞳が揺れ、甘く重いアルコールの匂いが漂っていることに気づいた。 ——酔っている。 そして、酔ったアリスティア・モンゴメリーは、私の知らない「顔」を見せていた。 彼はカリスマ的な笑みを唇に浮かべ、ゆっくりと私へ歩み寄ってきた。その足取りには、酔いなど微塵も感じられない。 「思ったより威勢がいいな、妻よ。夫を床に投げ飛ばすとは……まさか楽しんでいたわけじゃないだろうな?」 喉がカラカラに乾く。彼のこんな姿を見るのは初めてだった。全ニューヨークを震撼させるあの冷酷な男の面影はない。今の彼は、愉悦を孕んだ冷たさを纏い、からかうように私を追い詰めてくる危険な男だった。 「……酔っていらっしゃるのね」 私はじりじりと後退した。 彼は低く、甘く危険な声で笑った。 「病院での重労働でお疲れのようだな?どうだ……頑張ったご褒美でもやろうか?」 一瞬で顔が熱くなる。「お、お休みになってください——」 だが言葉を言い終わる前に、彼は身を乗り出し、酔っ払いとは思えない確かな手つきで私の手首を掴んだ。その瞳には、意地悪で戯れるような光が宿っている。 「休みだと?……君の方が、よっぽど目が冴えているように見えるが」 彼の吐息が胸元にかかり、心臓が激しく脈打つ。ミントとウイスキー、そして白檀(サンダルウッド)の香りが混ざり合った濃密な香りが、脳を痺れさせる。だが、そのからかうようなトーンは、彼の匂い以上に私の神経を乱し、いつもの氷のような態度以上に私の心を激しく揺さぶった。 顔がさらに近づき、鼓動が狂ったように高鳴る——その時、彼が突然身を固くした。 間一髪のところで私から身を引くと、低い声で悪態をついた。 次の瞬間、彼は猛烈な吐き気に襲われ——あろうことか、自分自身の衣服を汚してしまったのだ。 私は絶句した。 もしこれが他人の前であったなら、アリスティア・モンゴメリーという人間の完璧な仮面は、一瞬にして打ち砕かれていただろう。 彼はそのままソファへ崩れ落ち、心底不快そうな表情で口元を拭った。 「……風呂を入れろ」~ アイラ ~柔らかく温かな朝日が重厚なベルベットのカーテンをすり抜け、私を目覚めさせた。巨大な邸宅が刻む、聞き慣れない規則正しい低音の響きに耳を澄ませながら、私はしばらくの間、ベッドの上で微動だにせずに横たわっていた。ゆっくりと目を開け、凝り固まった手足を伸ばした時、昨夜は驚くほどぐっすりと眠れていたことに気づいて小さな衝撃を受けた。そして現実が押し寄せてくると同時に、急激な熱が私の頬を赤らめさせた。最後に覚えているのは、車のエンジンの低い唸り声、窓の外でぼやけていく夜のニューヨークのスカイライン、そして病院からの帰路で私を襲った圧倒的な疲労感だった。私はアリスティアの隣で眠りこけてしまったのだ。まさか、ここまでずっと彼が私を抱き運んでくれたの……?頬が勝手に熱を帯びる。あの冷酷な男が私をその胸に抱き締めている姿の妄想が頭をよぎり、心臓が奇妙で不規則な高鳴りを見せた。私はその奇妙な思考を振り払うように、急に上体を起こした。彼のそばにいるたびに、こんな風に妙に無防備で乱れた反応をしていては困る。これは取引なのだ。冷淡な契約。それ以上でも以下でもない。キングサイズのベッドの反対側を向くと、そこはもぬけの殻だった。マットレスに残るわずかな凹みと、高級コロンの爽やかな残り香が、彼が確かにそこで眠っていたことを証明していたが、それにしてもこんな朝早くから、彼はすでに起き出しているらしかった。ほっと胸を撫で下ろす自分がいる一方で、胸の奥にどこか奇妙で説明のつかない虚しさが広がるのを感じた。『だから何よ?』と私は心の中で自分を叱りつけた。『彼がどこに行こうと、私の知ったことじゃないわ』鋭く息を吐き出すと、病院のスケジュールを確認しようとナイトテーブルの上のスマートフォンに手を伸ばした。だがその時、すぐ隣に置かれていた重厚なクリーム色の便箋に視線が釘付けになった。優美で幾何学的な端正さで折り畳まれたその紙の表には、力強く正確な筆跡で私の名前が書かれており、一目でそれが誰のものか分かった。注意深く指先でそれを摘み上げ、広げる。「3日間の出張で国外に出る。 ――アリスティア」書かれていたのはそれだけだった。挨拶も、説明も、別れの言葉もない。いかにもアリスティアらしい、事務的で冷徹なスタイルだった。3日間。丸3日もの間、あの威圧的な黒い影に怯えることなく、この
~ アリスティア ~帰りの車中、彼女は私の肩にもたれかかるようにして眠っていた。その頭の重みが心地よく、規則正しい寝息を聞いていると、なぜか胸の奥がざわついた。こんなことは初めてだった——理由もなく鼓動が早鐘を打ち、胸が締め付けられる。まるで、恋を知ったばかりの少年のように。彼女と出会い、目覚めたその日から、私の中にはいくつもの疑問があった。自分自身についての疑問。なぜ、自分が「変わってしまった」のかについての。女性とこんなに近くで接したことがないわけではない。だが、戸惑う彼女の姿を見るたびに、私はそこに妙な楽しさを覚えていた。頬を赤らめ、声を微かに震わせ、恥ずかしさを隠しきれずにいるその様子は——本来なら、私の神経を逆撫でするはずのものだった。だが、そうはならなかった。むしろ引き寄せられた。彼女の無垢さは、あまりにも無防備で、どうしようもなく心を奪われた。気づけば私は、彼女がより楽に眠れるよう、そっと自分の膝の上へと頭を移動させていた。車の中でこうして眠りこけてしまうほど、彼女は疲労困憊していたに違いなかった。彼女はいつも、これほどまでに懸命に働いているのだろうか?飾り気のない、それでいて美しいその顔立ちをじっと見つめながら、私は思わず頬にかかった一筋の髪を耳へとかけてやった。彼女の寝顔はあまりにも穏やかで——どこか神々しいほどだった。だが、彼女から伝わってくる温もりが、私たちの間の空間を狭め、予期していなかったほどに親密なものに感じさせた。ふと、リアナのことを思い出した。5年という歳月をかけて築き上げた彼女との関係を。甘美だった——確かに、あの頃はそれなりに。私はすべてを捧げたが、彼女は最終的に「自分自身」を選んだ。あそこまで利己的だとは思っていなかった。今でもかすかに、けれど生々しくあの痛みが蘇る。——もっとも、最初から本当に彼女を愛していなかったのかもしれないと気づくまでは。古い記憶にしがみつき、自分は彼女を愛しているのだと無理やり思い込ませていただけなのだと。そして、私を最も傷つけたのは、恋心を砕かれたことではなく、私のプライドだった。愛とは……愚かなものだ。二度と足を踏み入れまいと誓った弱さに他ならない。なのに今、アイラを見つめていると、それとは全く違う感情が湧き上がってくる——言葉で説明のつかない何かが。彼女と過ご
~ アイラ ~「でさ……」ライリーは肩にバッグを引っ掛けながら、すべてを察したようなニヤニヤ笑いを浮かべて切り出した。「誕生日の夜は何処に行くの?お酒?ディナー?カラオケ?まさか、おばあちゃんみたいにまっすぐ帰って寝るなんて言わないでよね!」ちょうどシフトが終わったところだった。時刻はすでに夜の6時半——いつものように体は疲れ果てていたが、ライリーは相変わらず有り余るエネルギーを発散させていた。私は苦笑いを漏らす。「誕生日にこだわりがないのは知ってるでしょ」「だからこそ出掛けるのよ!今日はあなたのための日なんだから、アイラ。いつも仕事ばかりじゃない。たまには自分を甘やかしてあげてよ——もう25歳でしょ、まったく!」彼女はわざとらしく目を白黒させた。その言葉が胸の奥の古い傷に触れ、私の笑みがわずかに歪んだ。家族のほとんどが誕生日を何とも思っていなかった頃から、私にとってこの日は大した意味を持たなかった。唯一、おばあ様だけが小さなケーキを焼いてお祝いしてくれた——二人きりのささやかなものだったとしても。この日はいつも、冷ややかな空気と距離感、そして冷たさを運んできた。お祝いをすること自体が、自分が持っていないものをまざまざと思い出させるだけだったのだ。「ライリー……」バッグのストラップを持ち上げながら、私は小さく息を吐いた。「今日はそんな気分じゃないの。また今度ね」彼女は眉をひそめ、何か言い返そうとしたその時、私のスマートフォンが震えた。画面を一瞥した瞬間、私の動きがピタリと止まった。おばあ様だ。電話に出ると、唇に温かな笑みが自然と広がった。「もしもし、おばあ様」「お誕生日おめでとう、愛しい人」優しい声が耳朶を打つ。それだけの短い言葉なのに、心臓がふんわりと温かなものに包み込まれるようだった。急に喉の奥が詰まり、私はそれを飲み込んだ。「ありがとう、おばあ様。すぐ会いに行くわね。サプライズがあるの」おばあ様は軽やかに、嬉しそうに笑った。「まあ、楽しみにしてるわ」いくつかの言葉を交わしてから電話を切った。すぐにおばあ様へメッセージを送り、時間を必ず作ると約束する。スマホをポケットにしまい、ライリーとともに病院の出口へと向かいながら、私たちは他愛のないお喋りを続けた。だが次の瞬間、私はその場で足をとめ、大きく目を見開いた。病院の正面入口のす
~ アリスティア ~モンゴメリー・タワーの最上階にある役員会議室は、プロジェクターの低音と微かに書類が擦れる音を除いて、静寂に包まれていた。ガラス張りの壁の向こうには摩天楼のパノラマ——私が全権を握り、支配する鋼鉄とガラスの帝国が広がっている。私は片腕を肘掛けに置き、もう片方の指先でトントンと軽やかにテーブルを叩きながら、ゆったりと背もたれに体を預けた。「始めろ」短く命じる。私の向かいで、モンゴメリー・グループが誇る優秀なチーフデザイナー、ララ・クラインが立ち上がった。仕立ての良い黒のドレスに身を包んだ彼女は、無駄のない洗練された佇まいでその場の空気を統率していた。彼女こそが、この緊急会議を招集した張本人だ。モンゴメリー・グループが近々、傘下の最高級ラグジュアリーブランド『メゾン・ド・ヴィーヴル』の新作サマーコレクションをお披露目する大型ファッションショーを開催するからである。「皆様ご存じの通り」彼女はドイツ語訛りの混ざった鋭い口調で切り出した。「メゾン・ド・ヴィーヴルは2ヶ月後、サマーコレクションを発表いたします。開催地はここニューヨーク、ファッションウィーク期間中です。私たちはシーズン全体のトレンドを決定づける意気込みで臨んでおります」ララがリモコンをクリックすると、大型スライドにデッサンが映し出された——洗練されたシルエット、上質なファブリック、そしてミニマルなラインと対比をなす大胆な色彩。「今年のコレクションのテーマは『L’Été Éternel(永遠の夏)』です」とララは続けた。「溢れる生命感とラグジュアリーを表現しつつも、時代を超越したタイムレスなデザインを目指します。エネルギッシュでありながら、シーズンが過ぎても色褪せないエレガンスを兼ね備えた作品群です」彼女の視線が自信に満ち溢れた面持ちで室内を巡る。「これを実現すべく、クリエイティブチームを拡充いたしました。独自の感性と確かな実績を買われ、厳選された新進気鋭のデザイナーたちが新たに加わっています。彼らの力が合わさることで、メゾン・ド・ヴィーヴルは今後もオートクチュールの頂点に立ち続けることをお約束いたします」私は両手を組み、感情を一切表に出さずに言い放った。「続けろ」ミラノ、パリ、ニューヨークから呼び寄せられた著名なデザイナーたちが、次々と紹介されていった。スクリーンには
~ アイラ ~私は動きを止め、抱えていた毛布を握りしめた。視線を恐る恐るベッドへと向けると、彼はすでにシーツの中に潜り込み、片腕を頭の後ろに回してくつろいでいた。彼はいま……私をベッドに誘ったの?アリスティアが、私と同じベッドで寝ようとしている?これもまた、これまで私が彼から引き出してきた数々の「予期せぬ変化」の一つだった。ニューヨーク市を牛耳る、あの強大で絶大な知名度を誇る最高経営責任者(CEO)と同じベッドで寝ることになるなんて、一体誰が想像しただろう!?多くの女性にとって、それはまさに夢のようなシチュエーションかもしれない。けれど私にとっては、恐ろしい悪夢以外の何物でもなかった。彼の声のトーンはどこまでも威厳に満ちていたが、私の耳にはあまりにも気まずく響いたのだ。私は一歩も動けなかった。数千年間も氷漬けにされたかのように、全身が固まっていた。「いつまでそこに立ち尽くしているつもりだ?」私を捉えたまま、彼の低い声が響く。「私……あの……そ、ソファで寝ますから」手に持った毛布を落ち着きなく弄りながら、私は狼狽えて辞退した。何と言えばいいのか分からなかった!それに、この溢れ出る緊張感を押し殺すことなんて、到底できそうになかった。彼は不機嫌そうに眉をひそめた。明らかに忍耐が限界に達しつつある。「一晩中そこに立ち尽くすつもりか?」私は恥ずかしさで頬を焼きながら視線を逸らした。けれど、返すべき言葉が出てこない。「安心しろ」彼はだるそうに言葉を紡ぎ、衣服に包まれた私の体を上から下まで退屈そうになぞった。「修道女のような格好をしているな。これなら誘惑に負けずに生き延びられそうだ」胸の中で、怒りと恥ずかしさが複雑に絡み合う。だが正直なところ、彼の提案に惹かれている自分もいた。ベッドの心地よさは、ソファの比ではなかったからだ。彼の冷たく、揺るぎない眼光に射抜かれ、私はついに屈した。その視線だけで、「拒否」という選択肢が存在しないことを物語っていた。私は警戒しながら、不承不承足を進めてベッドの端に腰掛けた。彼はすでにスマホの画面に没頭しており、それ以上何も口にしなかった。その沈黙に乗じて、私は静かに掛け布団を持ち上げ、彼から物理的にできる限り離れた位置へと潜り込んだ。このベッドは呆れるほど広かった。5つの枕と、贅沢すぎるほど広い空間が二人を隔てて
~ アイラ ~電話の向こうで、わずかな沈黙があった。それから——低く、深く、気負いのない自信に満ちた声が響き渡り、私の心臓は許可もなく跳ね上がった。「勤務は終わったか?」息が詰まる。相手が偽りの夫だと、分かっていたはずなのに。「ア……アリスティア?」思考が追いつくよりも先に、どもりながら名前を呼ぶ。信じてほしい、彼の名前を口にすることは、どんな大手術を執刀するよりも緊張した。「どうやって——私の番号なんてどこで手に入れたの?」とっさにそう問い返す。「知る必要があることは、すべて把握しているまでだ」彼は私の質問など取るに足りないと言わんばかりに、滑らかに言い捨てる。「外で待っている」心臓が喉まで飛び上がりそうになる。「ちょっと——」返事をする間もなく、電話はプツリと切られた。彼は電話を切ったのだ。私は信じられない思いでスマートフォンを見つめ、激しく脈打つ胸を押さえた。なぜ彼がここに?おばあ様がすでに私専用の車を手配してくれていたはずなのに。思考を振り払い、私は荷物をまとめて執務室を出た。ちょうど隣の部屋からエリス先生も姿を現す。長いシフトのせいで彼の髪はわずかに乱れていたが、私を見つめるその表情には柔らかな光が宿っていた。ライリーがエリス先生の私に対する態度をよく誤解するのは、まさにこれが理由だった。普段、彼は厳格で冷徹に見える。だが、私たちがすれ違う時、彼はいつも例外的な優しさを見せてくれた。私だってもちろん変な意味で捉えてはいない——一緒に働く機会が多いのだから、他の同僚より親しいのは自然なことだ。先輩として深く尊敬している。だが、一部の同僚たちは悪意ある憶測を囁きたがるものだ。「お疲れ様、ベネット先生」いつものように丁寧でありながら、どこか静かな温もりのこもった声。「はい」私は小さく微笑んで返す。「ようやく解放されました」彼の視線が、必要以上に長く私に留まった気がしたが、当時の私は気づく余裕すらなかった。頭の中は、階下で待ち構えているあの息の詰まるような人物のことで一杯だったのだ。丁寧にお辞儀をして彼の前を通り過ぎ、私は足早に歩を進めた。病院の入口に、アリスティアの車がすぐに目に入った。胃の底がズシリと重くなる。患者、看護師、研修医——多くの人々が慌ただしく行き交う場所だ。何人かのスタッフが、その車に気づいてヒソヒソと







