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第10話

Auteur: スネイル
そのときの私は、モルディブの砂浜で日光浴をしている。

ここの景色は本当に美しい。海を目にするのは初めてだったのに、もうすっかり心を奪われている。

子どもを失ってからというもの、私は心がずっと沈んでいた。けれど、ここへ来てから、不思議と胸の中の霧がすっと晴れていくのを感じた。

コーチが準備を整え、これからシュノーケリングに行こうというところで、私のスマホが鳴りやまない。

スマホを取り出して画面を見た瞬間、私はすぐに悟った。智成が人を使って、私の新しい番号を突き止めたのだ。きっと、離婚協議書も目にしたのだろう。そしてもう、私たちの子どもがいないことも、知っているはずだ。

出る気にはなれず、私はそのまま通話を切った。

それでも智成は諦めない。電話はひっきりなしにかかってくる。

コーチが私を促した。

「なんだか急ぎの電話みたいですね。先に出てきちゃってくださいよ、僕らは待ってますから」

私は深く息を吸い込んだ。言うべきことは、はっきり言っておいたほうがいい。そう思って、私は通話ボタンを押した。

「もしもし」

「雪織!やっと電話に出てくれたんだな!」

電話の向こうから、智成の焦った声が聞こえてくる。私は瞬きをひとつする。

何年も一緒にいたのに、こんな声の調子で智成が私に話すのは、初めてかもしれない。

「何の用?」

「今どこにいるんだ?会いたい……迎えに行ってもいいか?」

智成の声は、ほとんど懇願のようだ。

「全部、俺が悪かった。詩乃ばかり庇って、お前を何度も傷つけた。本当にすまなかった。頼む、許してくれないか?」

その言葉を聞いても、私の心は微動だにしない。

「智成、もうあなたに言うことはないわ。言うべきことは、この何年かで全部言い尽くした。離婚の件はすべて俊介に任せてあるから、協議書の内容に異議があるなら彼に言って。私に連絡する必要はない」

「詩乃があなたにしたことは、もう全部知ってる。あいつはお前を傷つけた。だから、俺がもう生き地獄を見せてやった。頼む、俺を許してくれ。もう一度、お前に償わせてくれないか?」

ただ、滑稽だと思った。

「智成、私を傷つけてきたのは、あなただよ。生き地獄を見るべきなのは、あなたの方じゃない?」

「雪織、そんなこと言わないでくれ。俺が悪かった!殴られても罵られても構わない。お前が俺のそばに戻ってきてく
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