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第822話

Auteur: 夜月 アヤメ
侑子が黙ったままでいると、ノラはゆっくりと背筋を伸ばし、コートの襟元を軽く整えた。

彼は焦ることもなく、表情にも特に変化はなかった。怒ることもせず、ただ穏やかに微笑んで言った。

「そうですか。なら、無理には引き止めませんよ。安心してください、もう君を煩わせることはありません。

山田さん、ゆっくり休んでください」

そう言い残し、ノラは踵を返して部屋を出ようとする。

だが、ちょうど扉に手をかけたところで、侑子の声が響いた。

「......待って」

ノラは足を止めた。

「......」

振り向かずに、静かに待つ。

「......あなたの名前は?」

ノラの眉がわずかに動く。

そして、ゆっくりと振り返りながら言った。

「......みっくんとでも呼んでください」

「......みっくん?」

侑子は戸惑う。

どこか奇妙な響きの名前だった。

「それ、本名?」

「山田さん、まだ何か?」

ノラはさらりと話を逸らした。

侑子は緊張し、手のひらに汗が滲んでいるのを感じながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「......私に、藤沢
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