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第2話

작가: 夢見月
大学へ戻り、父の遺品を整理していると、主任教授に呼び出された。

教室へ入ると、詩音が立っていた。彼女は笑いながら私を見る。

「提出された博士論文だけど、橘さんの内容と一致してるの。説明してもらえる?」

すると詩音が先に口を開いた。

「この論文は、生前に白石教授が指導してくださいました。東雲先生も知っています」

その東雲先生には見覚えがあった。娘が恒一の事務所で働いている人だ。

――なるほど。

主任教授はその場で、私の論文を盗作だと決めつけ、私は退学処分になった。

今までの努力が、一瞬で消えた。

でも何も言わなかった。まだその時じゃない。

高く上がったほど、落ちる時は痛い。

家へ戻ると、用意していた離婚協議書をテーブルに置いた。

そこへ恒一が帰ってくる。私の荷物を見るなり、呆れた顔をした。

「美月、お前いくつだよ。家出ごっこか?」

私が黙ったままだと、彼は眉を寄せる。

「聞いてるのか?黙って何のつもりだ」

だがテーブルの協議書を見た瞬間、動きが止まった。

「離婚……?たかが論文のことで?」

私が反応しないと、彼は少しだけ声を和らげた。

「詩音はお前と違って、頼れる家族もいないから、自分で生きるしかないんだ。今回だけは譲ってやれ」

その言葉に、吐き気がした。

「言い訳はいらない。サインして」

すると恒一は協議書をずたずたにして、床へ投げた。

「俺の我慢にも限界がある。ここで引くなら、見なかったことにするよ」

冷たい目だった。法廷に立っていた彼も、全く同じ目をしていた。

どれだけ不利な証拠を突きつけられても、最後まで言い逃れる。

それが一条恒一という男だ。

だから今までの喧嘩も、いつも謝るのは私の方だった。

恒一は私の顔色を見て先に口を開く。

「父親のことで、気持ちが荒れてるのは分かってる。

仕事が片付いたら、旅行に行こう」

それは彼なりの譲歩だった。だがそれから間もなく、ニュース速報が流れる。

橘詩音が教授に選ばれた。

父が一生をかけた研究成果で、彼女はZ大最年少の指導教員になった。

体は怒りで震えた。父を殺した人間が、父の功績まで奪うなんて許せない。

私は父の手書き資料と実験データをまとめ、ネットへ公開した。

だが十分もしないうちに削除された。

次の瞬間。玄関のドアが乱暴に開かれる。

詩音が怒った顔で入ってきた。

「あなた、私を潰す気!?」

私はニュースランキングを見る。たった十分。それでも詩音には大きなダメージになっていた。

「もう死んだ人の研究でしょ?私が使った方が価値があるのよ。先生も天国で喜ぶはずだわ」

「父が喜ぶ?自分を殺した人間に、成果を奪われることに」

私は彼女を睨みつける。

詩音の目が揺れた。だが次の瞬間、冷たい笑みを浮かべる。

「そうよ。全部私がやった。でも恒一さんが私の味方でいる限り、あなたには勝ち目なんてないわ」

そう言って、彼女は机の資料へ火をつけた。炎は一気に燃え広がる。

父が人生をかけた研究が灰になる。私は痛みも忘れ、素手で火を消そうとした。

煙が部屋中に広がる。その中で、詩音がか細い声を出した。

「恒一さん……ごめんなさい。先輩に許してもらえなくて……でも、責めないでください。私が悪いんですから」

駆けつけた恒一は、火傷した詩音の手を慌てて包み込む。

一方で、水ぶくれだらけの私の手を見もせずに、怒鳴りつけた。

「お前正気か!?詩音にそうさせたのは俺だ。俺の恩人に指導教員の席をやって何が悪い」

私は息をのんだ。

「……何言ってるの?あなたを助けたのは、父でしょう……?」
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