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第2350話

Auteur: かおる
一か月後、仁志は退院した。

だが退院後すぐにM国へ戻ることはせず、そのまま溝口家に入ることになった。

星にとって、ここは初めて訪れる溝口家だった。

雲井家で長く暮らしてきた彼女は、あそこも十分広くて豪華だと思っていた。だが溝口家に来て初めて、本当の意味で「世界一の富豪」とは何かを知った。

大げさではなく、溝口家の床に敷かれた石材は、どれも極めて希少な玉だった。

しかも、その透明感や質の高さの玉は、星も以前オークションで見たことがある。

一番安いものでも、一本の腕輪で一億円前後はした。

それを溝口家では、床材として使っているのだ。

桁違いにもほどがある。

星がずっと足元を見ているのに気づいた仁志は、彼女が何を考えているか察したようだった。

「溝口家はいくつもの鉱脈を押さえてる。こういうものは、ここじゃいちばん値打ちの低い部類だ」

その後、仁志は星を連れて、溝口家の中を案内した。

丸三日かけて、ようやく星は溝口家をひと通り見終えた。

見て回ってわかったのは、玉石だけではない。金ですら、溝口家では大して価値のあるものではないということだった。

家中の階段の手すりは
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    一か月後、仁志は退院した。だが退院後すぐにM国へ戻ることはせず、そのまま溝口家に入ることになった。星にとって、ここは初めて訪れる溝口家だった。雲井家で長く暮らしてきた彼女は、あそこも十分広くて豪華だと思っていた。だが溝口家に来て初めて、本当の意味で「世界一の富豪」とは何かを知った。大げさではなく、溝口家の床に敷かれた石材は、どれも極めて希少な玉だった。しかも、その透明感や質の高さの玉は、星も以前オークションで見たことがある。一番安いものでも、一本の腕輪で一億円前後はした。それを溝口家では、床材として使っているのだ。桁違いにもほどがある。星がずっと足元を見ているのに気づいた仁志は、彼女が何を考えているか察したようだった。「溝口家はいくつもの鉱脈を押さえてる。こういうものは、ここじゃいちばん値打ちの低い部類だ」その後、仁志は星を連れて、溝口家の中を案内した。丸三日かけて、ようやく星は溝口家をひと通り見終えた。見て回ってわかったのは、玉石だけではない。金ですら、溝口家では大して価値のあるものではないということだった。家中の階段の手すりは、すべて純金製。天井のシャンデリアも、本物のクリスタルで作られていた。仁志は退院こそしたものの、体はまだ完全には回復しておらず、しばらく静養が必要だった。そのため、ひとまず一族の宴席は開かないことにした。ただし、溝口家へ戻った初日だけは、溝口家の全員を正門前に集め、溝口家の当主夫人を迎えさせた。かつて美咲との結婚はあったものの、仁志が当主になって間もなく二人は離婚している。一族の者たちはその存在自体は知っていても、実際に顔を見た者はほとんどいなかった。長年ずっと一人で生きてきた仁志が、今こうして女性を連れ帰ったうえ、一族総出で迎えさせたのだ。それだけでも、彼女をどれほど重んじているかは明らかだった。さらに、星が身につけているのが、溝口家の半分の権勢を象徴するペンダントだと知った時、一同の衝撃はさらに大きくなった。その半分のペンダントが、まさか一人の女性の身にあるなんて。どれほど驚こうと、異を唱える者は一人もいなかった。仁志の威光は、すでに溝口家の隅々にまで浸透している。一族の上下を問わず、彼に無礼を働ける者など誰もいない。しかも仁志は、こ

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