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第940話

作者: かおる
そのとき、廊下から、再び足音が響いてきた。

振り向くと、顔色の悪い雅臣が、廊下に立っていた。

彼は二人を見るなり、問いかける。

「星は、今どうなっている」

仁志は答えた。

「分かりません。

僕も、着いたばかりです」

雅臣はそれを聞くや否や、ノックして病室に入った。

病室では、彩香が、星のベッド脇に伏して泣いている。

「星......

全部、私のせい......

私が余計なことを言ったばかりに、怜央に恨まれて、あなたの手まで......」

彩香の涙は、糸の切れた真珠のように、止めどなく零れ落ちた。

目を覚ましてからというもの、彼女は、自責の念から抜け出せずにいた。

星も、目を覚ましてから、まだそれほど経っていない。

彼女は静かに言った。

「彩香。

あれは関係ないわ。

あなたが何を言おうと、言うまいと、明日香が私生児だという件は、いずれ表に出た。

そうなれば、怜央は、必ず私の仕業だと思ったはず。

今回は、あなたが無事でいてくれて、本当に良かった。

もし、あなたに何かあったら......

私は、一生後悔していたわ」

今回の件で、彩香は、完全に星の巻き添えを食った。

幸い、怜央は、そこまで理性を失ってはいなかった。

彩香が、辱めを受ける事態には、至らなかった。

そして、航平の部下たちが、間に合ってくれたおかげで、

彩香は、溺死を免れた。

それを聞いた彩香は、ますます激しく泣き出した。

一方で、傍らに立つ航平は、その言葉に、一瞬、表情を硬くなった。

瞳の奥に、かすかな悔恨が走り、同時に、怜央への憎しみが、さらに深まった。

――必ず捕まえて、生き地獄を味わわせてやる。

沈黙を破ったのは、影斗だった。

「葛西先生には、すでに連絡してある。

今日の午後には、J市に到着する。

星の手も、まだ望みがないわけじゃない」

その名を聞き、星の瞳が、かすかに揺れた。

数秒、黙ってから、彼女は言う。

「私を攫ったのは、怜央よ。

朝陽じゃないわ。

朝陽は、手を出していない。

この件は、葛西先生には伝えないで」

星は、葛西先生との関係を思い、これ以上、迷惑をかけたくなかった。

彩香は、唇を噛みしめた。

怜央に比べれば、朝陽のこれまでの行いは、せいぜい小競り合い程度だ。

そのとき、病室のドアが、軽く叩かれた。

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コメント (29)
goodnovel comment avatar
Mari meow
nocccooさん、いつも鋭い洞察に感心しております。 明日香にとって星の存在が一番の脅威ですよね。ここでは明日香が、あちらでは優里母の遠山佳子が腹黒で冷酷な策士ではないかと。
goodnovel comment avatar
nocccoo
Mari meowさん 追記です 同じ考えの人がいて嬉しいです! どうかな?って思ってたから!
goodnovel comment avatar
nocccoo
Mari meowさん そう思っちゃいますよね。子供の頃から令嬢として大切に育てられたのに、母親の手紙一つで復讐?か分からないけど企んでそうですし。 頭良いから計算の上、怜央を放置。星が邪魔なのは明日香だし。
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