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第993話

Author: かおる
物陰から後を追おうとした、そのとき。誰かが、そっと彼の服の裾を引いた。

「仁志さん」

仁志が振り返ると、そこにいたのは優芽利だった。

優芽利は満面の笑みを浮かべる。

「仁志さん、どうしてここに?

星野さんのそばにいなくていいの?」

仁志は表情を変えぬまま、優芽利の手から静かに袖を引き抜いた。

「何か用ですか」

優芽利は周囲を見回し、声を落とす。

「仁志さん、少し話したいことがあるんです。

少し散歩に付き合ってくれないですか?」

仁志は、今のところ特に急ぎの用もなかったので、少し考えた末、頷いた。

優芽利は以前から仁志に好意を抱いていた。

彼の素性が、自分と釣り合うどころか、それ以上だと知ってからは、最後に残っていた不安までもが消え去った。

今の彼女には、見れば見るほど、仁志が魅力的に映る。

二人は人目の少ない、静かな裏庭へと向かった。

仁志の身元は、まだ公にはなっていない。

優芽利も、彼の地位や背景ではなく、「人としての彼」に惹かれているふりをしたかった。

そのため、言葉選びには、細心の注意が必要だった。

ましてや、仁志が星のそばにいる理由が、雲井
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