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第1022話
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契約終了、霜村様に手放して欲しい 第1026話
細かく途切れ途切れのキスが、肌に落ちてくる。まるで電流が走ったかのように、痺れるような感覚がした。和泉夕子のこわばっていた体が、次第に力を失い、男の肩に絡ませていた指も、わずかに強く握りしめた。微細な変化に気づき、腰を掴む手が、ますます強く締め付けられた。まるで彼女の腰をへし折るかのようだった。しかし、落ちてくるキスは、一つとして留まることなく、味をしめたように、びっしりと、首筋や鎖骨に降り注いだ。「さっき、私を何と呼んだ？」和泉夕子は必死に耐え、彼に答えなかった。「話せ」彼女はやはり答えなかった。優しいキスが、突然、熱烈なキスに変わった。洗面台の上に押さえつけられた女性は、次第に力が抜けていったが、口だけは依然として強気だった。「あ、あなたを、し、霜村冷司って呼んだのよ！まさかあなた、この名前じゃないとでも言うの？」霜村冷司は呆れて笑い出し、片手で彼女の体を支え上げ、彼女を自分の腰に絡ませると、シャワーヘッドの下へと彼女を抱き寄せた。温かい水が降り注ぎ、体に着ていた薄いブラウスが、瞬時に濡れた。ミルクのように白い肌が、たちまちのうちに、男の目の前に現れた。彼はその豊かな胸をじっと見つめ、数秒後、突然頭を下げ、薄い布越しに、白く滑らかで柔らかいそこを噛んだ。ただ一度触れただけで、和泉夕子は降参した。「もう二度と、あなたのフルネームを呼び捨てにしたりしないから、許して」彼女にキスをする男が、冷たく鼻を鳴らした。「遅い」「......」まるで故意に報復するかのように、力を込めて繰り返しこすりつけていた。和泉夕子は完全に力が抜け、もし背中が冷たい壁にくっついていなければ、この時、もう倒れていたかもしれない。明らかに彼女が彼を懲らしめる方法を考えていたのに、どうして一晩懲らしめただけで、また彼にやすやすとやり込められてしまったのだろうか？「待って、待って......」霜村冷司はうつろな両目を上げ、淡々と彼女を一瞥した。「もう始まっている。待てない」言葉が終わるか終わらないかのうちに、ある場所が貫かれるのを感じた。和泉夕子は無意識のうちに彼の首にしっかりと抱きつき、頭を下げて男のこの上なく美しい頬を見つめた。「でも、私はまだあなたに怒っているの」彼女を抱きしめる男が、わ
契約終了、霜村様に手放して欲しい 第1025話
四人の女性が立ち去ると、個室全体に、彼女と霜村冷司だけが残された。男は彼女を見つめ、しばらくした後、固く結ばれた唇の端に、次第に意味ありげな深い笑みが浮かんだ。「夕子、お前が夜通し楽しみたいのなら、私が付き合ってやる」彼は節くれだった指を上げ、ゆっくりとシャツの襟元を解き、セクシーな喉仏と、深くはっきりとした鎖骨を現した。男は個室の中の薄暗い光を受け、わずかに腰をかがめ、細長い両手を、ソファの両側に突き、彼女を自分の体の下に閉じ込めた。彼の薄い唇が、彼女の耳元に近づいた後、わずかに顔を横に向け、低い声で尋ねた。「教えてくれ。お前はどうやって遊びたいんだ？」和泉夕子は彼に誘惑されることを最も恐れており、両拳はすでに固く握りしめられていたが、表面上は誘惑されないふりをしていた。「もう遊びたくないわ。帰ろう」霜村冷司は彼女を構わず、頭を下げて彼女にキスしようとしたが、彼女に避けられてしまった。心に一筋の失意がよぎった。色仕掛けさえ通用しない。どうすればいい？彼は冷たい和泉夕子を見つめ、数秒後、少し諦めたように、頭を彼女の肩のくぼみに埋め、すり寄せた。「夕子、いい加減機嫌を直してくれよ」まだ、雲の上の存在である霜村冷司が、まるで子猫のように彼女に甘えるのを見るのは初めてだった。和泉夕子の胸の内が、思わず温かくなったが、無理に顔をこわばらせていた。彼女が黙り込んでいる様子は、霜村冷司の目には、まるで十の拷問を受けているかのように映り、彼をひどく苦しませた。「夕子、何か言ってくれ、いいか？」和泉夕子は淡々と言った。「帰ろう」霜村冷司は顔全体に諦めの色が浮かんでいたが、結局彼女には敵わず、ただ彼女を抱き上げ、そのまま車に乗せた。ブルーベイに戻った後、和泉夕子はやはりあまり彼に構わず、バスルームでシャワーを浴びて出てくると、すぐに穂果ちゃんの部屋に滑り込んだ。霜村冷司は彼女を捕まえようとしたが、捕まえられず、怒りのあまり心臓が詰まりそうになった。これはまだ初めてのことだった。拗ねて、別々の部屋で寝るというのは。霜村冷司は辛くなり、掃き出し窓の前に立ち、向かいのあの別荘をじっと見つめた。陰鬱で冷たい瞳は、今すぐにでも駆けつけて、大野皐月を八つ裂きにしたいほどだった。しかし潜在意識の中でははっきりと分かっていた。和
契約終了、霜村様に手放して欲しい 第1024話
午前10時頃、和泉夕子がようやく穂果ちゃんの部屋から出てきた。手すりのそばにもたれかかっていた霜村冷司が、慌てて近づき、お姫様抱っこで、彼女を腕の中に抱きかかえた。彼は彼女を抱きながら外へ歩き出し、低い声で彼女をなだめた。「夕子、お前が白石さんのナイトクラブへ行きたいなら、私が連れて行ってやる。私に怒らないでくれ、な？」男の声は、低くかすれており、まるで何かを我慢しているのに、それでも屈服せざるを得ないかのようだった。それが和泉夕子をますますつけ上がらせた。「私一人で行くわ」彼女を抱きしめていた両手が、突然止まった。ハンサムで深みのある顔立ちに、瞬時にいくつかの怒りの色が浮かんだ。「夕子、分かっているだろう。私はただ、お前を気にしすぎているだけなんだ」「気にするあまり、毎回冷たい態度で私に接するの？」和泉夕子の問い返しに、霜村冷司は無意識のうちに濃い眉をきつくひそめた。「改めているところだ」男は近づき、彼女の唇にキスをした。「もう一度、チャンスをくれ」和泉夕子の心の防御線はすでに打ち破られていたが、それでも彼女は必死にこらえた。「紫苑さんと約束したの」霜村冷司の薄い唇が、ゆっくりと一直線に結ばれ、顔色も目に見えて、次第に暗くなっていった。彼は和泉夕子の顔を見つめ、しばらくした後、彼女を降ろし、何も言わずに、そのまま書斎へと戻っていった。ドアがばたんと閉まったその瞬間、和泉夕子の心臓も、どきんと跳ねた。彼が癇癪を起こすと、やはりかなり怖い。しかし......和泉夕子はそれでも逆風に向かって行動し、振り返るとすぐに相川泰を呼んだ。車を屋敷から出した後、相川泰は口を酸っぱくして彼女を説得した。「奥様、こんなに遅くにナイトクラブへ行かれたら、冷司様が気が狂ってしまいますよ......」和泉夕子も彼がひどく辛い思いをすることは分かっていた。しかし、冷たい態度を取られる彼女も、辛いのだ。「私はただふりをしているだけよ。めちゃくちゃなことはしないわ」相川泰は説得できないと見て、視線を戻し、窓の外のバックミラーを見た。ちょうど後ろに、十数台の高級車が続いているのが見えた。相川泰は首を横に振った。若い夫婦が喧嘩をして、巻き添えを食うのは、彼らのような運転手だ。ついていない、本当についていない......和泉夕子と
契約終了、霜村様に手放して欲しい 第1023話
キッチンでは、楽しそうな笑い声が響いていたが、リビングの男は、落ち着かなかった。彼がひどく苛立っていると、穂果ちゃんがお団子頭で、ポテトチップスの袋を抱え、ぴょんぴょんと階段を駆け下りてくるのが見えた。男は珍しく、細長い手を上げ、あの太った子に向かって手招きした。「思奈、こっちへ来い」穂果ちゃんは、おやつを盗み食いしたのが見つかったのかと思い、驚いて慌ててポテトチップスを後ろに隠した。「私、ほんの少ししか食べてないの。叔父さん、お仕置きはやめて」霜村冷司には今、彼女がどれだけスナック菓子を食べたかを気にする余裕などなく、ただ彼女に向かって顎をしゃくった。「お前が私のために一つ頼みを聞いてくれれば、お仕置きはしないでおこう」穂果ちゃんはようやく、ぷくぷくした短い脚を動かし、霜村冷司の前に走り寄った。「叔父さん、どうしたの？私に何を手伝ってほしいの？」霜村冷司はキッチンの方向を一瞥した。「おばさんのところへ行って、私のために一言二言うまいこと言ってくれ」穂果ちゃんはすぐに聞き取れた。「叔父さん、おばさんを怒らせたの？」霜村冷司は彼女を一瞥した。「聞くべきでないことは、聞くな」穂果ちゃんは手を伸ばし、自分のお団子頭を掻いた。「叔父さん、あなたは今、私に頼みごとがあるのに、まだ私にそんなにきつく当たるの。私があなたを手伝うわけないじゃない」霜村冷司の無関心な視線が、あるかないかのように、彼女の手の中のおやつをかすめた。「お前は私にお仕置きされたいのか、それとも私の言う通りにするのか、自分で選べ」まさに得意満面だった穂果ちゃんは、その言葉を聞いて、上がっていた口角が、瞬時に下がった。「叔父さん、あなた、本当に嫌な人なの......」霜村冷司はどうでもよさそうに、眉を上げた。「私を嫌いな人間は、いくらでもいる。お前一人くらい、どうってことない」穂果ちゃんは彼と話していると、腹を立てるか、むかつくかのどちらかだと感じた。なのに、よりによって彼に弱みを握られてしまった。最悪だ！彼女は鋭い歯をぎりぎりとこすり合わせた後、ポテトチップスを霜村冷司の手に押し付けた。「私、あなたのために頼みを聞きに行くわ。あなたは私のポテトチップスをしっかり見ていてね。事が終わったら、私に食べさせて！」その勇ましく意気揚々とした後ろ姿を見つめなが
契約終了、霜村様に手放して欲しい 第1022話
和泉夕子は彼に構わず、彼を突き飛ばすこともしなければ、なぜ気が狂ったのかと尋ねることもなく、ただ自分のことだけをして、お椀にスープをよそった。完全に無視された霜村冷司は、自分が先ほどあまりにも冷淡だったせいで、彼女を怒らせてしまったと分かり、慌てて謝罪した。「夕子、私が悪かった。無視しないでくれ」和泉夕子は依然として彼に構わなかった。霜村冷司は心の中で慌て、急いで彼女の手からスプーンを取り上げ、彼女を壁に押し付けてキスをした。キスをしながら、なだめるように言った。「夕子、私は大野さんがお前の腰を抱いているのを見て、少し嫉妬したんだ。だから頭が混乱してしまった」彼は彼女の赤い唇を含み、甘く囁いた。「これからはもうお前を無視したりしないと誓う。私に怒らないでくれ、いいか？」なるほど、帰ってくるなり彼女に不機嫌な顔を見せたのは、大野皐月に嫉妬したからだったのか。しかしこの嫉妬は、あまりにも不可解だ。彼女がわざと大野皐月の前に近づいたわけではないのに。霜村冷司の性格は、以前と何ら変わりない。怒るとすぐに冷たい態度を取る。この悪い癖は、なんとか治さなければ。そうでないと、毎回嫉妬されるたびに、彼女が八つ当たりされることになる。彼女は耐えられないだろう。ここまで考えると、和泉夕子は穏やかに、霜村冷司を突き飛ばした。「もう怒っていないわ。あなた、顔を洗って。夕食の準備ができているわ」女心は非常に分かりにくい。彼女は口では怒っていないと言っているが、顔には彼を許す気配は少しも見られなかった。このような和泉夕子を見て、霜村冷司は少しどうしていいか分からなくなり、力強く彼女を抱きしめた。「夕子、私はまだお前が私に怒っているように感じる」和泉夕子は眉を上げて皮肉った。「私がどうして霜村社長に腹を立てたりできるでしょ。どうせこの家では、すべて霜村社長がお決めになるのだから。私なんて何者でもないよ」皮肉な口調は、霜村冷司にもやはり聞き取れた。「夕子、私は冷たい態度が良くないと気づいた。これからはもうしないと誓う。そんな風にしないでくれ」なんだか怖いぞ。和泉夕子は彼を突き飛ばした。「うん。霜村社長の言う通りね」霜村冷司はなだめられないのを見て、焦りの色を顔に浮かべた。「夕子、その呼び方は、とてもよそよそしい。そんな風に呼ばない
契約終了、霜村様に手放して欲しい 第1021話
水原紫苑が訪ねてきたという知らせを受け、すぐに監視カメラを確認した霜村冷司は、この場面を見て、整った顔に、いくつかの冷たさが浮かび上がった。大野皐月、彼の妻を見る目が、どうやら少しばかりの感情を隠しているようだ。あの顔さえ覚えられない男が、まさか本当に彼の妻を好きになってしまったのではないだろうか？霜村冷司は回転椅子に座り、顎に手を当て、しばらく考えた後、水原紫苑に電話をかけ、さらに霜村凛音にメッセージを送った。まもなく、大野皐月の望遠鏡の中に、水原紫苑の車が現れた。今回ははっきりと見える。目尻が上がった狐のような瞳が現れた。大野皐月はひどく興奮した。ちょうど望遠鏡を下ろし、人を捕まえに行こうとした時、その狐のような目の持ち主が、ゆっくりと顔を横に向けたのが見えた......レンズの中の、その顔は、確かに狐のような目を持っているが、彼が以前見た顔立ちではなかった......彼はネットで霜村凛音の百科事典を検索し、写真を取り出し、拡大し、望遠鏡の中の人物と、比較してみた。写真の中の人物は、薄化粧をしている。望遠鏡の中の人物は、濃い化粧をしている。メイクの感じは違うが、同一人物だ。まさか彼はさっき本当に見間違えたのか？彼は再び望遠鏡を手に取り、注意深くナンバープレートと、服装を見た。先ほどと全く同じだ。もし同一人物なら、ではなぜ自分の車が追いかけてくるのを見て、彼女はすぐに走り去ったのだろうか？明らかに、後ろめたいことがあるからだろう！彼がちょうどそのように疑っていると、その車の持ち主が、何かを警備員に投げ渡し、その後、先ほどのスピードで素早く山道へと走り去っていった。まさかこれはただの運転の癖で、彼が来たのを見て、それで必死に暴走したわけではないのか？このような一連の出来事を経て、大野皐月は完全に混乱してしまった......彼は望遠鏡を上げ、再び見てみると、ちょうど霜村冷司が車から降りてくるところが見えた。男は屋敷に入る前に、足を二秒止め、続いて体を横に向け、冷ややかに向かい側を一瞥した。その雪のように冷ややかな目が、レンズの中に現れた時、大野皐月の心臓が、突然どきりとした。まるで彼に対して申し訳ないことをしたかのように、慌てて望遠鏡を下ろし、それ以上見る勇気がなくなった......実際に彼は
