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第817話

Author: 心温まるお言葉
沙耶香と柴田夏彦がちょうどチェックアウトを済ませ、ひとまずA市に戻ろうとしていたところへ、霜村涼平が慌てふためいて二人の前に駆け寄ってきた。

豊かな癖のある髪は風で乱れ、シャツのネクタイも曲がっており、少々みっともない様子だった。

柴田夏彦は彼がまた沙耶香に何かするのではないかと思い、一歩前に出て、その大きな体で沙耶香を庇い、霜村涼平に警告した。

「もしこれ以上ふざけた真似をするなら、また警察を呼ぶぞ」

そのような脅しは、霜村涼平にとっては、何の効果もなかった。

彼の暗赤色の瞳は、柴田夏彦の後ろに隠れる白石沙耶香をじっと見据えていた。

「あんたが姉貴に言ったこと、聞いたぞ。遅すぎた告白だと受け取ってやる」

「あんたが僕に告白したからには、僕も言っておく。白石沙耶香、あんたが好きだ。いや、愛してるのかもしれない。まだよく分かんねぇけど」

彼の言葉は支離滅裂で、全身から酒の匂いが漂い、まるで酔っ払いがたわごとを言っているかのようだった。

沙耶香は当事者であり、ひどく混乱していた。たとえ聞き取れたとしても、遊び人の御曹司が口にする好きだの愛してるだのという言葉を信じる気にはなれなかった。

傍観者である柴田夏彦は、しかし、霜村涼平の心中を一目で見抜いていた……

少年の翻意した愛は、遅すぎたが、しかし深く真剣なものだった。

この世で、霜村涼平のような金持ちの御曹司からの猛烈なアプローチに、誰が抗えるだろうか?

柴田夏彦は少し心配になり、再び体をずらして、沙耶香を完全に自分の背後へ隠した。

「涼平様、沙耶香は今、僕の彼女です。彼女にそんな話をするのは不適切ですよ」

霜村涼平は彼を一瞥し、その黒く深い瞳には、侮蔑の色だけが浮かんでいた。

「ただの彼女だろ、妻じゃない。僕には自由に告白する権利がある」

言い終えると、彼は柴田夏彦を押し退け、一歩前に出て、沙耶香の肩を掴んで言った。

「柴田夏彦には謝る。だから、もう一度僕を好きになってくれ、な?」

彼の突然の譲歩に、沙耶香は少しまごついた。

霜村涼平が柴田夏彦に謝るだって?

これがあの、傲慢で、唯我独尊の涼平様なの?

彼女が呆然としている間に、霜村涼平はすでに彼女から手を離し、柴田夏彦に向き直っていた。

「悪かった」

短い一言は、きっぱりと口にされたが、それでも彼の傲慢さは保たれていた。

心からの謝罪というよりは、ただ取り戻したい相手
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