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第980話

Author: 心温まるお言葉
筆を握って構図を描いていた和泉夕子は、その言葉を聞いて一瞬手を止め、筆と定規を置き、携帯を手に取った。

「何を決めたっていうの?」

「私は以前、涼平に対していじけていたから、夏彦と付き合うことにしたの。私には私心があったけど、彼は本気だった。これまでの間、彼は私に対して、涼平が現れた時少し過激なことをしたりしたことを除けば、とても良くしてくれたわ......」

和泉夕子は理解した。白石沙耶香は柴田夏彦が何をしたかを知っていながら、それでも彼を許すことを選んだのだ。ただ......

「涼平はどうなの?濡れ衣を着せられて、きっと辛いでしょね」

和泉夕子の言葉の裏には、白石沙耶香に霜村涼平の気持ちも考えるように促す意図があった。

白石沙耶香は霜村涼平が濡れ衣を着せられた時、怒りで目を真っ赤にし、全身を震わせていた姿を思い出し、心に罪悪感が込み上げてきたが、必死にそれを抑え込んだ。

「夕子、私が以前、夏彦と結婚すると約束した時、彼はすでにご両親との顔合わせの日程を決めていたの」

「私が自分で夏彦を巻き込んだんだもの。この一件だけで、彼を突き放すわけにはいかないでしょ」

「私は責任を取らなければならないわ。彼や彼のご両親を裏切るわけにはいかない。そうでなければ良心が咎めるもの」

なるほど、白石沙耶香は問題の所在を認識していたのだ。ただ今、彼女が考慮しているのは、もはや個人の感情だけではなかった。

もし和泉夕子であったとしても、白石沙耶香のために正しい判断を下すことはできなかっただろう。ただ、沈黙し、数秒ためらった後、やはり口を開いて白石沙耶香を諭した。

「沙耶香と柴田さんはまだ付き合い始めてそれほど長くないでしょ。もう少し付き合ってみてから、結婚のことを考えてみたらどう?」

柴田夏彦が悪いと言っているわけではない。ただ......白石沙耶香はそれほど柴田夏彦を好きではないように感じたのだ。

もちろん、白石沙耶香の言葉を借りれば、自分が愛している人と結婚するよりも、自分を愛してくれる人と結婚したほうがいい、ということになる。

そうすれば、たとえ最終的に傷ついたり、裏切られたりしても、未練なく去ることができる。

愛していなければ、痛みもない、というわけだ。

白石沙耶香のような結婚観も、間違っているとは言えない。

ただ、彼女の親友として、和泉夕子
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