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第6話

Penulis: 畑ねこ
春翔の視線が、南嶋のお腹にちらりと落ちた。一瞬、表情が強張る。だがすぐに、合点がいったという顔になった。

「は……わざと早産して、子どもを盾に俺を脅すつもりか?病院であんなことがあった日から、もうこんな筋書きを考えていたんだな?」

春翔は冷たく笑い、南嶋の首をつかんだ。

「日和をあれほど傷つけておいて、子どもを盾にすれば俺が折れるとでも思ったのか?

お前には反吐が出る!」

そう吐き捨てると、彼は南嶋を床に投げ捨てた。そして声を荒らげる。

「もう子どもを産んだのなら、遠慮する必要もない」

使用人たちが仏間にある竹刀を持ってくると、春翔はそれを手に取り、まだ傷の癒えていない妻の背中めがけて、容赦なく振り下ろした。

南嶋は思わず息を詰まらせ、身体をこわばらせた。それでも立つことは許されず、そのまま正座しているように言い渡された。

今の南嶋に、こんな責め苦に耐える力などもう残っていない。上半身がぐらりと傾き、崩れ落ちた。

体が畳に倒れ込むと、鈍い音が響いた。血の匂いが辺りに立ち込める。

朦朧とする意識の中で、医師が春翔のそばへ歩み寄り、何事か耳打ちするのが聞こえた。

それを聞いた途端、張り詰めていた春翔の体から、目に見えて力が抜けた。

「本当か?骨に異常があるわけじゃないんだな?」

「はい。数日安静にしていれば回復なさるでしょう」

春翔は、ようやく安堵の息をついた。

部屋を出ようとした医師は、南嶋のそばを通りかかったところで足を止めた。全身を血に染めた彼女の姿を、見るに見かねたのだろう。

「ですが、春翔様。奥様は日和様よりもはるかに重傷です。奥様の手当てもすぐにしたほうがよろしいのではありませんか?」

そばにいた年配の執事も、慌てて半歩進み出て口添えした。

「旦那様、奥様はまだお体が治りきっておりません。これでは……」

言い終わらないうちに、春翔が冷たく遮った。

「自業自得だ。過ちを犯した者が罰を受けないのなら、大道寺家の掟はどうなる。これ以上こいつをかばう者は、同罪として容赦はしない」

執事は身をすくめて部屋の隅に引き下がった。医師もそれ以上は何も言わず、ため息をついて立ち去った。

部屋は静まり返り、南嶋の弱々しい息遣いだけが響いていた。

夜が更けると、春翔も部屋に残ることなく、仕事を片づけるために書斎へ戻っていった。

畳の上にうずくまっていた南嶋は、春翔がいなくなったのを確かめてから、ようやくゆっくりと身体を起こそうとした。けれど、背中の傷がまだひどく痛み、少し動くだけでも鋭い痛みが走った。

激痛に、目の前が何度も暗くなった。

そのとき、背後から女の声が静かに響いた。

「これでわかった?あなたは一生、私には勝てないのよ」

南嶋がどうにか目を動かすと、いつの間にかベッドから起き上がっていた日和が、心底楽しそうな顔でこちらを見下ろしていた。

南嶋は歯を食いしばり、かすれた声で言った。

「……自分のしたことがバレるのが……怖くないの?」

日和は鼻で笑った。

「はっ。だから何?春翔は私のことしか信じないもの。あなたなんか……」

日和は足を上げ、南嶋のお腹を思いきり踏みつけた。そのまま、ぐっと力を込める。

南嶋は苦しそうに息を詰まらせた。背中の傷まで一気に痛み、身体を丸めることもできない。

南嶋の悲痛な叫びが部屋中に響き渡った。その苦しむ姿を見て、日和はいっそう興奮した。

「今から思い知らせてあげる。春翔に愛されてる私こそ、この家で一番偉いってことをね」

そう言うなり、日和は部屋に置かれていたオイルランプを床に叩き落とした。

こぼれた油が床板の隙間を伝って広がっていく。火が燃え移った瞬間、古い和室の床や建具へと一気に火が燃え広がった。

狂っている。この女は、完全に狂っている!

南嶋は恐怖に駆られて起き上がろうとした。けれど、背中の傷がひどく痛み、思うように身体を動かせなかった。

炎はすでに衣服の裾に燃え移っていた。南嶋は両腕の力だけで必死に這い出そうとした。だが少し進んだところで、頭上からめきめきと嫌な音が響いた。焼け落ちた梁が、轟音とともに脚の上に落ちてきた。

あまりの激痛に、目の前が真っ暗になる。濃い煙を吸い込み、助けを呼ぶ声さえ出せなかった。

「火事だ!早く消せ!」

炎の向こうから、使用人たちの叫び声が聞こえた。続いて、ドアが勢いよく蹴破られる。

次の瞬間、春翔がためらうことなく火の中に飛び込んできた。

南嶋は入り口のすぐ近くに倒れていた。それなのに春翔は彼女に目もくれず、部屋の奥で倒れている日和のもとへまっすぐ駆け寄った。

春翔は日和を抱き上げ、炎をくぐって外へ出ようとした。けれど南嶋のそばを通りかかったところで、ふと足が止まった。

ためらったのは、ほんの一瞬だけだった。

「南嶋、お前は大道寺家の当主の妻だ。先に日和を逃がす。待ってろ、すぐ戻る。

……親族会議では、皆の前でお前を褒めてやるから」

それだけ言うと、春翔は日和を抱いたまま外へ出ていった。最後まで振り返ることなく、その姿は燃え上がる炎の向こうへ消えていった。

南嶋は床に伏したまま、遠ざかっていく背中を見つめた。胸の奥が、引き裂かれるように痛んだ。

「春翔……私はもう、あなたの妻じゃないのに」

外へ飛び出した瞬間、春翔の耳にかすかな声が届いた気がした。思わず振り返る。

その瞬間、背後で凄まじい轟音が響き渡った。

ついさっきまで自分がいた建物が、凄まじい轟音とともに一瞬で崩れ落ちた。

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