INICIAR SESIÓN交際記念日、黒木航(くろき わたる)はまた寝坊した。 彼が目を覚ましたとき、私・神崎寧々(かんざき ねね)は鏡に向かってビューラーでまつ毛を立ち上げていた。 航は申し訳なさそうな顔をして言う。「ここ数日、まだ時差ボケが抜けてなくて、大目に見てくれよ」 この1か月、航は研究室の後輩・須田陽菜(すだ ひな)と一緒に、海洋調査のためのサンプル採取で世界中を飛び回っていた。 私は静かにマスカラをしまう。「気にしないで。予定を変えて友達と会うことにしたから。せっかくきれいにメイクしたんだもの。無駄にするのはもったいないし」 航はほっとしたように息をついたが、その表情はどこか引きつっている。 昔の私なら、こんなことでは済まない。きっと思いきり拗ねて、航に文句をぶつけていた。 航は後ろから私を抱きしめ、笑いながら言う。「寧々は本当に大人になったな。そういえば、新しい投稿を見たけど、あれはどこに行ってたんだ?」 「ああ、南星島よ」と淡々と答える。「航がアイスノーランドに行ってた頃にね」 その言葉に、航は呆然とした。 付き合って1年目の記念日から、私は何度も航に一緒に南星島へ海を見に行きたいと願っていた。航はいつも「時間ができたら一緒に行こう」と言っていた。 2年目、3年目、4年目……航は私に「もう少し大人になれ」と言い聞かせては、陽菜と次の目的地へ旅立っていった。 付き合って5年目、私はもう待つのをやめる。 一人旅も、思いのほか楽しいものだ。
Ver más「航。これで最後にする。私たちにはもう、何の関係もないの」あの日のあと、航は西湖市を離れた。ただ、忘れ物があるからと時折メッセージを送ってくる。最初は送ってほしいと返していたが、のちには返信もしなくなった。生活は再び元の軌道に戻った。ただ、そこに航はいなくなった。そんなある日、会社を出るとき、思いがけない人物が目の前に現れる。陽菜だ。彼女は目を赤く腫らし、何日も寝ていないような顔をしている。私を見るなり、陽菜は狂ったように飛びかかってくる。警備員がすぐに彼女を取り押さえる。彼女は憎々しげに大声で叫ぶ。「このクソ女!私と先輩がクビになって、それで満足なわけ!?」その時初めて知った。
それから数日、航は毎日のように会社の前で待ち伏せしていた。人事の担当者が私のところへ来て、遠慮がちに言う。「神崎さん、外にいるあの人とどういう関係ですか?毎日外に立たれていると、会社としても少し困りまして……」「すみません。できるだけ早く解決します」外はまだ雨が降っているが、航は相変わらず雨の中に立ち尽くし、ひどくみすぼらしい姿になっている。私が姿を現わすと、彼は目を輝かせた。「仕事しなくてもいいの?いったいどうしたら、私につきまとうのをやめてくれるの?」航はかすれた声で言う。「食事に付き合ってくれないか?ちゃんと話し合いたいんだ」レストランに入ると、航はさりげなく椅子を引いてくれ
そのあとの2日間、航はずっと上の空だ。時々寧々にメッセージを送り、ブロックが解除されていないか確かめる。メッセージを入力しては消し、何度もためらった末、結局送ることはなかった。航には分からない。今までずっとこんなふうに仲直りしてきたのに、なぜ今回は駄目なのか。そんなとき、奈緒の投稿を見た。寧々は異動が決まったあと、奈緒と一緒に西湖市へ行き、ついでに数日間観光を楽しんでいた。【嬉しい反面、少し寂しいな。これからは自立して生きていくのね!一番の親友である私を差し置いて、他の子と親友になってはだめよ!】9枚並んだ写真の最後の1枚には、寧々と峻也の後ろ姿が写っている。奈緒が横でこっそり笑っ
自分の言い方がきつすぎたと気づいた航は、しばらく沈黙したあと、私を抱きしめた。「ごめん。俺が悪かった。最近、ちょっと調子が悪くて」私は体を強張らせたまま、動かなかった。そのとき、航のスマホにメッセージが届いた。彼は一瞬固まり、次の瞬間、顔を輝かせた。そして、慌てて陽菜に電話をかけた。「解決した、全部解決した!やっぱり、今朝お前がくれたあのブレスレットのおかげだ……きっとそうだ。待ってろ、今すぐそっちに行く」航はコートをつかむと、そのまま家を出ていった。まだ温かいミルクを長いこと見つめてから、それをゆっくりと水道に流した……「寧々?」峻也の声に、意識が現実へと引き戻される。笑顔を
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