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第 1028 話

作者: 水原信
男用のリングは女用ほど大きなダイヤモンドではないが、サイズはやや大きめで、一周に小さなダイヤモンドがちりばめられており、非常に美しかった。何より、名前を刻印できるサービスが恵美の心を捉えた。

恵美は清墨に視線を向けて尋ねた。「私たちの名前を刻んでもらえない?1ヶ月後、あなたのリングは私が預かる。お金は……私が出すから」

清墨が断るのではないかと、恵美は内心不安だった。彼に迷惑をかけたくないという思いから、できる限りの配慮をした。

清墨は困惑しているわけではなかったが、女にお金を払わせることは自分の信条に反すると感じていた。

「刻印したいならすればいい。会計は俺がする」清墨は低い声で答えた。

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