LOGIN舞台は古代中国の修仙界。『宋長安』『朱源陽』『橙仙南』『青鸞州』の四国が結託し、それぞれの国が持つ特徴的な仙術を使い、日々妖魔や邪祟を退治しながら世を統治していた。 医家術の三宗名家・六華鳳宗の末裔である華蘭瑛(ホア・ランイン)は、華山の麓にある邸宅・鳳明葯院で市医の医家として働いていた。ある日、封印されていたはずの最強の鬼・玄天遊鬼が何者かに解き放たれ、赤潰疫という鬼病が四国を襲う。そこで、眉目秀麗で有名な冷酷無情の剣豪、宋長安の国師・王永憐(ワン・ヨンリェン)と出会い、蘭瑛はある理由から宋長安の宮廷に呼ばれ、この宮廷で起こる様々な出来事に巻き込まれていく。そしてそれぞれの思惑や過去を知ることになり、探し求めていた真実に辿り着くのだが…
View Moreひと月の喪に伏せた後、永憐は宋武帝の遺言通り世間に皇弟であることを公表し、|永豪帝《ヨンゴウテイ》として宋長安の後継者となった。 |賢耀《シェンヤオ》は少しずつ心を取り戻し、永憐と一緒に政への参加に勤しんだ。 橙仙南の後宮が滅んだ後も橙南の町はそのまま残し、宋長安の配下の元、風宇は深豊の側近として仕えることになった。 宋長安と橙仙南と青鸞州の三国を統合し、長安州という国に生まれ変わらせると、永憐は名医三家に俸禄をし、医術の繁栄にも力を注いだ。 その影響なのか、|秀沁《シウチン》は潔く蘭瑛から身を引き、永憐に対して無礼を働くことはなくなった。 更に永憐はその他にも貧富の差を埋める為、出自に関わらず様々な人材を確保し、様々な自国の農産物を各国に流出するなど、全ての民の仕事と生活を安定させた。 蘭瑛はというと本格的な悪阻が始まり、梅林の監視の元藍殿で休んでいた。「蘭瑛、具合はどう? 檸檬持ってきたけど食べる?」「食べますぅ、……うぅ」「あらあら……」 梅林は吐き戻している蘭瑛の背中を摩り、孫が見れるなら何でもすると、嫌な顔一つせず献身的に支えた。「こればっかりはね、仕方ないのよね〜蘭瑛」「すみません……。双子だからかな、悪阻も二倍なのは……」 蘭瑛は双子を懐妊した。 出産は初夏頃を予定しているが、蘭瑛のお腹はもうぽっこり出ている。悪阻は辛いが、お腹を触る度二つの命が宿っていると思うと、この上ない愛おしさを感じる。具合の良い時は梅林と散歩をしたり、具合の悪い時は水飴をひたすら舐め続けるなどして、この神秘的な瞬間を噛み締めるように日々を過ごした。 悪阻が落ち着き始めた春。 蘭瑛は永憐を連れて六華鳳宗を訪ねていた。 鳳凰が植えたとされる、百本の桜並木が今年も見頃を迎えており、どうしても永憐に見せたかったからだ。「綺麗でしょ、永憐様」「あぁ。凄い綺麗だ」 蘭瑛は足を止め、桜の木を見上げる。 昨年は一人でここに立っていたのに、今年は最愛の人とここに立っている。来年は二人増えて四人でここを訪れるだろう。 人生は本当に何が起こるか分からない。 だからこそ、良いことも悪いことも巡り巡って、各々の人生を彩っていくのかもしれない。 蘭瑛は隣にいる永憐の顔を見上げる。 例え過ちがあったとしてもそれを上回る愛と赦しがあれば、罪は少しずつ消えて
蘭瑛は蒼穹を垂らした永冠を光らせ、玄天遊鬼の元へ歩いて行く。玄天遊鬼は、蘭瑛の姿を捉えると何故か一歩後ずさった。 「お、お前は一体誰だ?」 「あなたが一番心から信頼していた六華鳳凰の末裔、|華蘭瑛《ホアランイン》だ」 どうやら蘭瑛の姿が六華鳳凰の姿に似ていると思ったのだろう。玄天遊鬼は慌てた様子で足元に落ちていた剣を足で蹴り上げ、剣を構えた。蘭瑛は構わず続ける。 「玄天遊鬼……。いや、本名は|天佑《テンヨウ》。娘の名前は|花舞《ファウー》。いつまで恨み続ける気ですか? 仕方ない出来事だったはずなのに」「黙れ!! 鳳凰は、私の娘を見捨てたんだ!! 別の子どもたちは皆、赤疫から助かったのに鳳凰は花舞だけ何もしなかった」「違う! あなたの力を信じていたからよ。あなたなら助けられると思ったから」 当時、玄天遊鬼は優秀な医家として六華鳳宗に所属し、六華鳳凰の弟子として働きながら、幼い娘を男手一つで育てていた。 そんなある日、当時は赤疫と呼ばれた今の赤潰疫のような流行病が蔓延し、幼い子どもたちの尊い命が奪われていく事件が勃発した。 鳳凰たちは、手当てをしに各地を巡回していたが、その最中に玄天遊鬼の一人娘・花舞もこの病に感染してしまう。 重症だった花舞を玄天遊鬼が必死に看病するも、一向に回復の兆しが見えず、玄天遊鬼は藁にもすがる思いで鳳凰に六華術の触診を願い出た。しかし、鳳凰は弟子の子どもを優先する訳にはいかず、玄天遊鬼の実力を熟知していたこともあり、あと三日待って欲しいと伝えた。だが、花舞の容体は見る見るうちに急変し、鳳凰が尋ねた時には息を引き取っていた。その事が引き金となり、玄天遊鬼は六華鳳宗を離反し、私怨を抱いたまま赤潰疫をばら撒く鬼と化した。「鳳凰先生の手記には、あなたに対する罪悪感と、自責の念が書かれていた。あなたに絶大な信頼を置いていたことも」「黙れ! 黙れ! 黙れ! 何が信頼だ! 何事も尽力してきた弟子の願いすら、あの男は聞き入れなかった。あの男が娘を殺したんだ!!」 玄天遊鬼は苛立つ気持ちを抑えられないまま、蘭瑛に向かって術滅印を放った。 しかし、蘭瑛は正還法を放出している為、何の被害も被らない。「くそっ! この六華鳳宗め!」 玄天遊鬼は「くたばれ!」と罵り、剣先を向けて蘭瑛に飛びかかった。 すると蘭瑛は掌から眩惑法
「やはり、お前だったか」 「口の利き方には気をつけろ、若僧が」 化けの皮が剥けた|玄天遊鬼《ゲンテンユウキ》は、更に邪悪な雰囲気を纏い始める。空は淀み、周辺が急に薄暗くなった。 永憐が睨みを効かし、口火を切る。「ずっと、端栄に化けて行動していたのか?」 「そうだ。|端栄《タンロン》という男が、その剣を持っていた男の封印を解き、私の所へ来た。統治を乱す者を全員消して欲しいと。だから四国の古い長たちを全員殺した。お前の存在を探る為、姿を変えて宋長安にも何度か行ったんだが、誰かを殺したくて躍起になっている妃達の姿が滑稽だったよ」 「|天京《テンキョウ》と名乗っていたのもお前か?」「天京? あぁ〜。そんなような名前を名乗ってたな。もう忘れちまったが。さぁ、戯言はここまでだ。準備はいいか?」 玄天遊鬼は汚い歯を見せながら、剣先を永憐に向けて永憐に飛び掛かった。永憐も十分に溜め込んだ剣気を放出するかの如く、果敢に攻める。二つの剣先が交わると、端栄の時とは違う光芒が轟音と共に鳴り響いた。 目が眩む程の激しい交戦が続き、誰もが息を呑んでいると、光芒が突如止む。「さすが剣豪の息子だ。しっかり血は通っているのだな」「当たり前だ」 永憐と距離を取った玄天遊鬼は、永憐の周りを囲うように黒い靄を放った。 「しばし、夢を見るがいい」 永憐は靄の隙間から見えた霞んだ玄天遊鬼の目を睨みつけながら、靄に呑み込まれていった。 ここは誰かの夢か? 永憐の目の前が暗闇から明けていくと、祝言を終えたあとに住む予定だった家の前で、一人の女が立っているのが目に入った。「|永郎《ヨンロウ》? 、お帰りなさい」「|美雨《メイユイ》……」 記憶に残っている美雨の姿がそのまま反映されているようだ。 美雨が永憐の手を取り、家の奥へ連れて行こうとする。「永郎、早く中に入ろうよ。ずっと待ってたんだから」「……」「ねぇ、どうしたの? 何でこっちに来てくれないの? 家の中に入ったら、ずっと一緒にいられるよ」「……中へは入れない」 永憐の言葉を聞いた美雨は永憐の手を離し、無の表情を見せた。「私をまた一人にさせるの? この家で私はずっとあなたの帰りを待ってるのに、あなたはどうして帰ってこないの? どうして、ねぇ、どうしてなの?!」「……美雨。お前はもう死んでいる。そ
永冠は剣光を放ち、|端栄《タンロン》の剣とぶつかる! キンキンと剣先が擦れ、激しい光芒が交わると他の者たちも一斉に食ってかかった。 |永憐《ヨンリェン》は端栄の動きを瞬時に把握し、袍を靡かせ絶妙な足運びで攻撃を躱す。 さすが、帝の側近同士である。 互いに一歩も譲歩しないといった様子だ。「|王《ワン》国師は更に腕を上げられましたね。昔の手合わせとは全然違う」「私もそう感じる。まるで別人だ」 永憐は剣先を打つように離し、端栄から一旦距離を置く。 すると端栄の隙を狙ったのか、突然横から|龍凰《ロンファン》が端栄の足元に氷術を打った。 端栄の足元が瞬く間に凍り、端栄は身動きが取れなくなったのだが、持っていた剣に灼熱の火を放出すると足元の氷に突き刺した。「こんなもので私を捕まえられると思うな」 端栄はそう言いながら、突然姿を消した。 永憐は永冠を構えながら探知術で気配を探知するが、妙な術を放出しているのか上手く把握できない。 すると、永憐の側近である|宇辰《ウーチェン》が僅かな動きを把握して叫んだ!「龍凰皇弟! 危ない!」 姿を現した端栄の剣を庇うかのように、宇辰は龍凰の正面に飛び込む。 行動は吉とはならず、端栄の剣は宇辰の腹を通過し、宇辰は口から大量の血を吐いた。「宇辰!!」 永憐は憤慨しながら端栄に襲い掛かり、端栄の頭を永冠の柄で叩き打った。脳震盪を起こした端栄はその場に崩れ落ち、目を白目にして口から泡を吹き出した。永憐はすぐに宇辰の元に駆け寄り、腹の傷を抑える。倒れ込んだ龍凰もすぐに起き上がり、眉を下げながら駆け寄った。「大丈夫か宇辰!! おい!! しっかりするんだ!!」「宇辰殿、申し訳ない……」「お二人とも……。私のことは……、どうぞ……、お構いなく……」 息を切らしながら宇辰はいつものように微笑んだ。「ほっとけないだろう! 術で出血を止められるか?」 永憐は意識が朦朧とし始めている宇辰を揺さぶりながら、必死に呼び掛けた。 すると、二度と聞くことのないはずの女の声が背後から聞こえてくる。まるで救世主が現れたかのように。「ここは私たちが何とかするので、永憐様は早く敵のところへ」 永憐が声のする方へ振り向くと、蘭瑛と遠志が毅然と立っていた。遠志が目尻に皺を寄せて小さく頷き、永憐の安堵を誘う。「どうしてここに
それは剣門山の山に差し掛かったところで起きた。 前方から二人の高身長な男女が歩いてくるのが見え、蘭瑛は目を見開き思わず立ち止まった。 目に飛び込んできたのは、今蘭瑛が一番見たくない|永憐《ヨンリェン》と|儷杏《リーシー》の姿だった。見てはいけないものを見てしまったかのように、沸き立つ恐怖のような動悸が蘭瑛を襲う。 永憐も前から来る蘭瑛の姿を捉えたのか、その場で立ち止まり、茫然とする。見つめ合う二人の間には氷瀑が幾重にも連なり、決してそちらにはいけまいと言わんばかりの雨氷が吹き荒れているようだ。 茫然と突っ立っている永憐に気づいた秀沁は、憐れむような目を向けて拱手した。 「こ
「…し、知りません…」 「そうか。ならば用はない」 人影はまた剣光を放ち、男の喉を瞬く間に突き刺した。 刃の先に注がれた剣気と鮮血が入り混じり、不気味な血腥さが漂う。 人影の口元が僅かに動いた。 「必ずや…この手で見つけ出し、遺恨を晴らす…」 人影は、苛立ちを込めた表情で剣の柄を力強く握り締め、地鳴りを轟かせるように地面を穿った。 ・ ・ ・ 翌日。 蘭瑛《ランイン》は賢耀《シェンヤオ》がいる宮殿で、痙攣するかのように顔を引き攣らせていた。 「ねぇ、お願い!一緒に永徳館《よんとくかん》へ来てよ。蘭瑛先生がいてくれたら、きっと永憐《ヨンリェン》兄様も許可してくれるから
「ご機嫌いかがですか?」 「見ての通りだよ!蘭瑛《ランイン》先生がくれた薬飲んだらさ〜、凄い楽になって、ほら」 賢耀《シェンヤオ》は座ったまま、身体を腰から左右に動かす。 一晩、付きっきりで賢耀の側にいた護衛の泰然《タイラン》も、他にいた護衛たちも、賢耀のあまりの回復の早さに驚きを隠せないでいた。 周りの驚愕な様子に見向きもせず、賢耀は続ける。 「いやぁ〜ほんと、僕はいつも永憐《ヨンリェン》兄様に助けてもらってばかりで…」 (永憐兄様?そんなに慕っているのか…) 蘭瑛はふ〜ん、と思いながら黙って耳を傾ける。「永憐兄様が蘭瑛先生を連れてきてくれなかったら、間違いなく死んでたよ」
歩いて来た道を戻るように、妃たちの殿門の前を通り過ぎ、突き当たりを左に向かってそのまま歩いていくと、藍殿《らんでん》はあった。 「こちらになります」 「は、はい」 青を基調とした立派な建造物が何棟も連なっており、宿舎か何かだと蘭瑛《ランイン》は思った。ぼんやり眺めていると、隣にいた宇辰《ウーチェン》が、爽やかな笑みを向けて口を開く。 「あちらは、永憐《ヨンリェン》様の住居です。こちら側は、私たち護衛や侍女が寝泊まりする所になっております」 宇辰は、向かって右側の塔を指しながら、蘭瑛に説明した。 「はぁ…」 やはり、国師というだけあって、暮らしぶりは桁違いのよう