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第 1342 話

Author: 水原信
三人がかりでかかれば、さすがに海咲ひとりくらい、なんとかなるだろう――

そう思っていたのは、彼らの方だった。

だが、現実は違った。三人が束になっても、海咲には敵わなかった。

彼女は見事な素早さでリーダーの腕を取り、関節を決めたまま背後に回り込み、勢いよく彼の腰めがけて蹴りを入れた。

「ぐっ……」

激しい痛みに耐えきれず、しかも腕をがっちり掴まれていたため、彼は腰を伸ばすことすらできなかった。それでも口だけは達者だった。

「放せよ……さもねえと、最強の薬を打ってやる……あんた、きっと雌犬みたいに地面に這いつくばって、俺たちに懇願することになるぜ……」

その薬は、彼らの組織内でも滅多に使われること
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