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44.先手必勝。凛の訪問を待つ母

last update Last Updated: 2025-06-10 18:15:40

「啓介、元カノの凛さんと啓介のお母さんに交流があるなら私も早めに顔を出して、挨拶にいった方が良くない?凛さんの言うことを鵜呑みにされる前に、私たちが先に会ってきちんとご挨拶した方がいいと思うの。」

佳介の冷静な判断に俺は目を見張った。

「確かに。母さん、凛を熱心な生徒と言っていて印象はいいんだよな」

「それなら尚更だよ。凛さんの印象が良くなればなるほど、私たちの話は聞いてもらえなくなる。凛さんは負けず嫌いな計算高い女性みたいだし。これで終わるような女性ではないと思うの。」

別れた男の母親に近付き、偶然を装って再会、そして俺の彼女の前でキスをし挑発してくるような女性だ。佳奈の言う通り、凛がこれで終わるとは思えなかった。

「分かった。すぐに連絡する」

翌日、俺は覚悟を決めて母に電話をかけた。

「母さん、都合いい日ある?今度、紹介したい人がいるんだ」

「え?なによ、突然! 誰なの?」

「大切な人なんだ。大事な話もあるから、一度、時間を作ってくれないか?」

「ええ! もちろんよ! 楽しみにしているわ! 私はいつでもいいから!」

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