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第5話

Auteur: 雨宮ライカ
翌朝、私が玄関のドアを開けると、そこには生活ゴミが山のように積まれていて、嫌な臭いまで漂ってきた。

向かいを見ると、登美と妊娠中の嫁の松田光子が座って、ヒマワリの種を食べながら、横目で私を睨んでいた。

こんな手を使ってくるとは?

私はドアの上につけた監視カメラに目をやった。この二人、本当に頭悪すぎるんじゃない?

私は玄関に置かれたゴミ袋を掴み、それをそのまま向かいのドアに投げ返した。

──が、ゴミ袋は途中で破れてしまい、中身の生活ゴミが空中で飛び散り、登美と光子に直撃した。

「ぎゃあああああ!」

老いも若きも、ものすごい悲鳴を上げて大騒ぎ。私は即座にドアを閉めて、家の中に戻った。

しばらくすると、ドアの外からバンバンと激しいノック音が聞こえてきた。

ドアスコープで確認すると、マンションの管理人が何人かの警備員を連れていた。

私がドアを開けると、管理人は険しい顔で言った。

「雪乃さん、先ほど住民から通報がありました。妊婦に危害を加えた疑いがあるとのことです。状況を説明していただけますか?」

私は冷笑しながら、皮肉たっぷりに言い返した。

「状況説明?あなたたち、自分が将軍か何かだとでも思ってる?一体どんな権限でそんなことを調査するつもり?」

管理人の顔が少し曇った。

「横山さん、402号室の住人が映像を提出しました。あなたが物を投げつけたのが記録されています。この行為は故意の傷害罪にあたる可能性がありますので、協力いただけない場合は警察に通報することになります」

私は一瞬目をパチパチさせ、ある考えが浮かんだ。そして、わざと怯えたふりをしてこう言った。

「お願いですから警察だけはやめてください!協力します!何でもしますから!」

私は管理人たちと一緒に管理事務所に向かった。そこには登美が、光子の手を引いて座っていた。

光子はお腹を抱え、顔は真っ青で、まるで今にも倒れそうな様子だった。

私の姿を見た途端、登美の顔には横じわが立ち、今にも飛びかかってきそうな勢いで叫び出した。

「この人殺しめ!うちの福の子に何かあったら、絶対にただじゃ済まさないからな!婆さんの命が尽きようが、絶対にお前に償わせてやる!」

......やばい、この人、本気で頭おかしいんじゃない?

登美は突然、管理人の足元にひざまずき、大声で泣き叫び始めた。
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