LOGINミレーヌは少し驚いた。 「ありがとうございます」 「北方では、同じ保温布でも、病床用と移動用で厚みを変えます。施療院での使用場所を確認するのは意味があります」 クラリスは、ミレーヌを見た。 妹は少し赤くなっているが、きちんと立っている。 補佐見習いとしての視点が、国際案件の品目分類に入り込んだ瞬間だった。 「では、受領先用途欄に使用場所を追加しましょう」 クラリスが言うと、セリアが書き取った。 受領先用途:病床用/待合室用/移動用/その他。 ミレーヌは、小さく息を吐いた。 自分の発言が記録された。 怖い。 でも、少し嬉しい。 そんな顔だった。
現物を見る必要がある。 布の端を見る必要がある。 その布が誰のための布なのか、最後まで追う必要がある。 夕方近く、セルゲイ大使が顧問室を訪れた。 彼はいつものように穏やかだったが、机の上に広げられた布を見ると、ほんの少し嬉しそうな顔をした。 「届きましたか」 「はい。非常によい布です」 「北方の冬では、この程度でなければ役に立ちません」 「アルヴィアの冬でも十分役に立ちます」 「そうでしょう」 セルゲイは布に触れ、端印を確認した。 「気づかれましたか」 「イリスが見つけました」 「さすがです」 イリスは静かに礼をした。 「端を見るのは侍女の仕事でもござ
ミレーヌは、少し考えてから続けた。 「元品目と予定用途を分ける必要があります」 クラリスはオスカーを見る。 オスカーはすでに書いていた。 元品目:北方厚織毛布地。予定用途:防寒外套/寝台用毛布/施療院保温布/冬季慈善支援品。最終分類:受領先用途確定後。 セリアが静かに言った。 「慈善記録官室の分類表にも、元品目欄と最終用途欄を追加しましょう」 「はい」 ミレーヌは頷いた。 だが、その顔にはまだ迷いがあった。 クラリスは気づいた。 「何か気になりますか」 「……はい」 「言ってみて」 ミレーヌは布を見つめた。 「これ、同じ布ですよね」 「ええ」
王宮筆頭実務顧問室に、布が届いた。 書類ではない。 帳簿でもない。 封蝋のついた外交書簡でもない。 布である。 しかも、かなり上等な布だった。 深い灰色に、わずかに青みが混じった毛織物。手で触れると厚みがあるのに硬すぎず、指先を押し返す弾力があった。冬の風を受けても、それを内側へ通さないだろうと分かる。 机の上に置かれたその布を、クラリスはしばらく無言で見つめていた。 「お嬢様」 イリスが横から言った。 「ついに書類ではなく現物が攻めてまいりました」 「攻めてきたわけではありません」 「では、押しかけてきました」 「それも少し違います」 クラリスは
「承知いたしました」 クラリスは礼をした。 その隣で、イリスも礼をする。 どちらかというと、イリスの方が満足そうだった。 会議が終わった後、ミレーヌがクラリスのもとへ来た。 「お姉様」 「今日は、お疲れ様」 「ありがとうございます」 ミレーヌは、まだ少し緊張しているようだった。 だが、その顔には確かな喜びもある。 「国王陛下に、見習い継続を認めていただきました」 「ええ」 「三か月後、正式採用されるかは分かりません」 「はい」 「でも、今日の報告に自分の仕事が入っていたことが……その、嬉しかったです」 クラリスは微笑んだ。 「あなたの仕事です」
国王は、最後の文言を見て頷いた。 「単独管理しない。よい」 「はい」 クラリスは答える。 「顧問室が国際交易路まで単独で抱えることは、制度の趣旨に反します」 「分かっているならよい」 国王の声には、少しだけ笑みが混じっていた。 イリスが後ろで静かに控えている。 何も言わないが、たぶん後で「本当に分かっておられるか確認します」と言う顔だった。 最後に、王宮筆頭実務顧問室の勤務状況報告が来た。 クラリスは、少しだけ息を整えた。 国王が表紙を見た瞬間、面白そうな顔になる。 「これが、顧問室自身の報告か」 「はい」 クラリスが答えようとした時、イリスが一歩前