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第10話

Author: 浮島
蒼空は手の中の玉のブレスレットを掲げ、瑛司の目の前に差し出した。

「このブレスレット、優奈が壊したの」

担任が一瞥し、冷たく言い放つ。

「優奈さんみたいないい子が、わざと壊すわけない。優奈さんを陥れるのをやめなさい。

それより、事情も考えずに殴りかかるあなたのほうが問題よ。どうしようもない子ね!」

滑稽だ。

優奈が壊した玉は「わざとじゃない」。

でも自分が殴ったのは「どうしようもない」。

瑠々がその玉を見て、柔らかな声を出した。

「この玉......そんなに高くないみたいね。もし気に入ってるなら、私が買ってあげる。だからそんなに怒る必要なんてないでしょう?

優奈ちゃんにはもっといいブレスレットがたくさんあるの。わざわざ壊す理由なんてないよ......関水さん、優奈ちゃんを誤解してない?」

言い回しは婉曲で、理解ある風に聞こえる。

だが、わかる者には――

ただの侮辱。

松木家のお嬢様が、こんな安物を目に留めるはずがない。

蒼空だけが、こんな「ガラクタ」を宝物と思っている。

周囲の生徒たちは一斉に笑い声を上げた。

蒼空は瑛司を見た。

彼もまた、黒い瞳で彼女を見返す。

何も言わない。

それは、黙認ということだろう。

胸の奥に、皮肉と苦味が広がる。

ここにいるのは皆、生まれながらの貴族。

父の想いが詰まった玉の重さなど、誰もわからない。

そのとき、校長が歩み寄ってきて、諭すように言った。

「関水さん、今回は君が先に手を出したんだ......早く優奈に謝りなさい」

校長はよく理解している。

松木家が誰を大事にしているかも。

真実は、どうでもいい。

蒼空が、謝れば済む話。

文香が胸を叩き、焦り混じりに叫ぶ。

「蒼空、どうして松木お嬢様に手を上げたのよ?!早く謝りなさい!」

瑛司の声が鋭く響く。

「蒼空、謝れ」

冷たい黒い瞳が射抜く。

「謝らないなら......もう松木家に帰る必要はない」

一瞬、ざわめきが走った。

その意味は、すなわち――

松木家からの追放。

蒼空は言葉を返さず、ただ砕けたブレスレットを見つめた。

「......あなたたちにはわかるはずがありません。

お金があるから、もっといい玉なんていくらでも買える。

でも、これは......お父さんが一年かけてお金を貯めて、私の誕生日にくれた最後の贈り物。

私には、これしかないのです」

文香の顔から血の気が引き、戸惑いが滲む。

「蒼空......なんで言わなかったの?」

瑛司の表情?周囲の視線?

もうどうでもいい。

蒼空はブレスレットを握りしめ、校長をまっすぐに見据える。

冷ややかに、静かな声で。

「謝りません。私、間違っていませんから。

教室には監視カメラがあるはずです。映像を確認したら、全部わかります」

校長は一瞬、言葉を詰まらせた。

優奈の瞳が一瞬鋭く光り、次の瞬間には涙声を作って瑠々に飛び込む。

「どうして?こんなに殴られたのに......謝ってほしいだけなのに、そんなに難しいこと?瑠々姉、痛いよ......」

瑠々は肩を抱きしめ、優しく撫でながら瑛司を見る。

「......瑛司」

その様子を見た校長の顔が険しくなる。

「監視映像なんて必要ない。優奈さんの顔を見ればわかるでしょう!まだ言い訳するのか?」

周囲の生徒たちが一斉に声を上げる。

「みんな見たよ!優奈は話したかっただけなのに、蒼空が突然殴ったんだ!」

「そうそう!こいつ、前からそういうやつだし!」

瑠々が苦しげに唇を噛み、静かに言った。

「関水さん......私たち、ただ謝ってほしいだけなの」

文香は周囲を見回し、青ざめた。

瑛司の表情がさらに冷たくなるのを見て、慌てて蒼空の腕を掴む。

「蒼空!早く謝りなさい!そんなに追い出されたいの?!

ブレスレットくらい、お母さんが新しいの買ってあげる!だから早く!」

蒼空は深く息を吸い、文香の手を振り払った。

そして、真っ直ぐに瑛司を見据える。

二度目の人生。

もう、誰にも汚されない。

「監視カメラを確認するだけでしょ。そんなに難しいですか?

映像を見れば、すぐにわかる話なのに......それを必死に止める理由は何なんですか?

やましいことでもあります?」

瑛司の黒い瞳が細まり、冷気を帯びる。

蒼空は静かな声で告げた。

「瑛司。私はただ、監視映像を見たいだけ。

それを見た上で、私が間違っていたというなら......黙って受け入れますから」

そして、冷笑を浮かべた。

「それともみんなは、口封じの方が大事だと思ってるんですか」

その挑発に、瑛司の眉がわずかに動いた。

前世も、同じだった。

証拠もなく、ただ瑠々を庇うために、彼は断罪した。

そして、蒼空を屋敷の物置部屋に閉じ込めた。

一ヶ月。

一日一食。

使用人たちは彼女を見下し、運ばれる食事は腐りかけの残飯。

窓も閉ざされ、昼も夜もわからない闇の中で、高熱にうなされ、意識を失い、また目覚め、再び沈む。

外へ必死に叫んでも、返るのは冷たい声だけ。

「関水さんが騒ぐなら......もっと長く閉じ込めろ」

一ヶ月後、外に出されたときには骨と皮ばかり。

そのまま病院に運ばれなければ、命すら危うかった。

二度目の人生。

もう、同じ結末にはさせない。

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Comments (2)
goodnovel comment avatar
Y
意味がよく分からない。急に前世ってなんなん。
goodnovel comment avatar
辛子明太子
あのさあ、嫌なら松木家を出て行けばよくない?
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