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第264話

Author: 浮島
「三つ目に。たとえ本当に行き詰まって、盗作を装って話題作りをしたかったとしても、元の曲をそのまま自分の名義にして出したほうが、よっぽど手っ取り早いでしょう?わざわざ似つかない別の曲を苦労して作るなんて、非効率すぎると思いませんか」

蒼空の声はますます冷静になる。

「率直に言わせてもらうけど、その言い訳は論理がガタガタで筋も通ってないし、聞いていて無理がありすぎる。

私からすれば、久米川さんが天満菫の名誉回復を持ち出すのはただの建前で、本音は盗作のほうなんじゃないですか?さっきの説明、全部久米川さんが盗作したことへの言い逃れにしか聞こえない」

一気に言われて、瑠々の顔色はみるみるうちに青ざめていく。

後退りするように数歩下がり、怯えと不安が入り混じった眼差しを向けてくる。

その足元を見た蒼空は、眉をひそめた。

瑠々はもともと舞台の端に立っており、これ以上下がれば舞台端の金属フレームにぶつかるし、一メートルはある高さから落ちる危険すらある。

瑠々は眉をわずかに寄せ、いかにも儚げな表情で小さくつぶやいた。

「ごめんなさい......あのときは慌てすぎて、何も考えられなくて.
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