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第521話

Auteur: 浮島
瑠々は一瞬目を瞬かせた。

「瑛司?」

瑛司は、壁を支えながらふらつく蒼空をもう一度見やり、低く言った。

「行きたいなら、勝手に行かせろ」

そう言い残し、彼は蒼空を一瞥もせず階段を上がっていく。

瑠々は唇を引き、意味ありげな視線を蒼空へと投げてから、足早に瑛司の後を追った。

礼都はようやく満足したように、菜々の腕を引いてついていく。

後ろの数人も、互いに目を合わせたあと、何も言わずについていった。

蒼空は数歩歩いたところで、ふらふらと揺れ、隅の椅子にどさりと腰を落とす。

頭を壁に預け、眠りに落ちそうだ。

主役たちが去ると、しばしの静けさが訪れたが、やがてまた喧噪と音楽が戻る。

人混みの中、数人の男がしばらく蒼空を見つめ、怪しい視線を送ったあと、ようやく視線をそらした。

――

「松木社長、せっかく来たんだ。飲まないと失礼ってもんだろ?」

友人が笑いながら瑛司にグラスを差し出す。

「久しぶりに松木社長と奥さんに会えたしな。松木社長は奥さん思いだし、奥さんは飲まなくていい」

瑛司はグラスを取り、一息で飲み干した。

「さすが松木社長」

別の友人が感嘆する。

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