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第695話

Author: 浮島
文香は保温容器を提げて病室に入ってきた。

まず蒼空の顔色を一瞥し、それからベッドサイドの棚に積まれた滋養品の山に目を向ける。

「どれもいいものじゃない」

松木家の旧宅で何年も使用人として働いていた彼女は、こうした品の価値が分かる。

頭の中でざっとブランドと値段を思い浮かべ、思わず舌を鳴らした。

「これ、誰が持ってきたの?」

文香が尋ねる。

そのとき、弁護士からさらに数件メッセージが届いた。

蒼空はそれを数行流し読みし、表情は淡々としている。

【お話を聞く限り、今回の交通事故にはいくつか不審な点がありますね。このまま調査を続けますか?】

蒼空は顔を上げ、何気ない調子で答えた。

「全部瑛司からだよ」

「えっ......」

その名前を聞いた瞬間、文香は思わず声を上げ、手を離してしまう。

滋養品の箱が落ち、そこそこ大きな音を立てた。

久しく聞いていなかった名前だった。

文香は心臓の奥がひやりとするのを感じ、気まずそうに蒼空を見る。

「瑛司?もう何年も会ってないでしょう。どうして?しかも、こんなにたくさん......」

あの頃、松木家と瑛司が蒼空にどう接していたか。

それを、文香はずっとそばで見てきた。

彼女は内心で警戒する。

5年も経ってから顔を出したのは、蒼空が事業を成功させたから、取り入ろうとしているのではないか――

蒼空は視線を落としたまま、弁護士に返信した。

【調査を続けてください】

すでに彼女は、トラック運転手とその家族の口座や名義資産を調べさせていた。

大きな入金はなく、資金の流れもすべて正常で、不審点は見当たらない。

運転手の体内から検出されたアルコール濃度も、法定基準を超えており、飲酒運転に該当する数値だった。

何日経っても決定的な結果は出ず、蒼空自身も、もしかすると自分の判断が間違っていて、ただの偶然だったのではないかと疑い始めていた。

蒼空は唇を軽く結ぶ。

それでも、事故が誰かの仕組んだものだとしても、調査は続けるつもりだった。

返信を終えると、彼女は顔を上げ、穏やかな口調で文香に言った。

「あれ、近所の人たちに配って。いらないから」

文香は蒼空の表情を慎重にうかがい、無理をしている様子も不快そうな様子も見えないのを確認してから、少し考え、うなずいた。

「それもいいわね。瑛司のものを、こっ
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Comments (5)
goodnovel comment avatar
ゆーい
その可能性ありそうですよね。 瑠々を陥れる為に繋がってるの。 相馬かなり危険そうな男ですし…。
goodnovel comment avatar
桜花舞
瑛司にされたこと思うとこんな生温い対応しかしてなくてムカムカきます! それとも、瑛司にルルを疑わせたり、何か情報を得ようとしてるの?
goodnovel comment avatar
ayako
はぁ、遥樹と仲直りしたと思ったらまた瑛司かよ…。 蒼空の「距離を置く」ってどれくらいなのかな?もう、お見舞いに来た時点で「お帰りください」って言ってもいいくらいじゃない?お見舞いの品々も、持って帰らないだろうとは思っていても「要りません」くらいは言っていいんじゃないかな?!なんでこんなに受け身なの??遥樹が見たらまた怒っちゃうよ?!てか読者も読んでて不快なんですけど!蒼空、瑛司の事もっとハッキリと拒絶してよー!!
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