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第748話

浮島
瑛司は低く落ち着いた声で言った。

「大したことじゃない。ただ同行してほしいだけだ」

遥樹は唇をきゅっと結び、表情が無意識のうちに冷えていく。

蒼空はしばらく黙り込み、やがて口を開いた。

「ほかの条件にしていただけませんか?できる限り応じます」

瑛司の返答はきっぱりしていた。

「ない。この一つだけだ」

蒼空には、瑛司が何をしようとしているのか分からない。

迷うのは当然だったし、公的な用件以外で彼と関わる気も、正直あまりなかった。

もう少し交渉しようとすると、瑛司が言った。

「行き先に同行してもらうだけで、他に何かを求めるわけじゃない。安心していい」

蒼空は尋ねる。

「どこへ行くのか、聞いても?」

瑛司は答えた。

「今は伏せておく。ただし危険な場所じゃないし、時間も一時間ほどだ」

――妻が亡くなったばかりで、こんなことを言い出すなんて。

遥樹は内心、怒りが込み上げ、蒼空を一瞥した。

数年来の付き合いだ。

蒼空が、もう半分は了承する気でいることが一目で分かる。

遥樹は歯を食いしばり、しばらく耐えたあと、顔を背けた。

蒼空が仕事を何より大切にしていること
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