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第48話。

Author: 愛月花音
last update Last Updated: 2025-05-13 17:21:33

「ちょっとクリス!? レイナ様を刺激したらダメ。おやめ下さい」

「もう遅い」

 レイナは腕を高く挙げ振りかざした。

(もう……ダメ!)

 エルザは恐怖で目をつぶる。しかし、それから数秒経ったが何も起きなかった。

 恐る恐る目を開けてみるが、何か変わった気配はない。周りも何も起きないので違う意味でざわついていた。

「あれ? どういうことなの?」

 エルザは戸惑ってしまう。それはレイナも同じだった。

「なんで何も起きないのよ!? どういうこと? これ偽物じゃないの?」

「そ、そんなはずはない。確かに我々の開発は成功している」

「じゃあ、何で効果が出ないのよ!?」

 レイナと聖皇が内輪もめを始めてしまう。理由はよく分からないが、どうやら失敗で終わったらしい。とりあえずエルザはホッとする。

「ふっ……効果が出ないのは当然だ。能力にかかる前に私の『時を操る』能力で打ち消したからな。そもそも門番の私に人間の能力など効かぬ。よって……これではっきりしたな。貴様の悪事は皇太子である父上を魅了で洗脳し、陥れようとした不敬罪。国を乗っ取ろうした反逆罪。そして母上に濡れ衣を着せて殺そうとした殺人未遂。今回の国を混乱にさせた事は許されることではない。よって、そのように処罰を下す。父上……処罰は私に任せてもらってもいい良いか?」

 クリスは決断を下しながらもチラッとレイヴァンに見て尋ねる。

「あぁ、異論はない。私も皇太子……いや皇帝として、そなたのやった罪は大きく許しがたい。これは間違いなく有罪だ。この者の処罰はお前に全て任す」

 レイヴァンから許可が降りる。クリスはそれを聞くとニヤリと笑い、もう一度レイナを見下ろした。

「ありがとうございます。では……貴様は別世界世界から転生してきた者だったな。なら処罰は元の世界に戻してやろう」

(えっ? 処罰なのに元の世界に戻すの?)

 元の世界に戻させることにも驚いたが、処罰がそれって……。

 重い罪なるところか、それだとただの褒美では?

 レイナが元の世界に帰りたいと思っているかは分からないが、罪にしては軽過ぎではと思った。

「本当ですか!? じゃあ、やっと元の世界に帰れるのね。この世界はもう散々だったのよ。早く帰って、普段の日常に戻りたいわ」

 周りの貴族達も反論するが、当の本人であるレイナは大喜びする。

「……何か勘違いしていないか? 誰もその
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