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第4話

Author: カーボン煎餅
退院して3日後、私たち家族はそろって別荘へ向かった。

今回は、言われたとおり渋々後部座席に座った。

ここ数日降り続いた雨で、山道はひどくぬかるんでいる。

別荘に着くなり、両親と兄は真っ先に桃華のもとへ向かった。

「桃華、この部屋はお前の好みに合わせて整えたんだ。どうだ、気に入ったか?」

「足りないものがあれば、すぐ言いなさい。すぐに持ってこさせるから」

桃華は父の腕に甘えるようにしがみつき、いかにも愛らしく微笑んだ。

「パパとママが用意してくれたものなら、桃華、何でもうれしい」

みんなの部屋が決まってから、母はようやく私にどの部屋がいいかと尋ねた。

けれど、どうせ残っているのは山側のいちばん奥の部屋だけだ。聞く意味なんてない。

部屋に入ると、私はいつもの癖で中を見回した。

悪くない。ベッドの下は、身を潜めるには十分な広さがある。

私は慣れた手つきでベッドの下に潜り込み、両手を腹の上で組んだ。

夜明けを待つ。あるいは、死を待つ。

真夜中、外から鈍い轟音が響いた。

次の瞬間、地面が大きく揺れる。

裏山が崩れ、土砂が一気に別荘へなだれ込む。

山側に最も近い私の部屋が、真っ先に直撃を受ける。

目を開けたときには、梁と岩がベッドの上に落ち、ベッドはほとんど押し潰されていた。残骸の隙間に、どうにか私の頭上だけわずかな空間が残っている。

折れた木片がふくらはぎに深く食い込み、焼けつくような痛みが走った。

息が詰まり、思わず歯を食いしばる。額には冷や汗がにじんだ。

これまでの10回は、どれもあっさり終わった。

どうやら今回は、死ぬまできっちり苦しめということらしい。

「みんな無事か!」

父の切羽詰まった声が、外から響いてくる。

「俺が気づいて叩き起こさなかったら危なかったぞ。

別荘が土砂を受け止めてくれなきゃ、逃げ場なんてなかった」

懐中電灯の光が闇の中をせわしなく走る。瓦礫の隙間から差し込んだ細い光が、ちょうど私の顔をかすめた。

私は黙って、そのやり取りを聞いていた。

瓦礫の隙間越しに、外の様子がぼんやり見えた。

「青葉は?青葉は出てきたの?」

母は少し離れた庭石にもたれ、肩を震わせながら息を切らしている。

そのそばで、桃華が兄の背に身を寄せ、青ざめた顔のまま、おびえたように口を開く。

「さっき……お姉ちゃんが裏口から走っていくのが見えた気がするの。

すごく速くて、振り向きもしなかった……

呼び止めようとしたけど、怖くて声が出なかった」

兄は拳を握りしめ、低く吐き捨てた。

「あの恩知らず……やっぱり何かあれば、真っ先に自分だけ逃げるんだな。せっかく気分転換に連れてきてやったのに」

母は深いため息をつき、失望したように首を振った。

「こんなときに妹まで見捨てるなんて。本当に薄情な子ね」

瓦礫の下で、頭上の重みがじわじわと増していく。

泥と石が、私の上に残されたわずかな空間を少しずつ押し潰していく。

私は体の脇へそっと手を滑らせた。指先が、ポケットの中の冷たいボタンに触れる。

兄と両親の言葉が、脳裏をよぎった。

――試してみよう。

私はボタンを押した。

一度、二度、三度。

残る力を振り絞って、さらに二度。

外で、不意に耳障りな電子音が鳴った。

隙間越しに、兄がポケットからスマホを取り出すのが見えた。

兄は画面を見るなり、ふっと嗤った。

母はその表情に息をのみ、兄の手元にあるスマホを見てから、崩れた別荘へと視線を移した。

「青葉が……助けを求めてるの?まさか、まだ中にいるの?」

兄は薄く笑った。

そして両親の目の前で、ためらいもなく通知を切った。

「そんなわけないだろ。桃華が見たって言ったじゃないか。あいつはもう外に出てる。

それなのに呼び出しボタンなんか押したってことは、まだ中に取り残されてるふりをしてるだけだ。俺たちをあの中に戻らせるつもりなんだろう。

あの木箱のことをまだ根に持って、仕返ししようとしてるんだ。

ほんと、底意地が悪い。そんなやつに付き合う必要はない」

母は唇を噛み、わずかにためらった。

「でも、もし本当に……」

「母さん、桃華がこの目で見たんだ」

兄は苛立ちをにじませながら、言葉を遮った。

「あいつは、俺たちが慌てるのを見たいだけだよ。

こうやって人を振り回すのは、いつもの手だ」

それきり、もう誰も何も言わなかった。

やがて、懐中電灯の光も遠ざかっていく。

家族は皆、桃華を囲んで気遣うばかりで、私のほうを振り返る者はもういない。

泥と石の重みがついにベッドを完全に押し潰し、そのまま私の上へのしかかった。

私はそっと目を閉じる。

どうやら、死を待つまでもなく、もう終わるらしい。

……

サーチライトで崩れた別荘を照らしながら、救助ヘリが轟音とともに到着した。

ヘリから降り立った救助隊長が降り立ち、大声で叫ぶ。

「別荘の中に、まだ人は残っていますか!」

「いません」

父親の正人、母親の美由利、そして兄の大樹が、口をそろえて答えた。

そのとき、別荘の管理人が真っ青な顔で駆け寄ってきた。

「違います!まだ中に一人います!」

彼は監視用のタブレットを掲げ、震える声で訴えた。

「記録では、土砂崩れのあと外に出たのは、ここにいる四人だけです。

それ以外に、どの出入口からも外へ出た人は確認されていません!」

隊員が生命探知機に目を落とす。無機質な電子音が短く鳴った。

「別荘下部、生体反応……確認できません」

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