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第4話

Author: 花職人のコマドリ
私は呆然と顔を上げた。恭介の目が、気まずそうに私から逸れた。

麻友は真里の前に立って私を睨んだ。

「知世、いい加減に分かりなよ。人の家庭を壊そうとしてるのは、あんたのほうでしょう!」

母は精神疾患の診断書を取り出し、記者たちに頭を下げた。

「申し訳ありません。娘は心を病んでいて、ずっと恭介につきまとってきました。恭介に薬を盛って関係を持ち、真里にも迷惑をかけています。母親の私からお詫びします」

信じられない思いで母を見た瞬間、涙があふれ出した。

「お母さん?何を言ってるの。悪いのは真里のほうなのに……」

次の瞬間、恭介が医療スタッフを何人も連れてきた。

彼らは母から診断書を受け取ると、私に弁明する暇も与えず、首筋に鎮静剤を打った。

意識を失う直前、恭介と真里が指を絡め、寄り添う姿が見えた。

二人は私を一度も見ようとしなかった。

スマホを取り上げられた私は、10平方メートルにも満たない部屋に1か月も閉じ込められた。

もがき、抵抗し、脱出しようとして脚を折りかけた。それでも外へは出られなかった。

妊娠8か月になって、恭介がようやく姿を現した。

私の好きなまんじゅうを持ってきて、耳元の髪を優しく整えた。

「つらい思いをさせたな。外へ出て真里を傷つけないか、心配だったんだ。戸籍上、真里と夫婦になったのは、子どもを俺の戸籍に入れるためだ。お前が出産したら、すぐ離婚する。自分のほうが不倫相手だったと認めて、真里に土下座して謝れば、ここから出してやる」

私は大きなお腹を抱えたまま床にひざまずき、額が床につくほど何度も頭を下げた。

「ごめんなさい。私が不倫相手です。もう二人の邪魔はしません。これでいい?」

恭介の顔が曇った。何かを言いかけて唇を動かし、拳を固く握った。

結局、彼はため息をつき、私を家へ連れ帰った。

私は急いで荷物をまとめ、家を出ようとした。

ところが寝室を出たとたん、大勢がなだれ込んできた。

真里は涙で顔を濡らし、私の前にひざまずいた。

「お願い、知世さん。子どもを返して!さっき、りーちゃんの生後1か月を祝う準備をしていたの。知世さんが現れたあと、突然いなくなった!私に恨みがあるなら、私にぶつけて。娘には手を出さないで!」

あとから入ってきた恭介が、いきなり私の首を締めた。

「莉杏は生後1か月になったばかりだぞ。子どもにまで手を出すなんて、どうかしてる!」

息を奪われながら、私は必死に声を絞り出した。

「私じゃない……私だって母親なのに、子どもを傷つけるわけがない……」

「恭介、もし莉杏に何かあったら、私も死ぬ!」

真里は壁に頭を打ちつけようとし、両親に慌てて止められた。

「話しても無駄よ。さっさと吐かせればいい!」

麻友はベッド脇の引き出しを開け、裁縫道具から針を取り出すと、その先端を私の爪の間に当てた。

「本当に私じゃない!」

私は怯えて首を振り、恭介を見た。

しかし彼はつらそうに顔を背け、麻友に目で合図した。

外科医の私が、何よりもこの両手を大切にしていることを、みんな知っていた。だからこそ、どこを傷つければ私が屈するかも分かっていた。

けれど、してもいないことをどうやって認めろというのだろう。

「知世、あんたが言わないからよ!」

針が爪の間に突き刺さった。

焼けつくような痛みに顔が引きつり、声も出せないまま涙があふれた。

次の針を刺されようとしたとき、警察から電話が入った。

「お子さんが見つかりました。ご家族の方は、至急こちらへお越しください」

恭介の顔に喜びが広がった。彼は私を突き放し、全員が我先にと部屋を出ていった。

私は床に激しく倒れ、やがて体の下に血が広がった。

「赤ちゃん……」

体を引きずって扉まで進んだが、外から鍵をかけられていた。

下腹部に激しい痛みが走った。足元で少しずつ広がる赤を呆然と見つめ、涙をこぼした。

やがてベッド脇の果物ナイフへ手を伸ばし、手首に強く押し当てた。

その瞬間、扉が勢いよく破られた。

逆光の中から飛び込んできた長身の男が、焦った様子で私を抱き上げた。その声はひどく震えていた。

「知世、遅くなってごめん……」

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