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幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです
幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです
مؤلف: さぶれ-SABURE-

1. 私、一千万円で身売りすることになりました。 その1

last update تاريخ النشر: 2025-05-23 06:10:19

「借金……一千万円ですって――!?」

 驚きのあまり、私は思わず叫んでいた。

 ここは、都内の老舗洋食店「グリーンバンブー」。創業百年を迎える木造の店は、古びながらも温もりのある佇まいで、長年地元の人々に愛されてきた。朝八時半、開店前の仕込み中に、父・緑竹一平(みどりたけいっぺい)と母・美佐江(みさえ)が突然頭を下げてきたかと思えば、信じがたい言葉が飛び出したのだった。

「まあちゃんが困っててね……つい、力になりたくて」

「伊織(いおり)、すまん……どうしてもという美佐江の頼みを、断れなかった」

 話を聞けば、母の同級生――通称“まあちゃん”の夫がラーメン店を始めるということで、母に連帯保証人を頼んできたのだという。相談されれば反対するだろうと私に黙って、父にだけ話して勝手に引き受けた結果、案の定その“まあちゃん”が失踪。行き場を失って、今ようやく私に打ち明けてきたというわけだった。

「信じられない……どうしてそんな大事なことを、勝手に決めちゃうのよ!」

「だって、相談したら反対されると思って……私、困っている友達を見捨てられなかったの……」

「愛する美佐江が頼んできたんだぞ。断れるわけがないだろう!」

 逆ギレ気味の父に、思わず怒りが込み上げる。

「そんなことになるって分かってたから、反対するに決まってるでしょう!」

 私の怒声に、両親はしゅんとなった。まったく……母は昔からお人よしで、父はその母に甘すぎる。

 看板娘としてグリーンバンブーに立っていた母は美人で気立ても良く、お客様からも人気だった。

 けれど人を疑うことができず、怪しげな商品を「かわいそうだから」と法外な値段で買ってしまうような人。

 そしてそんな母を「優しい」と絶賛し、なんでも許してしまう父。

 この夫婦の善意が度を超すとこういう事態になる。だから以前から保証人関係は必ず私を通すようにと、何度も釘を刺していたのに。

「もう……どうして、いつもそうなの? 私の身にもなってよ!」

「うう……だって……」

「“だって”じゃないわよ! 母親なんだから、もっとしっかりして!」

 しくしくと泣き出した母の前に父が立ちふさがる。「伊織、もう美佐江を責めないでくれ」

「どうして私が悪者になるのよ。いい加減にして……!」

 胃が痛くなる。謝るだけでは済まない。そう思っていると、父が床に膝をついて頭を下げた。

「スマンったらスマーン!」

 その土下座になんの意味があるの。謝る暇があるならお金を工面してきて欲しい。

「で、どうやって返すの? 一千万円の借金を」

 我が家は代々この洋食店を営んできた。家は持ち家で借金こそないが、母が他人を助けるたびに店の利益を使ってしまい、子だくさんの我が家は貯金もない。一千万円なんて、私のへそくりでどうにかなる額ではない。

 ちなみに、家族構成は父母、長女の私、農業大学に通う妹・美緒、高校三年生の琥太郎、高校一年の悠真、中学一年の樹、小学五年の結。六人兄妹の大家族だ。

 私は大学へは進学せず、高校卒業と同時にグリーンバンブーで働いている。ベテランコックが定年退職したのを機に焼き場を任され、ステーキやグリルチキンなど焼き物全般を担当中だ。将来的には揚場やソースづくりも任されたいと思っている。

「仕方がない。店を手放すしか方法はない。借金のカタに――」

「えええぇぇ――!?」

 思わず声が裏返った。

 百年守ってきたこの店を、そう簡単に「売る」だなんて――どうかしてる!

 しかもここは住居兼店舗。家を手放したら、私たちは一体どこで生活していくというの?

「騒がしいな。朝から何の騒ぎだ?」

 その瞬間重苦しい空気を切り裂いて現れたのが――

「い、一矢……」

 リムレスフレームのメガネ越しに鋭い視線を送ってくるのは、幼馴染の三成一矢(みつなりいちや)。

 今日も彼はイタリアの高級スーツブランド・ブリオーニをまとっている。濃アッシュグレーの髪が柔らかく流れ、常に上品な香りをまとい、どこから見ても“完璧な上流階級の男”だ。

 ……正直、カッコ良すぎる。朝から眼福だとは、口が裂けても言えない。

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     いよいよ待ちに待った結婚式前日を迎えた。グリーンバンブーは日曜日が定休日なので、日曜日に挙式をすることになっている。前日から式場の近くにある豪華ホテルに宿泊し、全身エステにマッサージ、最終衣装合わせ、さらにはネイルやヘアスタイリングなど、明日に向けて万全の準備を整えることになった。 本来なら今日もグリーンバンブーで忙しく働き、汗まみれになっていたはずだけれど、今日は特別な日。いつもと違う意味で『つるつるピカピカ』になり、最高に幸せな気分を味わっている。定食屋の厨房で汗だくになっているのとは、比べ物にならないくらい別次元だ。 夜は旦那様(本物)とホテルの高級レストランで優雅なディナーを楽しみ、素敵な時間をゆったりと過ごした。バーではシャンパンを少し嗜みながら、ふと甘えたくなって隣に座る一矢の肩にもたれかかった。「もう酔ったのか?」 一矢が優しい口調で尋ねてくる。「ううん。酔ってないよ。ただ、独身最後の夜を噛み締めているの。色々あったなあって、ちょっとしみじみしてただけ」「部屋でゆっくり話すか?」「うん、そうしたいな。一矢に思いっきり甘えたい気分」「うむ、悪くない提案だな」 一矢が照れたように微笑む。普段のビジネス用のスーツ姿も十分カッコいいけれど、今日のフォーマルな装いはそれ以上に素敵だ。 今日は私もプロの手でドレスアップしているから、一矢の横に並んでも違和感がないことが嬉しい。この前グリーンバンブーで感じた切なさとはまったく違う。この差を思い出すと少し胸が痛むけれど、今夜は深く考えるのをやめておこう。 部屋はホテルの最上階にある、贅の限りを尽くしたロイヤルデラックススウィートルームだ。こんな部屋に泊まれる日が来るなんて、夢にも思わなかった。しかも、愛する人と二人きりなんて、まるで夢のよう。 部屋に入った途端、一矢が私をそっと抱き寄せる。「今日の伊織は本当に綺麗だ。私のために美しくなってくれたのなら、これ以上嬉しいことはないな」 甘く優しい囁きが耳元に響き、体がぞくぞくと震える。極上のエステやマッサージで磨かれ、文字通りつるつるピカピカになった私を、旦那様(本物)はこのまま愛でるつもりらしい。「ちょっと、お喋りは……?」 照れ隠しに軽く抵抗してみる。「愛を囁きながらでも、会話くらいはできるさ」「きゃっ」 力強い腕に優しく抱きか

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