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第4話

作者: ユキ
二人は談笑しながら車に乗り込んだ。湊はスマートにドアを開け、莉子が頭をぶつけないよう手を添えた。

レストランに着くと、彼は彼女と一緒に窓際の席に座り、自らメニューを手に取った。

「ステーキはミディアムレア、パスタにはニンニクを入れないで。それから赤ワインの代わりに紅茶を……」

莉子は頬杖をついて彼を見つめ、甘ったるい口調で言った。

「私の好み、そんなに詳しく覚えてくれてるんですか?飲み会のたびにこっそり観察してたんですか?メモしなくても覚えてるなんて、すごく気にしてくれてるんですね」

「ちょっとしたことだから、一度聞けば覚えられる。お前は病人なんだから、食事には気をつけないとな」

遠くない席にいた雪乃はその会話を聞き、胸の奥がチクッと痛んだ。

だから、私のことは覚えられないから手帳に書き留めていたのだろうか。

本当に気にかけている相手なら、ふと口にした言葉でも心に留めておけるのだ。

雪乃は初めて気付いた。愛があるかどうかなんて、こんなにも明白なことだったのだ。

彼女は静かに見つめていた。湊が莉子のためにカトラリーを並べ、ステーキを切り分け、ナプキンを手に取って彼女の口元のソースを拭き取ってやるのを……

一挙一動が適切で気配りに満ちており、店員でさえ羨望の眼差しを向けるほどだった。

「あの女の人、すごく幸せそう。彼氏があんなにイケメンで、あんなに甘やかされてるなんて、本当に羨ましい!私もいつになったらあんなカッコいい人と付き合えるのかなあ」

「あのイケメンの顔を見れば分かるでしょ。絶対に冷たいタイプだよ。好きじゃない相手には見向きもしないはず。あんなに優しくするのは彼女にだけだって。夢見るのはやめなよ!」

その言葉が、鋭い刃のように雪乃の胸に突き刺さり、息もできないほど痛んだ。

彼女は全身の力が抜け落ちたようになり、手すりにつかまって、辛うじて立ち続けていた。

見ず知らずの他人でさえ分かるのだ。湊にとって、莉子が特別な存在であることは。

自分だけが幻想を抱き、彼がこの関係に心を動かしたことがあると思い込んでいた。

しかし、小説の世界では、主人公は常にヒロインのものであり、脇役はただの当て馬にしかならない。そうではないか。

ずっと自分を騙し続け、自分のものではないものを必死に握りしめ、手放そうとしなかったのは自分の方だ。

今、彼にとって運命の恋人が現れた。そろそろ自分も身を引く時だ。

雪乃は声もなく笑ったが、口の中にはひどい苦味が広がっていた。

彼女はそれ以上そこには留まらず、ふらつく足取りで背を向け、階段を下りた。

一人で車の中に長く座り続け、ようやく苦しい感情から抜け出すことができた。

深く息を吐き出し、エンジンをかけようとしたその時、前方から突然トラックが突っ込んできた。

眩しいヘッドライトに目が眩み、避ける暇もなかった。

ドーンという轟音とともに、車ごと後方へ吹き飛ばされ、そのまま防護壁に激突した。

天地がひっくり返るような衝撃の後、雪乃は変形した車体の隙間に挟まれていた。

鮮血が止めどなく溢れ出し、彼女の全身を赤く染め上げた。

引き裂かれるような激痛が神経を走り、体は痙攣して震えが止まらなかった。

彼女は這うようにしてスマートフォンを拾い上げ、119番通報した。

意識が次第に遠のく中、彼女は歯を食いしばり、すぐ近くのレストランにいる湊に電話をかけた。

発信音が狭い車内に響き渡る。

このまま死にたくないと思い、何度も何度もかけ直したが、返ってくるのは「応答がありません」という無機質なアナウンスだけだった。

最後の力を使い果たして気を失う直前、かすかに救急車のサイレンの音が聞こえた。

翌日、再び目を覚ました時、ぼんやりと目を開けると、ベッドのそばに湊が付き添っているのが見えた。

雪乃が目を覚ましたことに気付くと、彼は水を一杯注ぎ、小声で説明した。

「昨夜はとても重要な用事があって、スマートフォンをマナーモードにしていたんだ。電話に出られなくて悪かった。駆けつけるのが遅れてすまない」

なぜマナーモードにしていたのか……

莉子とのデートに邪魔が入らないようにするためだろうか。

雪乃は彼をじっと見つめたまま、その嘘を暴こうとはしなかった。

彼女は静かに言った。

「気にしないで」

雪乃は三日間入院し、湊は毎日やって来た。

再診に付き添い、三食の食事を用意し、夜は病室にぴったりと寄り添って離れなかった……

時折見回りに来る看護師も、こっそりと彼女に耳打ちしてきた。

「彼氏さん、本当にあなたのことを大切に想ってるんですね。あの日はすごく危険な状態で、お医者さんも明け方まで救命措置をして諦めかけていたんです。

彼が駆けつけて状況を知った後、夜通し駆けずり回って引退した名医を呼び出し、市中の血液銀行から同じ血液型をかき集め、ようやくあなたの命を繋ぎ止めたんですよ」

雪乃は初めて自分の救命の過程を聞き、目を丸くした。

湊が私を救った?ならば、なぜ彼はそのことに一言も触れなかったのだろう。

彼女がまだ疑問を抱いているうちに、看護師はお節介な忠告に入っていた。

「あんなにカッコよくて愛情深い人は滅多にいませんよ。早く結婚しないと、誰かに奪われちゃうかもしれませんよ!」

結婚という言葉を聞いて、雪乃はもう湊が救ってくれたことについて考えるのをやめた。

頭の中に、婚姻届の提出をすっぽかされた五十二回の光景が浮かび上がり、口元にひどく疲れたような笑みが漏れた。

「運命のシナリオはもう決まっているの。私は彼とは結婚できない運命なのよ」

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