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第61話

Author: ASAMI
last update publish date: 2026-08-24 20:39:48

精神病院の面会室。防音ガラス越しに向かい合う白衣の男を、神崎蓮は血の走った目で見つめていた。

「音羽を……俺の手に……取り戻せるだと……?」

かすれ切った声で問いかける蓮。

白衣を着た組織の男は、冷ややかな口元に笑みを浮かべ、ゆっくりと頷いた。

「ああ、可能だ。あの女は今、アメリカでKJという男の庇護のもと、何不自由なく演奏活動を謳歌している。君のことなどすっかり忘れてな」

「嘘だ……! 音羽が俺を忘れるはずがない……! あいつは俺の……俺のものだ……!」

机を激しく叩いて立ち上がろうとする蓮だが、拘束具に阻まれ、惨めに身体を揺らすだけだった。

組織の男は興奮する蓮をたしなめるように、低い声で囁きかけた。

「取り戻したくはないか? あの女を連れ戻し、再び君の足元で跪かせるのだ。我々にはその手伝いができる。……ただし、君には『役目』を果たしてもらうがね」

「役目……?」

「あの女の祖母が残した未発表曲……『終焉のソナタ』の楽譜だ。幼い頃、君もあの屋敷で音羽が弾くその旋律を聞いたことがあるはずだ。君の記憶の中にある手がかりを吐き出せ」

男の言葉に、蓮の狂気に満ちた瞳が一瞬だけ泳いだ。

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