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第138話

Author: 藤崎 美咲
面接には直属の上司の承認が必要というのが会社の決まりだった。けれど人事部長は、智央と星乃の関係をよく分かっていた。表向きには星乃が技術部の主任だが、実際は智央と何か賭けのようなものがあって、もしかするとひと月後には約束を果たせずに去ることになるかもしれない。

少し考えた末、人事部長は履歴書を智央に手渡した。「面接の人たち、外で待っています」

智央は鼻の奥で短く「うん」とだけ答え、そのまま履歴書を持って面接室に入っていった。

人事部長は彼の高慢そうな背中を見送りながら、どうにも気に入らないが、結局は従うしかなかった。

何しろ智央はUMEでのキャリアが長く、技術力も群を抜いている。

あの遥生でさえ、彼をどうすることもできなかったのだ。

十分ほどして智央が部屋を出てくると、さきほどの十数枚の履歴書の中から一枚を抜き取り、人事部長の前に置いた。

「この人、いいね。残しておいて」

人事部長は頷き、書類に目を落とす。そこに記されていた名前は――

「篠宮美優」

UMEから採用通知を受け取った美優は、嬉しさのあまりスマホを抱きしめてキスをした。

UMEに入れるということは、これから遥生と顔を合わせるチャンスがぐっと増えるということだ。

その一方で、綾子はずいぶん落ち着いていた。「うちの美優は優秀よ。名門の出身で、普段から成績は常に上位。技術助手なんて、本当ならもったいないくらい」

ただ、UMEが今募集しているのは基礎的なポジションばかり。

もし遥生に早く近づける機会がなければ、娘にこんな役を受けさせたりはしなかっただろう。

美優は満面の笑みで綾子の隣に腰を下ろした。「でもね、お母さん、UMEの技術部って入るのすごく難しいんだよ」

「今回の面接を突破するために、私、かなり頑張ったんだから」

綾子は愛おしそうに彼女の鼻先をつまんだ。「でも美優、忘れちゃだめよ。あなたがUMEに行く一番の目的は、遥生よ。仕事そのものはどうでもいいの。自分をすり減らさないようにね」

美優は頷く。「分かってるって、お母さん。心配しないで」

もうすぐ遥生を手に入れられる――そう思うと、美優は嬉しくて一晩中眠れなかった。

ところが翌日、出社して星乃の姿を見た途端、その浮かれ気分は一気に吹き飛んでしまう。

「なんで彼女がここに?」入社手続きを終え、実験室へ向かう星乃を目で追
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